いつも拙筆のブログをお読みいただき、ありがとうございます。
8月も終わりに(この記事を執筆した時点で)近づいていますが、連日の猛暑にはさすがに辟易しています。筆者の仕事柄、鉄分の補給は休日に限られているので、夏季休業はストレス解消も兼ねて鉄分補給にはもってこいの時期なのです。
今年は残念ながら、鉄分補給もほんの少しで終わってしまいましたが、土日の時間を上手に使って楽しみたいものです。
その暑い夏に撮影した一コマです。
中央総武緩行線といえば、カナリアイエローを身に纏った電車が行き交う、首都圏でも有数の混雑路線です。国鉄時代から山手線、京浜東北線、そして中央線快速に次ぐ重要な通勤路線として機能していましたが、どういうわけかこれらの路線と比べると新形式よりは他で使い古された転用者が多く、冷遇されがちでした。
国鉄時代は山手線に103系が投入された玉突きで、「お古」となったカナリアイエローの101系がやって来ました。そして、103系は中央総武緩行線に新製車としてやってきましたが、後に中央線快速への201系投入で余剰となった103系を受け入れることに。初期の101系の老朽化による更新として201系も新製配置されましたが、国鉄時代はとかく中古車の受け入れ路線に終始していたように感じます。
民営化後も101系は残存し、205系が新製配置されたことでこれを置き換えていきますが、さすがに103系までをすべて置き換えるには叶いませんでした。この頃、JR東日本は国鉄形の205系ではなく、新機軸をふんだんに取り入れた次世代車両と位置づけた209系の導入を進めていたので、いずれは陳腐化する205系を大量に製造することを嫌っていたようです。
しかし、あまりにも過酷な使われ方を続けられた中央総武緩行線の103系は、1990年代に入ると故障を頻発するようになります。車両故障による列車の遅延や運休が日常茶飯事となると、さすがにJR東日本としても放っておくわけにはいきません。利用客からはクレームの嵐、対応に苦慮する現場からも新し車両が望まれたのです。
205系を生産は続けていたものの、できればVVVF制御である209系のような新車を導入したかったのですが、この頃は通勤形である209系と近郊形であるE217系の生産で手一杯だったことや、中央総武緩行線には次世代の一般形車輌となりE231系の導入で国鉄から継承した車両を置き換える計画があったため、103系の不具合があれば修理して使い続けるほかなかったのでした。
とはいえ、103系の老朽化は待ってはくれませんでした。1990年代終わり頃になると、車両故障によるダイヤの乱れは酷くなる一方でした。ところが、次世代車両となるE231系の開発はまだ道半ば。そう簡単に、新車の導入とはいかなかったのですが、中央総武緩行線の状況は待ったなしでした。
そこで登場したのが、209系の電装品と走行機器に、E217系の広幅車体を載せたという何とも「カオス」な急造車である209系500番代が、中央総武緩行線にやって来たのです。「カオス」とはいっても、どちらも既に実績のあるものを組み合わせてつくったので、信頼性は折り紙付きです。
老朽化の激しい103系の代替としてやって来たピンチヒッターである209系500番代は、本命であるE231系の登場までの間だけ製造されたのでした。といっても、E231系が中央総武緩行線に続々とやって来ても、どこかへ配置転換をされることはなく、1998年の新製配置以来実に20年もの長い間、多くの通勤通学客を乗せて走り続けてきたのです。
ところが、歴史は繰り替えるとでもいうのでしょうか、中央総武緩行線には再び山手線で使われたE231系500番代が2018年から入ってきました。山手線にE235系が導入された玉突きでの配置転換は、まるで103系の新製配置で押し出された101系を彷彿させる出来事です。
もっとも、車体こそはE231系と同じ広幅の軽量ステンレス車体ですが、電装品は209系と同じGTO素子を使ったインバータ装置を装備しています。一方、E231系はIGBT素子を使ったインバータ装置なので、機器面では統一性がなかったのです。車両の検修をする側にとっては、できれば同一機器で揃えてある方が整備もしやすく、部品の調達も煩雑にならなくて済みます。
そうした観点から、中央総武緩行線がピンチになったときに颯爽と現れ、救世主の如くピンチを救ったといえる209系500番代は、山手線からやってきた中古車に押し出されるように、長年走り慣れた中央総武緩行線から去っていき、新たな職場となる武蔵野線へと転じていったのです。
この写真を撮影した2018年の夏、209系500番代にとっては最後の夏になったのでした。
今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
あわせてお読みいただきたい