旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

2024-01-01から1年間の記事一覧

18両の小世帯で東海道・山陽路で奮闘した旅客用電機 EF61形【4】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info EF61形は冬季における客車の暖房用熱源として、蒸気発生装置を装備していました。旧型客車のうち、本州で運用される車両のほとんどは電気暖房を備えていましたが、これを使うためには直流電機では電動発電…

18両の小世帯で東海道・山陽路で奮闘した旅客用電機 EF61形【3】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info EF61形が新製されると、全機が宮原機関区に配置されました。わずか18両という少数勢力とはいえ、EF61形は暖房用の蒸気発生装置を備えた新性能直流電機であること、EF58形に迫る高速性能をもつ電機であるこ…

18両の小世帯で東海道・山陽路で奮闘した旅客用電機 EF61形【2】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info 国鉄が新たな旅客用電機を求めるようになった1960年代、電機の構造は従来のものとは大きく変わった車両を製作するようになっていました。 戦前から脈々とつくり続けられてきた電機は、台車枠を車両の基礎…

18両の小世帯で東海道・山陽路で奮闘した旅客用電機 EF61形【1】

いつも拙筆のブログをお読みいただき、ありがとうございます。 直流電気機関車といえば、現在ではJR貨物が保有・運用する車両がほとんどで、その形式も統一されつつあります。平坦線用の万能期であるEF210形と、勾配線用の2車体H級機であるEH200形が数多く活…

貨物機なのにブルトレ牽引に抜擢された悲運の電機 EF60形500番台【4】

《前回からの続き》 blog.railroad-traveler.info 寝台特急列車の最高運転速度を100km/hから110km/hに引き上げ、それとともに20系客車には電磁指令ブレーキが装備されることになり、牽引する機関車にもこのブレーキに対応した装備が必要となったことから、そ…

貨物機なのにブルトレ牽引に抜擢された悲運の電機 EF60形500番台【3】

《前回からの続き》 blog.railroad-traveler.info そもそもEF60形は、貨物用機として設計された機関車でした。貨物用機は高速性能よりも牽引力を重視した設計でした。これは、貨物列車は0km/hから引き出すときに、重量が重いので強いトルクが必要になります…

貨物機なのにブルトレ牽引に抜擢された悲運の電機 EF60形500番台【2】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info 1960年に国鉄が設計、製造したEF60形は、直流電機としては初めてのF級新性能電機でした。2軸ボギー台車を3台装着し、従来の電機にあった先輪をなくした構造は、ED60形などD級機から受け継いでいましたが、…

貨物機なのにブルトレ牽引に抜擢された悲運の電機 EF60形500番台【1】

いつも拙筆のブログをお読みいただき、ありがとうございます。 すっかりご無沙汰になってしまいました。 4月で年度が変わり、職場も仕事も変わらなくとも、埋めるべきポジションが変わったことで、本業が多忙になってしまいました。なんとか記事は書き続ける…

第4種踏切について元鉄道マンが思うこと【3】~安全な鉄道踏切の実現に向けて~

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info 踏切内で障害物があったり、事故が起きたりして列車の通過に支障がある場合、通常の踏切であれば、障害物検知装置のセンサーが作動するか、非常用ボタンを押下することで、列車の緊急停止を知らせる特殊発…

第4種踏切について元鉄道マンが思うこと【2】~踏切事故をなくすための挑戦~

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info 踏切警報機も踏切遮断機もない第4種踏切をなくすべく、様々な取り組みが始まっています。 中にはAIを使った踏切を開発する動きもあるようですが、信号保安設備の保守管理に携わった元鉄道職員であり、更…

第4種踏切について元鉄道マンが思うこと【1】 ~子どもの安全を守るために:踏切事故から考える~

いつも拙筆のブログをお読みいただき、ありがとうございます。 ここ最近、踏切事故を報じるニュースが絶えません。2024年4月6日に、群馬県の上信電鉄の踏切で、小学校4年生の子どもが列車に接触し亡くなるという、痛ましい事故が起きました。新年度が始まり…

爆音を轟かせて走り抜けた強力気動車 国鉄キハ66系【8】

《前回のつづきから》 blog.railroad-traveler.info 新製配置以来、長らく直方区に所属して筑豊本線と篠栗線を中心に、筑豊・北九州地区の輸送を支え続けてきましたが、筑豊本線の一部と篠栗線が電化されることになり、2001年のダイヤ改正をもって30年弱も走…

爆音を轟かせて走り抜けた強力気動車 国鉄キハ66系【7】

《前回のつづきから》 blog.railroad-traveler.info 1974年に新製されたキハ66系は、直方気動車区(現在の筑豊篠栗鉄道事業部直方車両センター)に配置され、主に筑豊本線と篠栗線での運用に充てられました。一般形気動車としては破格の設備を誇っていたこと…

爆音を轟かせて走り抜けた強力気動車 国鉄キハ66系【6】

《前回のつづきから》 blog.railroad-traveler.info 前面はキハ65形や一般形のキハ40系(2代)とほぼ同じデザインとして、前面窓は側面に回り込んだパノラミックウィンドウを採用、中央には貫通扉を備えた貫通構造とされました。 気動車は1両単位で運用する…

爆音を轟かせて走り抜けた強力気動車 国鉄キハ66系【5】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info キハ66系いはいくつかの大きな特徴があります。その一つが、大出力を誇るDML30系に゙改良を加えたDML30HSHを装備したことです。このエンジンは、出力が440PSとキハ65形が装備するDML30HSDなどよりも若干出…

爆音を轟かせて走り抜けた強力気動車 国鉄キハ66系【4】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info 1964年に開発されたDML30系エンジンは、気動車に搭載することを前提にした横置き型で、V型12気筒、排気量30リットルというものでした。出力は400PSから最大で600PSを出すことができる強力なエンジンで、高…

爆音を轟かせて走り抜けた強力気動車 国鉄キハ66系【3】

《前回のつづきから》 blog.railroad-traveler.info DMH17系エンジンと液体変速機を組み合わせた国鉄の気動車は、1950年代後半から続々と量産され、全国の非電化路線で普通列車から準急や急行、さらには特急として都市間輸送までも担うようになりました。 そ…

爆音を轟かせて走り抜けた強力気動車 国鉄キハ66系【2】

《前回のつづきから》 blog.railroad-traveler.info 戦後に開発された気動車は、ガソリンよりも安全性の高い軽油を燃料としたディーゼルエンジンを採用することにしました。戦前に一応の基礎設計が完了していたとはいえ、開発の中断と技術の途絶、そして戦時…

爆音を轟かせて走り抜けた強力気動車 国鉄キハ66系【1】

国鉄最後の新形式気動車となったキハ66系について、その軌跡と功績を概観する。

電気釜+簡易貫通扉の「魔改造」の始祖?381系先頭車化改造車【7】

《前回からのつづき》 383系が増備され、長野駅発着の運用がすべて置き換えられた後も、松本駅・白馬駅発着の「しなの」の運用は残り、381系は4往復のみに充てられるようになり、JR西日本の381系とは対称的に風前の灯になりつつありました。 それでも、1998…

電気釜+簡易貫通扉の「魔改造」の始祖?381系先頭車化改造車【6】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info クモハ381形は1986年のダイヤ改正から「やくも」の運用に充てられ、国鉄が計画した通り「やくも」を6両編成に短縮させ、輸送力の適正化と臨時列車を含めた運行本数を増発を実現しました。 登場した翌年の1…

電気釜+簡易貫通扉の「魔改造」の始祖?381系先頭車化改造車【5】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info 1986年にモハ381形を種車に改造によって製作されたクモハ381形は、この年のダイヤ改正まで運用されていた「やくも」の編成から、サロ1両を連結したまま6両編成に組み替え、そこから捻出された車両を使うこ…

電気釜+簡易貫通扉の「魔改造」の始祖?381系先頭車化改造車【4】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info 381系は既にお話してきたように、急曲線が多く存在する線区において、特急列車の所要時間を短縮させるために、車体傾斜装置である自然式振子装置を装備した特異な特急形電車でした。 中央西線の「しなの」…

電気釜+簡易貫通扉の「魔改造」の始祖?381系先頭車化改造車【3】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info 国鉄分割民営化が具体化しつつあった1980年代半ば、それまで長大編成を組むことが当然とされていた特急列車にも合理化のメスが入れられていきました。 特急列車は「特別急行列車」を指し、「特別」である…

電気釜+簡易貫通扉の「魔改造」の始祖?381系先頭車化改造車【2】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info 381系は急曲線を傾斜装置の一つである自然振子を使って、曲線通過時に生じる遠心力を緩和して乗り心地を損なわないようにするとともに、遠心力によって車輪の浮き上がりなどによって脱線することを防ぎ、…

電気釜+簡易貫通扉の「魔改造」の始祖?381系先頭車化改造車【1】

いつも拙筆のブログをお読みいただき、ありがとうございます。 国鉄の分割民営化から今年(2024年)で37年目になります。民営化直後は国鉄から継承した車両のみで列車を運行していましたが、直後からは新しい会社にふさわしい車両を開発増備し、徐々に国鉄形…

EF510 300番台の増備で置き換えが確実になった九州の赤い電機の軌跡【19】終章

《前回のつづきから》 blog.railroad-traveler.info ED76形は交流電機であるので、車体の塗装色は一貫して赤2号を身にまとい続けています。これは、国鉄が制定した塗色で、交流電機はこの色一色に塗装することになっていました。ところが、分割民営化直後は…

EF510 300番台の増備で置き換えが確実になった九州の赤い電機の軌跡【18】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info JR貨物が保有する機関車は、基本的に貨物列車を牽くために運用されるものですが、門司区配置のED76形に限っては特例ともいえる運用がありました。それは、門司港駅と西鹿児島駅感を結ぶ夜行急行列車を牽く…

EF510 300番台の増備で置き換えが確実になった九州の赤い電機の軌跡【17】

《前回のつづきから》 blog.railroad-traveler.info 1990年代に入り、「みずほ」の廃止や「あさかぜ」の減便に始まり、伝統的な列車だった「さくら」と「はやぶさ」の車両を減数させ、二つの列車を併結させたことから、かつて栄光の列車としての面影は失われ…

EF510 300番台の増備で置き換えが確実になった九州の赤い電機の軌跡【16】

《前回のつづきから》 blog.railroad-traveler.info 客車列車の視点で見れば、それまで長距離輸送が主体で、普通列車も長編成で長距離を走破するのが当たり前でした。そのため、列車の運転本数は1時間あたりにしても少なく、乗客の立場からすれば利便性が高…