旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

もう一つの鉄道員 ~影で「安全輸送」を支えた地上勤務の鉄道員~ 第二章 見えざる「安全輸送を支える」仕事・命を預かる役目・列車見張【5】

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 人よりも早く列車見張の経験を多くさせてもらうようになると、信号扱所に上がってその仕事自体を楽しむようになっていった。

 列車の運行状況がほんの僅かでも違えば、機関区のような車両基地では同じ列車を牽く機関車も、出発までに待機させる留置線が違ってくる。そうなると、車両の入換え手順も違ってくるから、現場での作業時間も変わってくる。
 そして、それをやり繰りする輸送係の職員は、まさに仕事中常にパズルをするような感じだったことに気付くなど、新たな発見がたくさんあった。


前回までは


 そして、何回も信号扱所に上がって見張業務をするうちに、信号扱をする駅の職員に顔を覚えてもらい、顔見知りになって親しくさせて頂いた先輩方も増えてきた。

 これは大きかった。

 電気区の仕事は基本的に駅や機関区に出向いて仕事をする。

 電気施設が故障などで修理をする時には、駅や機関区の職員からみれば電気区の職員は救世主にも見えることがあるらしい。まあ、中には故障で仕事にならなくなって苛立ち、「お前ら何やってんだ」と文句を言ってくる人もいるが、そんなことは滅多にないことだ。

 ところが保守作業は規則や法令で定められた周期で行わなければならない。必要なことだと頭では理解していても、実際にその作業が入ってくることで、普段とは異なる作業手順を組まなければならないこともあり、駅や機関区にとっては最小限で済ませて欲しいのが本音だ。
 だからというわけではないが、保守作業の時期がやってくると、該当する区所に予め連絡してお願いをしておかなければならない。

 ほかにも、駅や機関区の職員と顔見知りになっておくことで、仕事上でなにかと助かることもある。だから、こうした機会で顔と名前を覚えてもらうのも、大事な仕事の一つになっていた。