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今年の8月も終わりが近づきつつありますが、関東は連日猛暑で吹く風は「暖かい」ではなく「熱風」そのものです。ですが、天気予報を観ていると、関東よりも西の地域の方が日中の最高気温は高く「酷暑」に見舞われているようです。
鉄道写真の撮影は、多くが屋外での活動になります。夏は暑さ対策を十分以上にして、熱中症にならないようにしながら楽しんでいきたいものです。
さて、この暑さなので、今回はあえて「真逆の季節」の写真を取り上げることにしました。写真をご覧になって、少しでも「涼」を感じていただければと思います。
北海道の冬は、温暖な地域で生活をしている人にとっては想像以上に過酷です。ほぼ毎日のように雪が降るなんて事も珍しいことではなく、一部の都心部を除いては常に雪が積もり銀世界を繰り広げています。
筆者も冬の北海道は何度も訪れていますが、オホーツク海に面した石狩湾がほど近い札幌市内は、北からの風が吹き込んでくると、寒いを通り越して「痛い」という表現がぴったりなほど、冷たい風が容赦なく襲ってきます。
札幌市内でも都心部はそれほどでもないのですが、少しでも郊外へ出ると温暖な地域で育った身には、同じ日本でもまったく異なる景色に驚き、言葉通り身を切るような寒さに絶句させられたもので。
その北海道の鉄道は、多くが非電化です。電化されているのは函館本線の札幌都市圏となる小樽ー札幌ー旭川間と、千歳線、そして室蘭本線の東室蘭ー沼ノ端間だけと限られた区間だけです。そして、非電化となっている路線の多くは、輸送量も非常に少ないため電化させる必要がないのが実態でした。
北海道のほとんどで走り続けている気動車は、国鉄から継承した車両ばかりです。民営化直後にはキハ22やキハ24、キハ56系などなど種類に富んでいましたが、それらは製造からの年数も経ち、酷寒の地を走り続けるという過酷な環境に置かれていたため、老朽化も進んでいたことから廃車となり、国鉄から継承したのはキハ40系と、50系51形客車を改造したキハ141系だけになってしまいました。
キハ40系は車体こそ急行形のキハ56系並みのサイズになりましたが、装備するエンジンはDMF15系と呼ばれる国鉄が開発・設計したものでした。大型化し重量も増した車体をもつキハ40系にとっては、出力220PSはあまりも非力なエンジンだったのです。
しかし、民営化直後から経営状態の芳しくないJR北海道にとって、JR東海やJR九州などのように高効率で高出力の最新式エンジンに載せ替えることなど難しく、一部の例外を除いては泣く泣くこのエンジンを装備したまま多くのキハ40系を運用し続けました。
ところが、札幌都市圏から小樽以東への需要はある程度あり、特に朝夕の時間帯を中心に非電化区間へ乗り入れる列車も設定されていました。ところが、上述のように手持ちのキハ40系は非力なエンジンを装備していたため、走行性能はそれなりになっていました。そこへ、エンジンを換装して高速化したキハ183や、電化区間だけを走る電車群など、常に高速運転を行う路線を、足の遅いキハ40系で運転される列車を走らせると、他の列車の速度も落とさなければなりません。そうなると、たちまちダイヤの編成に支障が出てきてしまうのです。
そうなると、民営化後は列車の高速化による利便性の向上で、少しでも鉄道を使ってもらいたいと考えるJR北海道にとっては、札幌都市圏をキハ40系で運転する列車はできればなくしたいと考えるのでした。
そこで、電車並みの高速性能を備え、軽量ステンレス車体をはじめ、当時の新機軸を可能な限り取り入れたのがキハ201系でした。
キハ201系は高出力のエンジンと、軽量ステンレス車体という組み合わせのおかげで、加速性能も高い気動車でした。その高性能のおかげで、あろうことか電車と気動車の併結による協調運転も実現させました。
もちろん、函館本線だけではなく、札幌都市圏の非電化路線であった札沼線へも顔を出していました。
筆者が訪れたこの日はあいにくの雪。軌道はもちろん、駅ホームの屋根がない所にも雪が積もっていました。加えて、撮影したときは雪が降っていたので、ご覧の通り14時から15時にかけての時間帯でしたが薄暗く、まるで夕刻のような雰囲気です。
列車が走り去ったホームは、ただただ静寂しかなかありませんでした。エンジンを吹かし、軽妙なエンジン音がホームに響いた後は、まるで何事もなかったかのように静まりかえるのです。
列車が雪が音を吸収する性質を持っているからだけではなく、北海道の人々は冬季に列車をホームで待つことはしないで、駅の待合室で暖を取りながら待つ習慣があるので、ホームにいたのは筆者だけでした。
降りしきる雪が街を白く染めていくのを眺めていると、なにかこう、静けさとともにどこか「寂さ」を感じるのは筆者だけでしょうか。「静寂」という言葉通り、音のない世界と、白く染められていく「寂しさ」が、この写真から伝われば嬉しい限りです。
今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
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