旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

国鉄

悲運の貨車〜物流に挑んだ挑戦車たち〜 貨車か気動車か、気動車か貨車か 有蓋車にエンジンをつけた気動貨車・キワ90形【1】

いつも拙筆のブログをお読みいただき、ありがとうございます。 鉄道が陸上交通の主役であった時代、国鉄はもちろんのこと、多くの私鉄でも貨物輸送が行われていました。例えば北関東に広大な路線網をもつ東武鉄道は、栃木県南部の佐野市にある葛生駅から多く…

悲運の貨車~経済を支える物流に挑んだ挑戦車たち~ 発想はよかったけど貨物を「割っちゃった」無蓋車・トキ800000【3】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info トラックでも運ぶことが難しいとされた大型板ガラスを長距離輸送できる貨車として、関係者の期待を背負って登場したものの、連結器の緩衝器の性能不足が仇になって使用停止の憂き目に遭うのは、まさに不運…

悲運の貨車~経済を支える物流に挑んだ挑戦車たち~ 発想はよかったけど貨物を「割っちゃった」無蓋車・トキ800000【2】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info 車体側面にはプレス鋼板製のあおり戸も設けられたことも、無蓋車としての体裁を成していました。とはいえ、魚腹形の台枠にデッキのある外観は、無蓋車としては特異なものであったことは間違いなく、加えて…

悲運の貨車~経済を支える物流に挑んだ挑戦車たち~ 発想はよかったけど貨物を「割っちゃった」無蓋車・トキ800000【1】

いつも拙筆のブログをお読みいただき、ありがとうございます。 鉄道貨物輸送が華やかし頃、実に様々な物を貨車に載せて運んでいました。今では到底考えられないような物まで、貨車に乗せて運ぼうとする試みは古くからあり、中には発想こそはよかったけれど、…

「キマロキ」編成の仕事を1両でこなそうとした「モンスター」ロータリー機・DD53形【8】

《この記事、これまでは》 blog.railroad-traveler.info blog.railroad-traveler.info blog.railroad-traveler.info blog.railroad-traveler.info blog.railroad-traveler.info blog.railroad-traveler.info blog.railroad-traveler.info 2006年になると、冬…

「キマロキ」編成の仕事を1両でこなそうとした「モンスター」ロータリー機・DD53形【7】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info 1976年になると、北海道で本来の役割を担うことのないまま、細々と補機運用に使われていた1号機にも、ようやく本来の能力を発揮する機会が巡ってきたかに見えました。秋田の新庄機関区に配置転換となり、…

「キマロキ」編成の仕事を1両でこなそうとした「モンスター」ロータリー機・DD53形【6】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info 1965年に製造されたDD51形1号機と2号機の2両は、当初の計画通りに本州日本海沿岸の豪雪地帯である新潟地区に配置されました。1号機は1月に、2号機は12月に落成していますが、詳しい資料がないのであくまで…

「キマロキ」編成の仕事を1両でこなそうとした「モンスター」ロータリー機・DD53形【5】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info DD53形は除雪用ディーゼル機なので、除雪装置となるロータリヘッドへ動力を供給するため、エンジンからシャフトを接続できる構造でした。このシャフトは機器室内に設置されたエンジンに接続された液体変速…

「キマロキ」編成の仕事を1両でこなそうとした「モンスター」ロータリー機・DD53形【4】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info DD53形のロータリーヘッドは大型化したため、二軸ボギー台車を装着した別ユニットの形態になりました。これは、かき寄せた雪を強力で遠方に投射させるために、羽根車が大型ものが装着されたこと、これによ…

「キマロキ」編成の仕事を1両でこなそうとした「モンスター」ロータリー機・DD53形【3】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info DD14形は北海道で実績を上げていました。しかし、本州では3号機が新潟区への配置が初めてでした。北海道で使えるのだから、本州でもその威力を発揮するものと考えられていたことでしょう。 しかし、現実に…

「キマロキ」編成の仕事を1両でこなそうとした「モンスター」ロータリー機・DD53形【2】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info ロータリー式と呼ばれる除雪方法は、一度かき寄せた雪を取り込んで、回転する羽を使って雪を遠方へと飛ばす方法です。蒸機時代はキ600形やキ620形がこのロータリー式除雪装置を備えた唯一の車両でした。し…

「キマロキ」編成の仕事を1両でこなそうとした「モンスター」ロータリー機・DD53形

いつも拙筆のブログをお読みいただき、ありがとうございます。 2024年もそろそろ終りが近づいてきました。今年は連日35℃、場所によっては40℃を超える暑さに見舞われ、地球温暖化ということを身近に感じた年だったと思います。そんな「度を超えた」暑さも10月…

【展示館】EF65 1098[新]

EF65 1094〔新〕 蘇我駅 2010年 筆者撮影 1978年 製造 川重・東洋(昭和52年度第1次債務予算)1978年 新製配置 下関運転所1987年 JR西日本継承 下関配置2001年 JR西日本廃車2001年 JR貨物購入による移籍 高崎機関区配置2008年 配置転換 新鶴見機関区2012年 …

新幹線の「守護神」という役割をもった高速ディーゼル機・新幹線911形ディーゼル機関車【4】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info 本来の役割を事実上失ったともいえる911形ですが、もう一つの役割も存在しました。それは、ドクターイエローの元祖ともいえる、軌道検測車である921形0番台を牽引するというものでした。 東海道新幹線開業…

新幹線の「守護神」という役割をもった高速ディーゼル機・新幹線911形ディーゼル機関車【3】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info 箱型の車体をもった911形の前面は、前面窓のしたを境に「く」の字形をした立体感のある流線型に近いものでした。前面窓は中央部から後退した2枚窓で、特急形電車である485系などに似たものでした。高速で…

新幹線の「守護神」という役割をもった高速ディーゼル機・新幹線911形ディーゼル機関車【2】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info 160km/hで走行できるという驚異的な性能を実現させた911形ですが、そのエンジンは専用に開発された大出力機関と考えても不思議ではないでしょう。実際にはそのような専用エンジンは開発されることはなく、…

新幹線の「守護神」という役割をもった高速ディーゼル機・新幹線911形ディーゼル機関車【1】

いつも拙筆のブログをお読みいただき、ありがとうございます。 「東海道新幹線60周年に寄せて」の記事を書いている中で、新幹線といえば多くの人があの洗練されたスタイルと、高速で走り快適な電車たちを思い浮かべるであろうと思いました。 しかし、このブ…

東海道新幹線60周年に寄せて【5】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info 最後に、直近で東海道新幹線を利用したのは、昨年(2023年)に大阪で開催された研究大会へ出席するためでした。早朝に新横浜駅に出向き、そこから「のぞみ」に乗車すると、2時間と少しで新大阪に到着。大…

東海道新幹線60周年に寄せて【4】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info 同じ東海道・山陽新幹線を使って、福岡と実家を往復した中で、筆者の利用歴で最も異色だったのは、友人のお父さんの葬儀に出るために帰省した旅でした。随分とお世話になった方だったので、何としてでも参…

東海道新幹線60周年に寄せて【3】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info 1991年に高校を卒業すると、このブログで何度もお話してきたように、貨物会社に採用されて鉄道職員になりました。4月1日付で関東支社に採用、総務部総務課勤務を命じられましたが、翌日の4月2日付で九州支…

東海道新幹線60周年に寄せて【2】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info 筆者が初めて新幹線という乗り物に乗ったのは、まだ小学生の頃でした。 当時は剣道を習っていたのですが、ある日、いつも通りに夜間の稽古に行こうとすると、母から「今日は1部だけで帰ってきなさい」と言…

東海道新幹線60周年に寄せて【1】

いつも拙筆のブログをお読みいただき、ありがとうございます。 2024年10月1日、今年で東海道新幹線が開業してから60年、人間でいえば「還暦」に値します。 国鉄から東海道新幹線を引き継いだJR東海も、この大きな節目を迎えるにあたって、これを記念した行事…

国鉄史上最強で巨大なエンジンを搭載した大出力機 DE50【3】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info 1970年に製作されたDE50形1号機は、日立製作所で落成した後、稲沢第一機関区の配置とされ、選考量産機として各種の試験が行われました。また、冬季における性能を確かめるために、長野工場へ送られてここ…

国鉄史上最強で巨大なエンジンを搭載した大出力機 DE50【2】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info DE50形はエンジンと変速機を2組搭載したDD51形に匹敵する本線用大出力ディーゼル機として、1970年に製作されました。 車体はDE10形と同様のセミセンターキャブ構造をもち、1位側にDMP82形エンジンを搭載、…

国鉄史上最強で巨大なエンジンを搭載した大出力機 DE50【1】

いつも拙筆のブログをお読みいただき、ありがとうございます。 筆者が鉄道職員として門司機関区で働いていた頃、DD51形の交番検査に携わったことがあります。交番検査とは、鉄道車両に義務付けられた検査の一種で、国鉄形の場合、全般検査から90日ごとまたは…

手間がかかるなら付けたままにしてしまおう ラッセルヘッド永久固定した異端機・DD21【3】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info DD21形のもう一つの大きな特徴は、キャブ部分の構造にありました。塗装は国鉄ディーゼル機の標準ともいえる朱色と灰色の2色塗りで、白い帯を巻いたものでした。初期のディーゼル機に共通して、キャブ部分…

手間がかかるなら付けたままにしてしまおう ラッセルヘッド永久固定した異端機・DD21【2】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info DD21形は冬季は除雪用機として、夏季は入換用機として運用することを前提として開発されました。こう書くと、DD14形やDD15形とたいして変わりないのではないかと思われますが、DD21形の最大の特徴は車体に…

手間がかかるなら付けたままにしてしまおう ラッセルヘッド永久固定した異端機・DD21【1】

いつも拙筆のブログをお読みいただき、ありがとうございます。そして、最後の更新からご無沙汰しております。 昨今、報道などでも多くの方がご承知のように、筆者の生業を取り巻く環境は年々厳しさを増しております。なにしろ人手不足は甚だしく、加えて年度…

1991年頃の新鶴見機関区 部内の一部で「恥ずかしいカマ」と呼ばれた試験塗装【2】

《前回のつづきから》 国鉄を分割民営化して誕生した新会社は、当時は躍起になって国鉄時代の「負のイメージ」を払拭するために、様々な施策を実行していました。旅客会社は新たなサービスと商品開発に腐心し、離れていった乗客を呼び戻すために、数多くの企…

1991年頃の新鶴見機関区 部内の一部で「恥ずかしいカマ」と呼ばれた試験塗装【1】

いつも拙筆のブログをお読みいただき、ありがとうございます。 1987年に国鉄が分割民営化されてから既に35年以上が経ち、2024年もかつての栄華を伝える国鉄形車両がまた姿を消していきました。曲線の多い路線で特急列車の速度を上げて、到達時間を大幅に短縮…