旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

郵便局員が駅員を兼務!? 

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 いつも拙筆のブログをお読みいただき、ありがとうございます。

 今回はニュースなどでも取り上げられた、JR内房線江見駅の業務委託に関連する話題をお届けします。

 先日、夕食をとりながらテレビのニュースを観ていると、JR内房線江見駅に郵便局が開業し、同時にJR東日本から駅の業務を委託され、郵便局員が駅員の業務を行うと報じていました。

 

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 国鉄時代から「簡易委託駅」という制度があり、国鉄職員に代わって受託した民間の人や事業所などが駅業務を担う制度がありました。例えば、駅前にあるたばこ屋さんが委託を受けて、国鉄の乗車券類を販売していたり、駅の簡単な維持管理をしていたりしていました。

 時代は変わって民営化されて30年あまり。業務委託駅といえば、JRの子会社が駅業務を受託するケースがほとんどになりました。そして、その子会社の職員の多くは、JRで定年を迎えた生粋の鉄道マンが嘱託職員として業務を担ったり、あるいは子会社に採用された契約社員であったりします。コストを軽減させるために、子会社へのアウトソーシングはよく見かける方法です。

 ところが、意外なことに郵便局が受託するという例は、これまでになかったそうです。

 このニュースを観ていた妻からは・・・

 

「へえ、郵便局の人が駅の仕事をするんだ。でも、それってできるの?」

 

 と、素朴な疑問を投げかけられました。

 確かに、鉄道の仕事は一般のそれとはかなり特殊な内容です。当然ですが、土日祝日など関係なく、しかも早朝だろうが昼間だろうが、深夜になろうが鉄道は動き続けます。もちろん、大雨が降ろうと、大雪で埋もれるほど積もっても関係ありません。

 鉄道に携わる鉄道マンは交替制勤務は当たり前で、その昔に栄養ドリンクのテレビコマーシャルで歌われた「24時間戦えますか?」を体現したような勤務でした。

 さて、今回の郵便局がJR東日本から受託したのは、駅の業務の中でも「出札」と呼ばれるものです。「出札」とは、言葉通り「札」を出すこと。つまり、長距離の乗車券類や定期券などを販売する業務で、駅の営業部門を指します。

 営業業務であれば、なにもJRが直轄でする必要はなく、委託することでコストを削減できるメリットがあります。また、受託する側も定期的な収入が期待できるので、兼業をすることでメリットも生まれてくるといえるでしょう。

 無人駅だった江見駅に、出札業務に限定されているとはいえ、やはり駅に人がいるというのは利用者にとっては安心できることの一つだといえます。

 

 一方、同じ駅の業務でも駅構内での車両の入れ換え作業や、それに伴う信号扱業務など、いわゆる運転業務は原則として委託はできません。ただし、一部の貨物駅では入換え作業については、同じ鉄道会社となる臨海鉄道へ委託していますが、こちらは臨海鉄道に所属する鉄道マンなので法定の適性検査を受けて合格しているので可能になります。

 しかし、採時(列車の通過時刻を記録し、隣接する運転取扱駅へ通告すること)をはじめ、駅構内やCTC区間ではない本線の信号取扱いなど、いわゆる運転取扱い業務は委託することができません。

 また、運転取扱い業務に就くためには、国土交通省令で定められた運転適性検査に合格する必要があります。これは、運転士や機関士といった列車を直接運転する職員だけではなく、旅客列車で客扱いなどの運転取扱いをする車掌はもちろん、駅の信号取扱いや操車などの業務や、施設電気といった列車の運転に直接携わらなくても線路上へ出て作業をする職員もこの運転適性検査に合格することが求められるのです。

 かくいう筆者も鉄道マン時代は線路上へ出て作業をしていたので、定期的に運転適性検査を受けていました。検査といっても、ずらっと並んだ数字をひたすらたし算をしていくクレペリン検査が主でしたが、これはこれで合格するのはかなり労力の要るものでした。

 このように、同じ駅の仕事でも、営業業務であれば郵便局員にも委託は可能なのです。万一、ホームや線路上で何らかのことが起きた場合、委託を受けた郵便局員ではなく、近隣の職員が常駐する駅からJR職員が派遣されてきて対応するそうです。

 

今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。