旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

ボーイング737 MAX墜落が他人事ではないその理由【1】

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最新鋭機が短期間で立て続けに墜落事故という異常な事態

 一度事故が起きると、多くの人がそれまでの平穏な日常を壊され、そして想像を超える不幸に見舞われます。

 それが航空機のような大量輸送機関での事故であれば、一度に多くの人の命が失われてしまいます。そうしたことが起こらないように、航空行政を司る当局や、航空機の運航をする航空会社は、数々の厳しい規則の下に整備点検を行い、運航乗務員は厳格な制度による資格を有して厳しい訓練を積み重ねています。そうしたことは、航空機を製造するメーカーも同じで、行政当局による厳しい監督のもとにあります。

 2018年10月29日にインドネシアで起きたライオンエア機墜落事故と、その2019年3月10日にエチオピアで起きたエチオピア航空機墜落事故は、製造後間もない新型機が墜落するという航空機事故の歴史の中で、非常に稀なケースとなりました。

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 事故の原因は現在も調査中ですが、どちらもアメリカ・ボーイング社が製造販売する737シリーズの最新型であるMAX8という機体が墜落しています。製造後間もない新型機であり新品である機体が5か月の間に立て続けに事故を起こしたことで、欧州を始めとした各国は737MAXシリーズの運航と自国上空の通過を禁止する措置を行い、製造国であるアメリカでもトランプ大統領による大統領令によって運航と領空内の飛行を禁止しました。これにより、737MAXは全世界で飛行禁止となりました。

www.cnn.co.jp 

 ボーイング737は世界で最も売れている旅客機です。おそらく、この記事をお読みの方の中には、乗ったことがある方がいるかも知れません。筆者も一昨年一年間の間に3回、このボーイング737に乗りました。

 この日本でも馴染みのある旅客機は1967年に初飛行して以来、3度の大規模な改良が加えられながら進化し続けています。2019年現在、日本で多く飛んでいる737はNGシリーズと呼ばれる第三世代のものです。今回、事故を起こしたMAXシリーズは第4世代の最新鋭機でした。

Boeing 737-8 MAX Belyakov
▲ボーイング737MAXは基本設計こそ1960年代に遡ることができるが、マイナーチェンジごとに改良を重ねられ、トータルで5000機以上も造られたベストセラー機であった。新開発のエンジンと新素材、新機軸を取り入れたMAXシリーズは、次世代の小型機として大きな機体を寄せられた存在だった。(©Oleg V. Belyakov [CC BY-SA 3.0 GFDL 1.2], ウィキメディア・コモンズ経由で

 

 最新鋭機が短期間で立て続けに墜落するという異常な事故の原因はいまも調査中ですが、様々な報道などから737MAXシリーズに装備されたMCASと呼ばれる操縦特性補助システムが原因ではないかとされています。

 このMCASは737MAXシリーズ独自の装置といってもいいでしょう。

 それは、737MAXシリーズが装備するエンジンに由来するもので、燃費改善などのためにそれまでのCFMインターナショナル社製のCFM56ターボファンエンジンから、おなじCFMのLEAPギアード・ターボファンエンジンに変わりました。

 ところが、そのLEAPエンジンには厄介な癖がありました。それは、高効率なエンジンとして開発されたため、その性能を遺憾なく発揮していますが、離陸上昇中などで操縦桿を強く引くと、LEAPエンジンの高効率かつ大推力のために機首の上昇角度が極端に上がってしまう悪癖がついてしまいました。

 

 Boeing 737-9 MAX CFM LEAP-1B PAS
▲CMFインターナショナルが製造する次世代ターボファンエンジン「LEAP」。新素材を取り入れ、燃費もよく推力も高いこのエンジンは737MAXシリーズに装備されたが、その高い推力が着たいとアンマッチしていたという指摘もある・(©File:N7379E - Boeing 737 MAX 9.jpg: Clemens Vastersderivative work: Altair78 [CC BY 2.0], ウィキメディア・コモンズ経由で

 このエンジンに由来する癖は如何ともし難く、機体そのものの設計を変更するわけにもいかなかったこともあってか、コンピューターによってその飛行特性の悪癖を修正させるようにしました。これが、問題になっているMCASでした。

(次回へ続く)