旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

悲運の貨車〜物流に挑んだ挑戦車たち〜 【番外編】4年でお役御免になった悲劇の郵便車【1】

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 いつも拙筆のブログをお読みいただき、ありがとうございます。

 物流と一言でいうと、多くは貨物輸送を指すと思います。コロナ禍で急激に伸張したネットショッピングでは、宅配便を中心にした貨物輸送が旺盛になりました。また、それだけでなく、原材料や製品をはじめとした物の輸送は、トラックをはじめ船舶や航空機、そして鉄道によって運ばれ、それらをまとめて「物流」と言っても間違いではないでしょう。

 一方、宅配便は1970年代からサービスが始まると、急速にそれは成長していき、いまでは私達の生活に欠かすことのできない存在になりました。

 しかし、宅配便が登場する以前は、荷物を遠方へと送る手段として鉄道や郵便によって運ばれていました。前者は手小荷物と呼ばれ、国鉄が指定した方法で梱包した荷物を、手小荷物取扱駅に持ち込み、送り先の最寄りとなる駅を指定し、運賃を支払って所定の荷札を括り付けて発送していました。

 後者は小包と呼ばれ、やはり郵便局が指定した方法で梱包した荷物を、最寄りの郵便局へと持ち込み、所定の荷札を括り付け、運賃分の切手を購入して荷物に貼り付けて発送していました。

 

町中にある郵便ポスト。今日ではポストに郵便物を投函すると、その多くは郵便局間をトラックによって輸送されて宛先へと届けられる。(©関西画像創庫, CC BY-SA 3.0, 出典:Wikimedia Commons)

 

 鉄道と大きく異なるところは、鉄道は荷受人が荷物の到着を駅から知らされると、その駅まで出向いて荷物を受け取ることになっていたのに対し、郵便は集配業務を担う普通郵便局に荷物が到着すると、それを集配課の職員が宛先まで配達してくれるという点でした。このサービスの違いは利用者にとっては非常に大きな違いであり、利便性は郵便小包のほうが高かったと言えるでしょう。

 さて、郵便局のサービスは小包だけではなく、一般の郵便物がもっとも大きな事業だといえます。いえ、郵便局から郵便物をなくしたら、もはやそれは郵便局の体をなさなくなるといっても過言ではありません。

 郵便物は大きく分けて4種類に分けることができます。

 1つは「第一種郵便物」と呼ばれるもので、一般の個人や企業間などで差出し・受取がされる、封をした封筒によるものです。簡単に言えば密封した封筒でやり取りをする郵便物がこれにあたります。

 2つ目は「第二種郵便物」で、簡単に言えばハガキがこれにあたります。

 2つ目は「第三種郵便物」で、定期的に刊行される書籍雑誌、新聞などがこれにあたります。この方法では郵便料金が安く設定されていますが、誰でも使えるというものではなく、あらかじめ郵便局の認可を受け、発想には一部を開封した封筒などを使うことになっています。雑誌の定期購読や通信教育の教材などが、この方法で配送されてくるので、目にした方もいらっしゃると思います。

 最後に「第四種郵便物」です。この郵便物は第三種郵便物よりもさらに安価な料金設定ですが、利用者さらに厳しく制限されています。主に文部科学大臣が認可した大学、大学院、高等学校の通信課程で行なわれる通信教育の教材やレポートなどの提出物、ペン習字や簿記などの通信講座(ただし監督官庁の認可を受けたもの)などでこの制度が使われます。筆者も大学通信課程で学習した時は、レポートを提出する時に専用の用紙を使って、わずか15円の料金で発送していましたが、とにかく安価なのが特徴でした。

 こうした郵便物は、ポストなどに差し出すと、郵便局から収集用の車が決められた時刻にやってきて回収し、地域の集配業務を担当する普通郵便局に運ばれていきます。普通郵便局では収集されてきた郵便物を郵袋から出し、その郵便物を受理したことを証明する消印を切手部に押印します。大きかったりかさばるものは、機械での消印ができないため、郵便局員が手作業で消印をしていきます。

 消印が押された郵便物は、次に郵便番号ごとに分ける作業をします。ここでは、近隣に発送されるものは細かく分け、そうでないものは都道府県や方面別といった大まかな分け方がされていました。

 3桁の郵便番号で、3桁目まで細かく区分された郵便物のうち、隣接したり市内など比較的近い場所に宛てたものは、そのまま直接運ばれていきます。しかし、その他のものは地域区分局と呼ばれる郵便局へと送られ、そこで地域区分局ごとに区分されて送られるのです。

 かつてはこの地域区分局から、長距離のものについては鉄道郵便局に送られ、さらにここでは荷物列車などに連結される郵便車に積み込まれて、列車が走行している間に停車する駅を起点とした郵便区ごとに揺れる車内で区分作業が行なわれていたのでした。

 このお話の主役ともなる郵便車。

 法的には、郵政大臣国鉄など鉄道事業者に対して、定期の列車に郵便物を運送する必要な設備を備えた車両を連結し、それを運送しなければならないという規定に基づいて運行し、さらにそれに必要な設備とその維持を供給することが求められていたのでした。そのため、国鉄は郵便を運送する必要な設備を備えた車両を製作し、これを運行していましたが、国鉄が製作した郵便輸送に必要な車両は荷物車や座席車との合造車にに限られ、単独の郵便車は郵政省の予算で製作された私有車で、車籍を国鉄において、その運用や管理、検修は国鉄に委託する形が採られていました。

 

国鉄時代に運行されていた荷物列車。先頭に立つEF58の次位には窓が少ない特徴のある郵便車が連結されている。郵便物の長距離輸送もまた、鉄道が主役となっていた時代があった。(©spaceaero2, CC BY 3.0, 出典:Wikimedia Commons)

 

《次回へつづく》

 

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