旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

爆音を轟かせて走り抜けた強力気動車 国鉄キハ66系【4】

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《前回からのつづき》

 

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 1964年に開発されたDML30系エンジンは、気動車に搭載することを前提にした横置き型で、V型12気筒、排気量30リットルというものでした。出力は400PSから最大で600PSを出すことができる強力なエンジンで、高速運転と高出力が求められる特急形や急行形の気動車に使うことを前提としていました。 

 こうした前提でつくられたエンジンであるため、非力なDMH17系エンジンを2機搭載して、無理繰り特急形として増備されたキハ80系に代わって製作されたキハ181系や、経済性を重視したため編成中に1機関搭載車であるキハ28形を連結せざるを得なかったキハ58系にブースター的に組み込むことを目的としたキハ65形など、高出力を要求され、かつ高速運転をする車両に採用されたのでした。 

 

強力エンジンであるDML30系エンジンを搭載したキハ181系(写真AC)

 

 また、この国鉄が満を持して開発した高出力エンジンであるDML30系は、後に北海道で運用されていたキハ80系の置き換え用として開発されたキハ183系にも採用され、分割民営化後にJR北海道が製作した増備車(500番台以降、いわゆるN183系やNN183系)にも改良が加えられて採用が続き、高出力エンジンのベストセラーともいえるものになりました。 

 しかし、高出力であることは、エンジン自体からの発熱量も大きくなるというジレンマを抱えることになります。エンジンは適切な冷却機構がなければオーバーヒートを起こし、最悪の場合はエンジンが焼き付いて起動不能に陥ってしまいます。

 DML30系は出力もさることながら、排気量も大きいために発熱量も大きいものでした。キハ181系に搭載するときには、その冷却機構である放熱器を屋根上に装備し、走行中に生じる風力によって冷却する構造にされましたが、特に奥羽本線板谷峠を走行中に険しい勾配によって速度が低下、目論まれた走行時の風力はほとんどなくなったためエンジンがオーバーヒートを起こすトラブルが頻発するという問題を抱えることになったのです。 

 

DML30系エンジンを搭載した北海道向け特急形気動車であるキハ183系は、北海道内に残っていたDMF17系エンジンを搭載したキハ80系を置き換えた。(キハ183 札幌駅 2005年5月29日 筆者撮影)

 

 急行形であるキハ65形は、キハ181系のような自然冷却式の放熱器ではなく、従来の気動車と同様、床下にラジエターを装備した強制冷却式を採用して、これらの問題を解決しました。 

 国鉄が開発した強力なエンジンであるDML30系を装備した気動車は、気動車特急網の拡大と速度の向上、ローカル線などにおける急行列車の拡充と冷房化の促進といった成果を上げていました。 

 その一方で、1964年に開業した東海道新幹線は、その後西へと延伸していきました。新幹線の開業は在来線の優等列車に大きな変化をもたらし、長距離を走破して都市間を結ぶ役割から、新幹線の停車駅から周辺の主要都市などへ連絡するというものへと変わっていきます。 

 それは、1975年の山陽新幹線博多開業も同じであり、これによって九州地区の優等列車も大きく変化することになります。そして、新幹線の博多開業を機に、福岡県の筑豊や北九州の二つの地区で、新幹線連絡輸送を充実させるとともに、キハ10系やキハ55系といった旧式化した気動車から新たな車両へ更新させ、同時に運転速度の向上による輸送改善を目的とした新たな車両を誕生させました。 

 1974年に製作されたキハ66系は、そうした計画に基づいて設計された気動車でした。

 

《次回へつづく》

 

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