旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

季節外れの春霞の空を飛ぶ 伊丹>羽田 JAL126便

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 鉄道の話題がメインのブログですが、今回は少し趣向を変えてお空の話題をお届けします。

 

 いつもならこの程度の距離の移動は新幹線が第1選択にしています。
 鉄道が好きだから・・・というのもありますが、飛行機の場合は空港での搭乗手続やら保安検査などを考えると、どうしても1時間から30分前にはいなければなりません。

 その時間を含めると、東京-大阪間であれば新幹線の方が時間的にも有利です。それに、空港から都心部も距離がそれなりにあるので、その移動時間も考えるとさらに鉄道の方が便利です。

 が、貯まったマイレージは消化しなければ失効するだけ。それならばと、昨年からマイル消化も兼ねて遠方へと出かける機会があるごとに、往復の運賃を浮かせながらお出かけしています。

 そして年明け早々にその機会があり、大阪で日帰りの所要をこなすと、15時30分には伊丹空港へ戻り、日本航空126便東京行きに乗りました。

 ゲートを離れて滑走路へ向かい始めると、空の雲は少し赤みがかった色になっています。冬至を過ぎて日は少しずつ延びているとは言え、やはりこの時刻になると太陽も夕陽になってきているのですね。

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 今回乗ったのはボーイング777-200。

 誘導路を走っている最中のエンジンの音は、少し甲高い特徴のあるものです。人によっては耳障りにも聞こえますが、私はどちらかというとこの音は気になりません。

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 誘導路から滑走路へと進入していきます。アスファルトには白線がひかれ、その先には滑走路の方位を示す数字とアルファベットが見えます。その先は緩衝帯の芝生が広がっています。

 そしてその先には、飛行機撮影の名所でもある千里川の土手が見えます。

  地図で伊丹空港の周辺を見ると、南側と西側には川が流れています。

 驚いたのは西側で、滑走路を一望できる公園も整備されていました。こうした施設がつくれるのは、伊丹空港のように内陸部につくられている立地だからこそで、羽田空港のように海沿いや埋め立て地では難しいものがあります。

 休日にちょっと飛行機を眺めながら遊びに行こうか、と子どもを誘って出かけるのにはうってつけの場所です。

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  滑走路に入るといよいよ離陸です。

 主翼の先には朱色になった太陽が見えます。離陸は16時30分を過ぎていましたが、ついこの間まではこの時間には日も沈みかけて、空も暗くなっていたのが、この時間でもご覧のように太陽はまだ地平線よりも上です。

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 離陸すると一気に上昇していきます。左舷の眼下には、猪名川の流れと伊丹市の街並みが見えました。これから日が沈んでいき、街にも夜のとばりが訪れると、きっと点々と明かりが灯るのでしょう。

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 伊丹空港を利用された方ならご存知だとは思いますが、滑走路を離陸すると、飛行機は上昇しながら左旋回を続けます。

 滑走路の延長線上には伊丹市から宝塚市に広がる長尾連山が控えており、滑走路32Lから離陸してまっすぐ飛んでしまうと、その山々に激突してしまいます。
 加えて、伊丹空港は市街地のど真ん中にあるため、できるだけ騒音を回避しなければならず、離陸した飛行機はすぐに左旋回をしながら上昇して高度を稼ぐ必要があるのです。

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 もうどのくらいの高度になったのでしょう、左舷のまどから先ほど飛び立ったばかりの滑走路が見えてくる頃には、軽く4000ftから5000ftには達したとは思います。
 まだ1月も始まったばかりなのに、この日は比較的暖かい陽気のせいもあってか、春霞のような空だったので伊丹空港やその周辺はうっすらと白みがかって見えました。

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 新大阪駅上空に差し掛かりました。同じ東西を結ぶ交通機関ですが、新幹線では2時間半ほどかかります。とはいえ、空港での時間を考えると、どちらもいい勝負といったところでしょうか。

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 離陸してしばらくすると、機内サービスが始まりました。

 国内線なので機内食はありませんが、飲み物をいただけるのは嬉しいものです。が、大阪-東京間は飛行時間が50分程度と非常に短く、しかも離陸後に安定した飛行に入るまでは客室乗務員も座っていなければならないので、時間に余裕はありません。

 ですから、非常に慌ただしくサービスが始まります。
 とはいえ、この時間は乗っているお客さんとしては楽しみの一つです。

 私はいつもコーヒーかコンソメスープをいただいています。スープは冬場の旅にはぴったりで、体も心も温まります。

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 巡航高度に入ると、程なくして日の入り間際でした。

 遠く、地平線の彼方に太陽が沈もうとしているので、空の色も朱色のグラデーションになってきました。

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 ふと見下ろすと、伊豆半島が見えてきました。西伊豆の入りくんだ特徴的な地形がハッキリと見えます。

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 伊豆半島を通過した後、相模湾沖の上空から高度を下げ始めていきます。そして、房総半島の館山沖で左旋回したあと、房総半島を横切っていき。羽田空港を目指していきました。

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 写真の一番尖ったところは富津岬です。房総半島から東京湾に向かって三角形の角のように突き出ているのが特徴で、すでに日が沈みかけていて薄暗くはなっていましたが、すぐに分かりました。

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 木更津の海岸上空です。埋め立て地には工場が建ち並んでおり、京葉工業地域を形成しています。
 すでに日没時刻は過ぎているので、建物には明かりが灯っていました。

 主翼がシルエットになって移っていますが、その向こうには三浦半島の灯りも見えてきました。主
 翼の上、そらにぽつんと白い物が移っていますが、じつはこれは月。新月に近づいているので、夕方の日没前から短い時間だけ、欠けた月が空に姿を見せてくれました。

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 いよいよ滑走路にアプローチしていきます。この日は冬場に多い「北風運用」だったので、滑走路34Lへの着陸となります。
 高度はぐんぐんと下がっていき、横浜から川崎に欠けての京浜工業地帯の工場群の灯りが近づいてきました。
 海の上には沖合に停泊している船と、おそらくはタンカーでしょうか、沖合の設備から運んできた石油を陸揚げしています。

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 高度はどんどん下がっていき、いよいよ着陸です。
 この瞬間はパイロットにとっては非常に緊張する時間だそうです。今でこそ日本の国内で航空機の事故は滅多に起こらなくなりましたが、多くの事故や重大インシデントは、この着陸と離陸の時間帯に集中しています。
 それだけ、難しく危険な時間なのです。

 同じパイロットでも、国際線のパイロットは一度離陸したあと、短くても3時間ほど、長ければ十数時間も飛び続けてから着陸です。その後は翌日の乗務まで休憩ですが、国内線、特にこのように1時間にも満たない路線では、1日に何度も離着陸を繰り返さなければならないので、パイロットにとっても負担が大きいそうです

 その緊張の瞬間、窓からは川崎の埋め立て地が目前に迫っていました。白い灯りは工場の水銀灯で、あちこちについています。
 最近は工場夜景を見学するミニツアーもあるようで、工場のある街=空気が汚れている街 というイメージを変えようと、官民揃って様々な努力がされているようです。

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 着陸寸前に、機内の照明が青色の落ち着いた雰囲気に変わりました。

 離着陸時に客室の照明をつけたままにするのか、それとも消すのかは基準というのはないようですが、乗務員の判断で消すこともありました。
 いまでは照明を消すことはなくても、写真のように色を変えることで、明るさを調整できるようになりました。これもまた、LED照明の為せる技です。
 ちなみに、この日乗ったのは旧日本エアシステムが運用した機材(JA008D)で、2004年から飛んでいる古参機でした。最初からこのようなLED照明が導入されていたのではないので、恐らくは座席交換などのリニューアル時にこうした設備も導入されたのでしょう。

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 今回のフライトルートです。
 巡航高度は20000ftほどまでしか上がりませんでした。距離が短いせいもあるのでしょうけど、天候などにも左右されるようなので、何ともいえません。ただ、全体を通して安定したフライトだったと思います。