《前回からのつづき》
DD14形は北海道で実績を上げていました。しかし、本州では3号機が新潟区への配置が初めてでした。北海道で使えるのだから、本州でもその威力を発揮するものと考えられていたことでしょう。
しかし、現実には非常に厳しいものがありました。
1962年12月末から翌1963年2月初めにかけて、日本列島を襲った歴史的な豪雪、昭和38年1月豪雪、いわゆる「三八豪雪」は、一部では積雪量が数メートルにも及び、各地で孤立集落が発生するなど、人々の生活に深刻な被害をもたらしました。当然、鉄道もその災害から逃れることはできず、多くの列車が運行不能に陥るなどして、大幅な遅延などが発生しました。特に上越線では、新潟駅発上野駅行の急行「越路」は、1月23日16時5分に定刻で新潟駅を発車したものの、上野駅に到着したのは106時間32分の遅れで、1月28日8時29分に到着するという記録的な遅延を発生させました。
このような雪による列車の運行を妨げる大雪に対して、DD14形は満を持しての出動となったはずです。しかし、「三八豪雪」では高い能力をもつとされたDD14形をもってしても刃が立たなかったのです。
DD14形のロータリー装置は、機関車本体に搭載されたDMF31系エンジンを動力源に使うことで、従来、蒸気機関による駆動から大きく近代化された。北海道の雪質は湿り気が少なくサラサラしたものであったため、DD14形の能力でも十分に除雪ができた。ロータリーヘッドも小型化を実現したことで、機関車本体に直接取り付けることができるほど軽量化を実現できたが、本州の豪雪地帯ではこの小型化が仇になってしまった。(DD14 1 三笠鉄道記念館 2016年7月24日 筆者撮影)
その要因の一つとして、北海道と新潟地区での雪の違いでした。冬に北海道へ行かれた経験のある方ならおわかりかと思いますが、ここで降る雪は非常に気温が低い中なので、雪自体が氷のように湿り気がなく、サラサラとしたものです。そのため、ロータリー式除雪車によって跳ね飛ばされるときに、雪は粉のように舞っていくのでした。
ところが、新潟地区は北海道ほど気温が下がりません。そのため、雪は湿り気を帯びた重いもので、除雪車の除雪装置にまとわりつくこともあります。DD14形のロータリーヘッドの動力源は、出力500PSのDMH31形を1基、または2基使って1000PSの出力で作動させるものの、この湿り気を帯びたまとわりつく雪、それも異常なほど降り積もった状態では太刀打ちできなかったのでした。
この事態に、国鉄関係者、特に線路施設の除雪も任としていた保線職員の落胆は想像に難くないでしょう。そして、DD14形では対処ができなかったことから、さらに強力な除雪能力をもつ除雪用ディーゼル機が望まれたのでした。
「三八豪雪」で切り札のはずだった虎の子DD14形が太刀打ちできず、「キマロキ編成」の代替えとなし得なかったことを受けて、国鉄は新潟をはじめ本州の豪雪地帯で、特に湿り気を帯びてまとわりつく雪にも対応できる、強力な除雪用ディーゼル機を開発することにしました。
新たな除雪用ディーゼル機の開発を決めた頃、国鉄にはDMH13形を発展させた出力1000PSをもつDML61形を実用化させていました。このエンジンを2基搭載し、機関車出力2000PSの本線用ディーゼル機であるDD51形も実用化され、続々と量産されていました。
DD13形を基本としたDD14形ではDMH31形を搭載し、1000PSでも対処できなかったことから、DD51形を基本にDML61形を搭載して2000PSをという大出力をもってこれに対処しようということでした。
こうして開発されたのがDD53形です。
1965年に登場したDD53形の最大の使命は、本州の豪雪地帯における「キマロキ編成」を代替えしうる強力な除雪能力と、列車の運行を可能な限り妨げないように、除雪時も高速で走行することでした。
除雪用ディーゼル機の肝ともいえるロータリーヘッドは、DD14形と比べて大型のものが採用されました。これは、湿り気を帯びてまとわりつく本州日本海側特有の雪でも跳ね飛ばすことができるようにするもので、その動力源は1000PSの大出力を出すことができるDML61形を1基、または必要に応じて2基を使うことで、かき寄せた雪を遠方へ投射する能力を可能にしました。
また、ロータリー装置の羽根車が大型化したため、DD14形では機関車本体の運転台からロータリーヘッドを操作していたのに対し、DD53形ではロータリーヘッド自体に運転台を設置、除雪列車として運転するときには、本体の運転台ではなくロータリーヘッドの運転台から操作するようにしました。そのため、前方を監視しながら雪がかき寄せる状況を把握できるように、運転台は羽根車の上部に突き出たように配置されていました。
《次回へつづく》
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