旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

「懐かしの東急8000系ツアー」を満喫 若かりし頃の思い出にも浸って【1】

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 いつも拙筆のブログをお読みいただき、ありがとうございます。

 コロナ禍の中で、鉄道事業者は軒並み輸送量が激減したため、営業収入もそれとともに大幅に減少しました。そのことは、大手私鉄やJR本州三社ですら大幅な赤字を計上するなど、鉄道という事業そのものに激震をもたらしたのは記憶に新しいことでしょう。

 そうした中で、少しでも収入を得ようと各社は知恵を絞ることになります。その一つが、鉄道事業者保有する車両基地などでの撮影会を含んだ旅行ツアーでした。

 そもそも、車両基地の公開はコロナ禍前には盛んに行なわれていました。これは、車両基地の所在する地域や沿線住民、利用者への事業に対する理解を促進し、あわせて地域へ貢献することを前提として行なわれていたものです。

 車両基地などの公開イベントでは、多くの地域や沿線の住民が訪れていました。公開イベントに携わる職員も、そうした訪問客を想定して様々なブースを設けて、業務内容への理解の促進や、出店などのサービスを提供する光景が多く見られました。

 筆者もいくつかの公開イベントにお邪魔したことがありますが、中でも印象深かったのは、小田急電鉄海老名検車区で行なわれていた催しで、信号通信関係や電力関係のビースがあることでした。かつて、これらの設備の保守管理に携わった身としては、やはり見逃せないものがあり、特に踏切の展示では実際に動作する様子を展示していましたが、それらの機器は30年ほど前のものとは「似て非なるもの」であり、現役の職員に己の素性を明かした上で、様々なお話をさせていただきました。

 さて、こうした公開イベントには、地域や沿線の住民、利用者以外に多くの人が訪れます。鉄道ファンはこうしたイベントが開催されると、遠方からも多くが押し寄せてきて大変な賑わいになっていました。

 鉄道事業者はこの鉄道ファンをターゲットに絞り込み、人数を限定しやすい旅行パッケージ形式にした上で、様々な「お土産」をつけて販売するようになりました。もちろん、お値段も相当なもので(平均10,000円以上が多い)、よほど財布の中身に余裕があるか、趣味だけに財産を注ぎ込む感覚がなければ、なかなか参加できるようなものではないというのが、筆者の正直な感想です。

 そのような中、今年の6月に東急から送られてきた一通の郵便が目を惹いたのでした。

「ま〜、くじ運の悪さは折り紙付きだから、当たらないと思って応募してみよう」

 てなことを考えて応募したのが、今回参加した伊豆急行主催の「懐かしの8000系」だったのです。特定の人向けのツアーだったので、お値段もお手頃でしたが、往復の交通費を含めるとそれなりのお値段にはなりました。が、多くの発見もあって、かなり満足するものでした。

 ずいぶんと前置きが長くなってしまいましたが、今回はその「懐かしの8000系」ツアーの様子をお送りしたいと思います。

朝早く自宅を出発し、東海道新幹線伊東線伊豆急行線を乗り継いで10時30分頃に、集合場所の伊豆高原駅へ到着。伊豆高原車両区には黒船塗装の2100系、帯なしの8000系や、最近、JR東日本から譲受した3000系も留置されていました。

 

専用の団体臨時列車を待つ間、伊豆急下田から霧雨が降る中を、「キンメ電車」塗装の2100系が到着。キンメダイを彷彿させるその塗装は、とにかく目立つものでした。伊豆はキンメダイ料理が目玉で、多くのホテルなどでも味わうことができます。

 

定刻近くになると、いよいよ特別塗装が施された8000系が入線。ツアーの参加者が一斉にカメラを向けていました。東急時代の「歌舞伎塗装」をモチーフにした伊豆急オリジナルの塗装で、オーシャングリーンとハワイアンブルーの2色の帯は新鮮で、これはこれで似合っていました。

 

定刻通りに伊豆高原駅を発車した列車は、曇天で時折小雨が降る東伊豆の海岸沿いを南下していきました。途中、片瀬白田駅を通過した先、海が最もよく見えるところで列車は一旦停車。晴れていれば伊豆七島も望むことができる絶景ポイントで、参加者へのサービスだったのですが、ご覧の通り灰色の空以外見えませんでした。

 

 30分弱の往路の行程は終わり、伊豆急下田駅に到着。最後にこの駅を訪れたのは、今から20年も前のこと。ホームや駅舎などは基本的に変わっていませんでしたが、停車している車両は変わっていました。

 

 ここで昼食。ツアー代金を支払った時にいただいたお弁当。幕の内弁当でしたが、その包み紙まで今回の主役である8000系・伊豆急歌舞伎塗装が!かなりの凝りよう、伊豆急行の熱意(?)が伝わってきました。

 

 

中身はごく普通の幕の内弁当。とっても美味しくいただきました。

ツアー参加者向けの撮影会までは自由時間です。伊豆急下田駅周辺の観光を楽しんでもらいたいというのが、今回のツアー企画の狙いの一つといってもいいでしょう。今回は下田ロープウェイに乗って寝姿山に登りました。下田ロープウェイのゴンドラのデザイン、どこかで見たことありませんか?

 

実は、伊豆急行の2100系R-5編成を改造して登場したクルーズトレイン「THE ROYAL EXPRESS」とコンセプトを合わせた塗装になっていました。頂上の寝姿山山頂駅には、同じコンセプトでつくられたレストランもありました。(出典:写真AC)

 

寝姿山の山頂からの眺め。お昼すぎから晴天になって、見晴らしは抜群によくなりましたが、それに伴って気温もみるみる上昇。暑くて立っているだけで汗が吹き出すほどでした。

下田港の一角にある、海上保安庁下田保安部の桟橋には、はてるま型巡視船「しきね」が停泊していました。純白の船体に青い「S」マークは海保の船とすぐわかり、何故か5歳児にして俳優の阿部寛さんが大好きな娘は、「(DCUの)隊長が乗っているの?」と(笑)

 

寝姿山での散策も終えて、再び伊豆急下田駅へ。いよいよ今回のツアーの目玉となる、8000系の撮影会へと向かいます。

 

《次回へつづく》