旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

爆音を轟かせて走り抜けた強力気動車 国鉄キハ66系【6】

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《前回のつづきから》

 

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 前面はキハ65形や一般形のキハ40系(2代)とほぼ同じデザインとして、前面窓は側面に回り込んだパノラミックウィンドウを採用、中央には貫通扉を備えた貫通構造とされました。

 気動車は1両単位で運用することが前提でしたが、キハ66系の場合はキハ66形とキハ67形の2両編成を基本としていました。しかし、ラッシュ時などは2編成を連結したり、在来の気動車とも併結したりすることが十分に想定されていたため、国鉄気動車として標準的な貫通構造となったのです。また、前部標識灯はシールドビーム灯を2個、前面屋根上の幕板部に左右2か所に振り分け、後部標識灯は前面窓下に外ばめ式を設置しました。 

 運転台は在来の急行形気動車に類似していましたが、踏切事故における衝突対策のためにキハ65形などよりもさらに高い位置に設けられました。これは、低運転台では窓ガラスの面積が大きくなるため開口部もその分だけ広くなり、踏切などで自動車などと衝突した際にそのダメージは大きく、最悪の場合、運転士が死傷することも十分に考えられました。また、前面の構造が強化されていないと、衝撃で大破したり潰れたりすることもあり、やはり運転士の安全が保てないおそれがあったのです。

 

1970年代に設計製造されたキハ40系は、キハ58系の後期車とほぼ同じ全面デザインになったが、さらに運転代の高さが上げられた。キハ66系はそれよりも高くなり、前面窓が細くなったため「細目」をするような印象になったといえる。(キハ47 18〔岡オカ〕 岡山駅 2017年5月27日 筆者撮影

 

 後年、キハ20系キハ35系などには補強板を前面窓下に設置し、製造時の美しいスタイルが大きく損なわれるほどの変化が見られました。キハ66系はこの衝突事故対策を新製時から設けるため、同じパノラミックウィンドウでも天地方向の寸法は狭くなり、見た目に「目を細めた」ようなスタイルになったのでした。

 その一方で、キハ66系は大出力・大排気量エンジンであるDML30SHSに由来する問題を抱えていました。一つは引き出し時などエンジン回転数が高くなると、車内に大爆音ともいえるエンジン音が車内に轟くということでした。キハ181系のような特急形では、接客サービスの観点からも防音に配慮されていました。また、客室窓は固定されるなど、構造面でも防音性に有利でした。しかしキハ66系は一般の気動車と同じ車体構造をもっていたことや、普通列車としても運用することが考慮されていたことなどから、防音については最小限であったと考えられるでしょう。 

 もう一つは、エンジンの冷却でした。DML30系は大排気量で大出力のエンジンであると同時に、発熱量も多いという特性をもっていました。エンジンを冷却させるためにはラジエターか放熱板を欠かすことができません。

 キハ181系では屋根上に放熱板を設置した自然冷却方式を採用し、キハ65型ではラジエターを床下に設置した強制冷却式を採用していました。キハ66系もこれらと同じように冷却装置を装備することになり、屋根上連結面側にラジエターを設置し、これを静油圧式ファンで強制的に冷却させるという、従来の車両とは異なる冷却装置を装備しました。

 

キハ58系の「ブースター」として設計されたキハ65形は、キハ66系と同じDML30系エンジンを搭載した強力型気動車だった。実際に乗車した印象は「とにかくエンジン音が賑やか」だったといえる。(写真AC)

 

 しかし、この冷却装置は床下にあるエンジンから冷却水を屋根上のラジエターまで送らなければならないため、その作動音は客室内に響くという欠点を抱えることになりました。これに加えて、床下にある走行用エンジンであるDML30HSHに加え、冷房装置を作動させ歌目の発電用の4VK形エンジンからの騒音もあり、防音対策が不十分だったこともあって、走行中に客室内の轟く騒音は想像以上だったようで、「車内での会話が不可能」とまで評されたほどでした。

 

《次回へつづく》

 

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