《前回からのつづき》
DD53形のロータリーヘッドは大型化したため、二軸ボギー台車を装着した別ユニットの形態になりました。これは、かき寄せた雪を強力で遠方に投射させるために、羽根車が大型ものが装着されたこと、これによって重量が重くなったことから、DD14形のように単にロータリーヘッドを機関車本体に取り付ける方法ではこれを支えきれないこと、この重量を機関車本体に負担させてしまうと軸重が重くなってしまい、運用できる路線が限られてしまうこと、さらに重軸重になってしまうと除雪時に高速で走行することが不可能になってしまうことなど不利になることが多くなるため、ロータリーヘッドの重量はこれ自身で負担させることが理由として考えられます。
加えてDD14形ではロータリーヘッドが比較的小型であったので、機関車本体の運転台から前方の積雪状態を確認しながらロータリー装置や羽根板の操作や機関車の操縦ができたのに対し、DD53形はロータリーヘッドが大きいため機関車本体からDD14形のように積雪状態などの確認が難しくなってしまいました。こうした事もあって、ロータリーヘッドに運転台を設け、機関車の操縦を担う機関士と、除雪装置の操作を担う保線職員の前方監視を容易にしたのでした。
こうした構造になったため、全長は10,000mmにも及び、冬季の除雪運用のときには機関士と保線職員はロータリーヘッドの後部にある出入口から中に入り、投射用のダクトがある部分で一度車外に出て、歩み板を渡って前頭部にある運転台へと出入りしていました。
ロータリー式除雪用ディーゼル機関車のヘッド2態。写真上がDD14形のもの、写真下がDD53形のもの。DD14形のヘッドは機関車本体に直接取り付けることができる構造で、比較的小型になっているのが分かる。一方、DD53形のヘッドは強力かつ遠方に雪を投射できる能力が求められたことから大型化し、ヘッド自体の重量も重くなった。そのため、二軸ボギー台車を装着した「付属車」のような形態になり、除雪時には機関士と除雪装置を操作する保線職員が、ロータリー装置上に設置された運転台に乗り込まなければならない。この大型で強力な装置が本州豪雪地帯の雪を、確実に投射できると期待された。(上:DD14 1 三笠鉄道記念館 2016年7月24日、下:DD53 1 碓氷峠鉄道文化むら 2011年7月28日 いずれも筆者撮影)
DD51形を基本としたため、前述のようにDD53形もエンジンを2基搭載しています。液体変速機も同じく2基装備していましたが、ロータリーヘッドを駆動させるために新たに設計されたDW2A-R形としました。
こうした特殊な用途と構造となったため、DD53形の車体は基本となったDD51形のセンターキャブ形や同じロータリー式除雪用ディーゼル機であるDD14形のエンドキャブ形とは異なり、箱型の車体とされました。これは、DD14形と同様にロータリーヘッドの動力を取り出すためのシャフトを貫通させなければならないことや、夏季には他の除雪用ディーゼル機と同様に一般の列車を牽く運用に充てることを想定したため、機関士からの前方視界を確保するため、このような形状が選択されたといえます。
DD53形の車両本体には、車端部に運転席を設けた乗務員室を設置し、それに挟まれるように機器室を設置しました。電気機関車やDF50形と同様の構成でした。そして、機器室の車端部にはDML60H形をそれぞれ1基ずつ搭載、その天井部には消音器を経て排気管が伸びていて、屋根上のからエンジンの排気ガスを排出していました。さらに、エンジンの冷却水を冷やすラジエターは中央部に2セットまとめられており、その天井部には冷却用ファンがあり、そこから排熱をする構造だったのです。
前頭部は丸みを帯びたもので、前面窓は金属支持による3枚の平ガラスを連続したもので、運転台からの前方視界を確保しました。冬季には除雪用として運用することから、機関士席側はワイパーではなく旋回窓を装備、助士席側は通常のワイパーが設置されていました。また、わずかに側面方向に回り込んだパノラミックウィンドウに近い形態にして、広い視界を確保していました。
前面窓下は段差をつけてわずかに前方に突き出し、その下は後ろ側に斜めになる国鉄の機関車としてはDD54形に次ぐ特異な形状でした。これは、雪が降る中を走行しても付着をしないようにしたものだったと考えられます。そして、前部標識灯と後部標識灯は左右それぞれ1個ずつ取り付けられていました。
《次回へつづく》
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