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ここ最近、踏切事故を報じるニュースが絶えません。2024年4月6日に、群馬県の上信電鉄の踏切で、小学校4年生の子どもが列車に接触し亡くなるという、痛ましい事故が起きました。新年度が始まり、進級したばかりで、新しい1年間に様々な希望をもっていたかと想像すると、子どもたちの成長に関わる仕事を生業とし、同時に4月から小学校に通うことになった子どもの親でもある筆者にとって他人事ではない事故だと考えています。
また、1月には茨城県の関東鉄道常総線の踏切で、高齢の女性が列車に接触して亡くなっています。この事故も、踏切警報機も踏切遮断機もない、「第4種踏切」で発生しており、この種の踏切における触車死亡事故が絶えません。
さて、多くの踏切での触車死亡事故は、「第4種踏切」と呼ばれる踏切警報機も、踏切遮断機もない場所で起きています。国土交通省は鉄道の踏切を除去する方針で政策を進めていますが、これには立体交差という莫大な費用がかかる事業によって初めてなし得ることで、それら多くは大都市圏でのことで、列車の運行頻度が少ない地方の鉄道路線では、こうした事業はほぼ不可能に近いといっても過言ではないでしょう。
そして、第4種踏切の多くも、大都市圏ではなく地方に多く設置されていて、特に経営環境が厳しい地方私鉄では、このような踏切が多く存在しています。
踏切での事故を防ぐために、もっとも有効な方法は立体交差によって踏切を除去するか、あるいは踏切自体を撤去することでしょう。しかし、既に述べたように前者は莫大な費用がかかるため、地方の鉄道での導入は非常に難しいと考えられます。また、後者は踏切がなくなることにより、鉄道線路によって人や車の往来が分断され、その地域に住む人々に大きな不便をもたらします。
そこで考えられるのが、第4種踏切に踏切警報機と踏切遮断機を設置して、第1種踏切にすることです。しかし、この方法でも立体交差事業ほどでないにせよ、設置には約1000万円ほどの費用がかかるため、経営環境の厳しい地方私鉄などでは導入に消極的になってしまいます。
では、なぜこのような高価な費用がかかるのでしょう。
第4種踏切の場合、踏切があることを示す標識と、交差する道路の通行を可能にする軌道にするだけで済みます。軌道は自動車が多く通行する場所に設置される連接軌道のような高価なものでなく、枠にアスファルトなどを敷き詰めただけの簡便なもので十分です。場合によっては、古枕木を再利用して踏板としていることもあり、かなり安上がりで済みます。
第4種踏切の例。踏切を示す標識があるのみで、あとは「とまれみよ」「とまれ」といった注意を喚起する看板類があるだけである。(©MaedaAkihiko, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons)
ところが、少なくとも踏切警報機だけが設置されている第3種踏切にする場合、列車が踏切に接近したことを検知し、それをもとに警報機を作動させなければなりません。そして、この検知をするために軌道回路に踏切警報機を作動させる回路を接続するなど、信号保安設備の設計変更をし、運輸局に届け出をし、さらに軌道回路の変更工事と、それに必要な機器を設置するといったことが必要になります。
また、軌道回路の変更や踏切警報機の設置だけでなく、列車を運転する運転士から踏切が正常に動作していることを示す、踏切動作反応灯(多くの私鉄で設置されている。JRはない)、さらには踏切内で異常があった場合に緊急停止をさせるための特殊発光信号機も設置しなければならないなど、踏切本体だけでなく付帯設備も多くなるので、当然、その費用は高くなります。
そして第1種踏切するためには、踏切遮断機一式も設置するため、さらにコストが上昇してしまうので、1000万円ほどの金額が必要になるのです。このように、コストが高く、必要な機器も多い、そして一度設置すればお終いではなく、信号通信関係の職員が定期的に検査をするなど、ランニングコストもかかるので、やはり財政的に厳しい経営を強いられる地方私鉄にとってはなかなか手が出せないというのが実情として考えられます。
では、本当に第4種踏切のままでいいのかといえば、答えは当然「No」です。今回のように将来のある幼い小学生や、高齢者が犠牲になるような事故は0にすることを追求しなければならないのは明らかだといえます。
《次回へつづく》
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