《前回のつづきから》
1994年に登場したコキ71は、コキ70に続く超低床貨車でした。形式名が示すようにコンテナ車ですが、コキ71は他のコンテナ車と比べるとかなり変わったものでした。
車体構造はコキ70を踏襲した床面高さを700mmに抑えた超低床構造で、車体長は21,300mmと長めになりました。これは、コキ71が載せる貨物に由来するもので、自動車、特にSUVのような比較的大きな自動車を2台載せることを前提としたため、このような長さになりました。汎用性が高く、数多く製造されたコキ104の全長が19,600mmなので、その長さがおわかりになると思います。
台車は超低床に対応するため、車輪径610mmと小径車輪を採用したFT12Aを装着しました。FT12Aは、コキ70で採用されたFT11を基に改良を加えられた台車で、枕バネはボルスタレス式空気バネを採用しました。これは、コンテナ車で一般的なコイルばねを使う場合、ある程度の高さが必要になってしまうためでした。コイルばねは一定の長さがあることで、車体重量を支えるとともに振動を吸収することができますが、この長さが短いと車体を支えることができず潰れた状態になってしまいます。これですと、車体を支えきれていないので、振動を吸収することもできなくなってしまいます。
空気ばねであれば、その構造から高さがなくても車体重量を支えることができ、振動を吸収することもできます。ただ、空気ばねは超重量物を支えることには不向きで、無理に載せると空気ばねが破裂、いわゆる「パンク」してしまうのです。
そこで、コキ71は自動車積載専用のUM20Aコンテナ限定としました。UM20Aは、1個のコンテナで自動車を2~4台、上下に載せることができます。自動車だけなら、積載荷重も他の物と比べて小さく済むので、空気ばねでも問題はありません。
また、UM20Aは空コンで発送駅へ回送する無駄を省こうと、12フィート5トンコンテナを載せることができる構造にしました。コンテナの上にコンテナを載せるという奇抜な発想で効率的な輸送を目指し、UM20A1個につき12フィート5トンコンテナを2個載せることを可能にしました。これにより、往路は自動車を載せ、帰路は一般の貨物を載せることを可能にしたのです。コンテナの構造の関係もあってコキ71は5トンコンテナ4個積みとなりましたが、FT12Aの枕ばねが空気ばねであることから、5トン✕4個=20トンと抑えることができたので、この点でも問題なかったようです。
FT21Aはすでに述べたようにボルスタレス式空気ばねを枕ばねに採用したことで、直径610mmという小径車輪を装着することができましたが、軸箱支持はシェブロンゴム式を採用しました。これは、コキ50000が装着するTR223系列や、コキ100系のコキ100〜コキ105が装着した軸箱直結式とは異なり、山形の鉄板とゴムを重ねた「シェブロン」と呼ばれるばねで車軸を挟み込む方式で、上下方向に対して柔らかく支持し、左右方向では衝撃を吸収しました。これにより、従来の貨車用台車と比べて柔らかくなり、積荷の動揺を軽減させたのでした。この方式を採用したFT21Aを装着したことで、コンテナの中に格納された新製直後の自動車を傷つけることなく運ぶことを目指したのです。
ところで、コキ71が積載する(というより、ほとんどコキ71専用と言っても過言ではない)UM20Aコンテナは、その名が示すように私有の無蓋コンテナです。無蓋コンテナの形式にある数字は、通常の有蓋コンテナであれば積載可能な体積で表示されますが、無蓋コンテナは体積での表示ができないので、積載可能な面積で表します。そして、UM20Aの中でもコキ71に積むことができるUM20Aは、30000番代に区分されたものでした。といっても、同じ30000番代でもコキ71のためだけに設計されたコンテナも含むので、厳密には30001〜30017の17個がこれにあたりました。
コキ71専用のUM20Aは、自動車を積むために2段にすることができる構造でした。セダンのように全高が低い車であれば、油圧で動作する底板を上昇させて2段にすることで、4〜5台を積むことができました。この構造は、ク5000のようなものといえるでしょう。また、SUVのようにセダンよりも車高の高い車なら、この底板を下げたままにすることで載せることができ、この場合は最大で2台の車を載せました。天地方向には車両限界いっぱいにまで広げたことと、こうした特殊な構造としたことで、多様な自動車を載せることを実現しました。
また、工場から出荷した新車が、顧客に届くまでに汚損することは避けなければなりません。雨水程度であれば、顧客に引き渡す前に洗車すれば汚れも落ちるのでさほど問題になりませんが、鉄道輸送をするとなるとブレーキから飛び散る制輪子の鉄粉はボディーに着いてしまいます。この鉄粉は、洗うことで落ちればいいのですが、実際にはボディーに着いてしまうと、ボディーの金属に融着して洗うだけではなかなか落ちないものです。
《次回へつづく》