旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

駅へ行こう! 東海道本線・摂津富田駅(大阪府)【後編】

今回は東海道本線・摂津富田(せっつとんだ)駅の後半です。

改札口を通りホームへ降りて行くと、特に変わったところがないように見えます。

ホームとホーム、そして改札口を結ぶ跨線橋(こせんきょう)もありますが、この形のものはかなり古いものです。古レールを建材として使っているものでした。f:id:norichika583:20180618221649j:plainホームの上屋(屋根)H鋼を組み合わせてつくった比較的新しいもので、後から追加したようです。ホームの東京方の先端は斜めの坂になっていました。これは比較的古くからある駅に多く見られるもので、跨線橋ができる前は構内踏切でつながっていて、ここを乗客が上り下りしていたものと思われます。

この日はあいにくの曇り空でしたが、奥には京都との境目にもなる釈迦岳の麓が覗き込んでいました。

f:id:norichika583:20180618221653j:plainホーム中程から神戸方を望みます。これだけ見ると、大都市郊外にある駅の様相ですね。線路沿いには戸建てなどの低層の住宅が見えていました。

 

f:id:norichika583:20180618221714j:plainホームを歩いていくと、上屋が変わっていました。左側は1枚目の写真で紹介した比較的新しいものでしたが、右側の柱は細くて何とも頼りなさそうに見えます。

f:id:norichika583:20180618221721j:plainこうしてみると、上屋が古いものだということがお分かりいただけると思います。屋根の形は昔ながらの三角屋根で、しかもトタン葺き。まるで昭和の古い住宅のようなつくりに、懐かしさも感じます。

f:id:norichika583:20180618221710j:plain

ホームには普通電車が入ってきました。サラリーマンの方でしょうか、入ってきた電車を見ながら、ホームの上を歩いています。まだ通勤ラッシュの時間帯ではなかったので、それほど人は多くありませんでした。駅周辺は住宅地なので、朝夕の時間帯は、きっと多くの人で混雑しているのでしょう。

写真左側にはホームの上屋を支える支柱が写っています。やっぱり細くて「大丈夫か?」と思ってしまうほど頼りなく見えますが・・・

f:id:norichika583:20180618221722j:plain

上屋を支える支柱を拡大して撮影したのがこちら。かなり古い鋼材に見えます。

実はこれ、古レールだったんです。レールは鉄鋼製品の中でも頑丈な物の一つです。それはそうですよね、重量のある列車が高速で走り抜けるのを支えるのですから、簡単に折れたり曲がったりしては大事です。

でも、摂津富田駅の上屋を支える古レール、どこか形が変です。普通のレールとは違って見えませんか。これ、もの凄く珍しいものなんですよ。

実はこのレールは「双頭レール」といって、切り口をみるとアルファベットの「I」の形に見えるんです。片方の頭となる部分が磨り減ったら、レールをひっくり返して反対側も使えるという優れ物。ある意味、エコなレールでした。しかし、枕木に双頭レールを固定させるためには特殊な金具などが必要で、作業もいまのレール以上に手間がかかってしまうため、鉄道の黎明期こそ使われましたが、今日使われているレールが発明されると使われなくなってしまいました。

摂津富田駅の上屋を支えるこの古レール、あまりはっきりした刻印は確認できないようですが、双頭レールが使われていた年代を考えると、1870年代から1880年代にイギリスで製造されたものと思われます。レールが造られてから実に150年近くが経っているのには驚かされます。

私も鉄道マン時代には教本でこの「双頭レール」の存在を知っていましたが、実際に観るのは初めてでした。

f:id:norichika583:20180618221726j:plainこの上屋の骨組みはすべて古レールでした。ベンチこそ、新しい最近のものでしたが、こうしてみると昔ながらの「駅」という感じです。

多くの駅がリニューアルによって新しい材料で、そしてデザイン的にも優れた建築物が多くなってきました。それはそれで新しくて綺麗な建物で、多くの人で賑わう駅もいいですがですが、こうした古い物を再利用してつくられた建築物の郷愁を感じさせる駅もいいものです。

ところでこんな古い物を使っていて、大きな地震がきたら壊れるんじゃないかって思われるでしょう。その不安、よく分かります。でもご安心を。なにしろレールは本当に頑丈なので、多少古くても大丈夫です。2018年6月18日に起きた大阪府北部地震では、摂津富田駅のある高槻市震度6弱を観測していますが、この上屋が崩壊したという話はなかったことを考えると、本当に頑丈なのかもしれません。

駅へ行こう!最初の企画は摂津富田駅はいかがでしたでしょうか。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。