旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

続・悲運のハイパワー機 幻となった交直流6000kW機【4】

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5.国鉄形電機と一線を画するデザイン

 EF500の特徴は電気機器やその性能だけではありませんでした。

 外観もまた、従来の国鉄形電機とは大きく異なった、斬新なデザインで登場したのです。

 機関車の「顔」となる正面のデザインは、そこはかとなく国鉄時代の「マンモス機」EF66の意匠に近いものでした。運転席窓はパノラマ形式の連続窓となり、曲線のない直線で構成されたデザインでした。非貫通の2枚窓は、EF66に通じるものがあったというのが筆者の印象です。中央で分割された2枚の窓は、それぞれの方向へと斜めに後退していくデザインは、国鉄形の特急形電車と似ているものです。

 正面の窓から下は、やはり後退角がつけられていました。横から見ると「く」の字に見えるもので、これもまた国鉄の初期に開発された交流電機のED72やED73にも似ていました。そして、顔つきのデザインはヨーロッパの機関車にも通じる斬新かつ力強さを感じさせるものでした。

 そして正面の窓下には角形のライトケースに収められた前灯と尾灯がセットになって、左右二か所に取り付けられました。こうしたあたりのデザインは、後のEF510に通じるものがありました。

 

JR Freight EF500
▲EF500のエクステリアデザインは、それまでの電気機関車の常識を打ち破る斬新なものであるとともに、ヨーロッパの電気機関車に近いものであった。正面は「く」の字形に折り曲がった意匠で、窓下にはライトケースに収められた角形の前灯・尾灯は、EF66 100番代の後期形以降に採用され、機関車の顔つきを一層引き締めている。側面は大型ルーバーがずらりと並び、機器室内へ明かりを取り入れる窓も国鉄形電機に比べて大きく取られていた。塗装も交直流機標準の赤13号ではなく、ホワイトグレーを基調にしたもので、運転台部のみを赤色で塗装したものであった。(©The original uploader was Taisyo at Japanese Wikipedia. [CC BY-SA 3.0], via Wikimedia Commons

 

 側面は正面と異なり、実用本位でした。

 機関室内の採光用の窓は、国鉄形電機と比べると開口部が広げられ、狭く薄暗くなってしまいがちになる室内に少しでも明かりを取り入れることができるような工夫がされていました。

そして、機関室に設置された機器類に空気を取り入れるために、採光用の窓の下にはルーバーが設けられました。このルーバーもEF81などと比べると大型のものでした。電気機器からの発熱量からルーバーの大きさが決められますが、EF500のルーバーはEF64のような勾配線区ようの機関車とほぼ同じであることからも、6,000kWという大出力のモーターに対応した制御機器から出される廃熱はかなりのものになると推測されたようです。

そしてなによりも、EF500は全長が20,000mm=20mという、機関車としてはこれまでにない長さでした。この機関車で置換えを目論んでいたEF81で全長が18,600mm=18.6m、D形級の交流機であるED75にいたっては14,300mm=14.3mという長さでした。こうした長さだけでも、EF500がいかに大出力に対応した機器を装備し、大型化したかが分かるでしょう。

 塗色も従来の国鉄電機のように交流機を表す赤一色や交直流機のローズピンク一色ではなく、側面はホワイトグレーに塗られて明るい印象になりました。運転士側の扉の後方には「INVERTER HIGHTEC LOCO」のロゴマークが入れられ、助士席側の扉の後方にはナンバープレートが取り付けられました。

 運転台付近の車体は正面を含めて交直流機を表す赤色に塗られました。赤色とホワイトグレーの塗り分けは斜めにするという斬新なもので、まさに新時代の電気機関車として相応しいものだったといえるでしょう。