旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

手間がかかるなら付けたままにしてしまおう ラッセルヘッド永久固定した異端機・DD21【1】

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 いつも拙筆のブログをお読みいただき、ありがとうございます。そして、最後の更新からご無沙汰しております。

 昨今、報道などでも多くの方がご承知のように、筆者の生業を取り巻く環境は年々厳しさを増しております。なにしろ人手不足は甚だしく、加えて年度途中で病に倒れてしまったり、あるいは出産による産休育休を取得する人も増える一方で、それを補う人員が集まらないという実態があります。

 前者は仕方のないことであり、後者は非常に喜ばしいことではあるものの、それを補う人がいないというのは大きな問題になっています。加えて、過酷な労働環境がクローズアップされるばかりで、新たな志願者が減る一方であるのに対し、抜本的な解決策を見出していない実態があるのです。

 結果として、そのしわ寄せは職員の過重労働につながり、さらにその先には未来を担う子どもたちが一番の不利益を被っています。何とかしたいとは思うものの、今の制度では限界があるといえるでしょう。

 筆者も夏頃から多忙を極めるようになりました。立場上、以前ほどではないにせよ、やはり持ち帰りの仕事があるというのが実情です。そのため、ブログの執筆を進めることが難しい状態ですが、せっかくここまで続けてきたのですから、やはり何かしらは書いていこうという思いでもあります。

 引き続き、ご愛読賜われるとありがたい限りです。

 

 さて、はやくも季節は夏から秋に変わってきました。猛暑続きだった夏も終わり、朝晩は秋めいてきてきましたが、これからどんどん気温が下がっていき、やがて冬が訪れます。そうすると、豪雪地帯では雪への備えが進められると思います。

 近年、地球の温暖化によって夏は猛暑、冬はあまり気温が下がらず、豪雪地帯と呼ばれるところでも積雪量が減少する傾向にあるようです。しかし、ほんの10年ほど前、いえ20年ほど前まではそうしたことも少なく、冬になれば当たり前のように雪が降り積もり、北海道は言うに及ばず、本州では日本海側から東北にかけて多くの雪が降り積もりました。

 もちろん、雪が降ることは生活に欠かせない水をもたらしますが、一方では交通機関の往来に支障をきたします。そこで、こうした積雪が多い地域では、冬に向けて除雪車の準備を欠かすことができません。

 鉄道も然りで、積雪が多い地域には除雪用車両を配置してきました。古くは貨車に分類されたラッセル式のキ100形や、豪雪地帯ではロータリー式のキ600形といった雪かき車が用いられていました。しかし、これらの車両は自前で動力をもたないため、機関車による牽引あるいは推進を欠かすことができず、ロータリー式のキ600形にいたっては、ロータリーヘッドを動かすための動力源が蒸気であるため、車内に蒸気機関車同様にボイラーをもち、燃料としての石炭も積載しなければなりませんでした。

 また、キ100形ではラッセルヘッドを操作するための要員として保線職員が乗り組んでいましたが、キ600形では保線職員のほかに動力源のボイラーを動かすために、ボイラー技士の国家資格をもつ職員も乗務させなければなりませんでした。加えて、整備にはボイラー整備士の有資格者を欠かすことができないなど、非常にコストのかかる非効率的なものだったのです。

 

日本海側から東北、北海道にかけて冬季に欠かすことのできない車両のひとつに、雪かき車があった。雪に埋もれた鉄路を守るため、冬になると活躍するこれらの車両は、夏季になると使われることがないことから、蒸機時代はこのような動力をもたない貨車として分類された事業用車が使われていた。しかし、無煙化の推進によりディーゼル機への置き換えが進むと、自走できる除雪用車両としてDD15形などが開発され、これらの自走できない雪かき車は姿を消していった。写真のキ100形はもっとも多く使われたラッセル式雪かき車で、現在も保存された車両たちが往時の雪との闘いを伝えている。(キ274 三笠鉄道記念館 2016年7月24日 筆者撮影)

 

 しかし、蒸気機関車に代わって内燃機関であるディーゼルエンジンが発達してくると、国鉄鉄道車両用のディーゼルエンジンを開発し、出力500PSのDMF31系が実用化の目処が立つと、これを2基搭載したDD13形を開発、運用にこぎつけたのでした。

 燃料は軽油を使うため、その補給に手間もかからず、しかも蒸気機関車のボイラーに比べて劇的に小型軽量化を実現したディーゼル機関車の成功は、当然、その機動力を活かして除雪用に使うことが考えられました。

 初の本格的実用量産機であるDD13形をベースに、雪かき車を代替えする除雪用ディーゼル機の開発がなされ、ラッセル式ではDD15形を、ロータリー式では日本でも珍しいセンターキャブ形の車体をもったDD14形が開発され、降雪地域に配置して除雪列車に充てられました。

 このDD14形とDD15形は、冬季は除雪用ヘッドを取り付けて除雪列車として運用に充てられましたが、夏季は除雪列車の運行がないため、当然、遊休化してしまいます。しかし、ディーゼル機の黎明期には夏季にディーゼル機を遊ばせておくような余裕はなかったので、手間はかかるのは承知でシーズンオフになると除雪用ヘッドを取り外してDD13形と同じような運用に就かせ、シーズンオンになるとそれを取り付けるといった運用がされていました。

 

国鉄初の実用ディーゼル機であるDD13形が成功し、量産に移されていくと、その機動力を活かした除雪用車両の開発が考えられるようになった。特に需要の多いラッセル車は構造も簡単であり、従来のキ100形が機関車に推進される形で運行されていたことから、ディーゼル機にラッセルヘッドを取り付けることで、これに代えることにしたのがDD15形だった。写真のように、DD13形にラッセルヘッドを付けた形態だが、機関車本体に直接取り付ける方式だったため、その脱着はクレーンやジャッキなどを使う大掛かりなものだったという。特にディーゼル機が少数で貴重だった時代は、夏季に運用しないで留置するなど贅沢な運用ができず、最大限に活用する方針からラッセルヘッドの脱着は必須だった。(DD15 37 小樽市総合博物館 筆者撮影)

 

 ディーゼル機の絶対数が足りなかった時代は仕方がなかったとはいえ、やはり非常に重い除雪ヘッドの脱着は、検修職員にとっては重労働であることには変わりませんでした。特に、国鉄の労使関係はお世辞にも良好であったとは言えず、重労働を余儀なくされることに対して少なからぬ反発があったと想像するのは容易であると言えるでしょう。

 そこで、こうした除雪用ヘッドの脱着を不要とし、夏季は入換作業に限定した運用に充てるという、ある意味割り切った車両が考えられるようになりました。これならば、検修職員を重労働から解放させることができ、夏季にはDD13形が担っていた入換作業から列車牽引の運用に充てることが可能になります。

 こうして、1963年に開発されたのがDD21形だったのです。

 

《次回へつづく》

 

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