旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

消えゆく「国鉄形」 常に目立つことなく隠れた力持ち【3】

広告

DD13形より力強い、ディーゼル機関車の決定版DE10形の登場

 DD51形の成功をみた国鉄は、DD51形用に開発されたエンジンを活用したあらたな機関車の開発に着手しました。操車場や駅、運転区所などでの車両の入れ換えや、線路構造が幹線に比べて構造的に弱いローカル線での小運転をこなせる性能をもったディーゼル機関車で、まさにDD13形の開発目的とほぼ同じでした。
 言い換えれば、期待されながらも所期の目的を果たせなかったDD13形のリリーフできる、ともすればそれ以上の仕事ができる機関車ということでした。


前回までは

blog.railroad-traveler.info


 こうして大出力エンジンであるDML61形を1基装備した新型ディーゼル機関車、DE10形が1966年に登場しました。DE10形は、エンジンの出力だけを見ても先輩であるDD13形の改良形と同等以上でした(DD13形は500PSのDMF31形×2、DE10形は1,250PSのDML61形×1基)。

 一方でDE10形はDD13形と比べると、大きく異なる部分が多くありました。
 車両の外観も、DD13形は車体の中央に運転台があり、その両側をエンジンなどを収めたボンネットが挟む「センターキャブ」と呼ばれる形でした。DE10形はエンジンが1基になったので、片方にエンジン類を収めた長いボンネット、そして運転台を挟んで反対側には暖房用の蒸気発生装置などの補助機器類を収めた短いボンネットという「セミセンターキャブ」と呼ばれる形になりました。

 車両の形だけではありません。
 DE10形は蒸気発生装置などの機器を載せたことで、車両重量が65トンにまで重くなってしまいました。通常、車両の重量が重くなることはあまり好まれませんが、DE10形はそれを逆手にとって重量が増したことで安定性を得て、貨物を載せて重量の嵩む貨車の入換作業もこなせるようになりました。
 車両の重量は重くなりましたが、ローカル線で列車を牽くことを前提にして軸重は13トンと軽くなるように抑えました。これは、DD13形は動輪が4軸であったのに対し、DE10形は動輪を5軸に増やしたことで、軸重を抑えることができたのです。

DSC02782 -1
▲DE10形ディーゼル機関車は、ボンネット内に排気量61リットル、出力1,250PSのV形12気筒エンジンを装備している。エンジン出力も増えただけでなく、反対側には暖房用の蒸気発生装置も装備しているので、車体重量も65トンにまで増えたが、動輪を5軸としたことで軸重を抑えることができた。入換から線路規格の低いローカル線でも運用可能な貨客両用の機関車として重宝された。写真はDE10 1553。出力増強形の1000番代から蒸気発生装置を省略した貨物用で、国鉄からJR貨物に継承された。(2011年4月 筆者撮影)

 そして、この動輪が5軸になったこにより、DD13形の4軸と比べてブレーキ力も増し、操車場における入換作業も難なくこなせるようになりました。さらには、冬季に客車列車を牽く時に必需品である暖房用の蒸気発生装置も装備するなど、まさに入換作業から本線での列車を牽く仕事までこなせる、オールラウンドプレイヤー的な性能と装備をもったDE10形は、DD51形と並んで国鉄の標準形ディーゼル機関車となったといえるでしょう。

 このようなオールラウンドプレイヤー的な性能をもったDE10形ですが、大規模な操車場での入換作業、特に「ハンプ」と呼ばれる人工の丘の上に重い貨車を低速で押し上げるという過酷な仕事となると、DE10形でも役不足ではありませんでしたが、ローカル線での運転もできるように軸重を13トンに抑えていたので、より安定した性能をもつ重入換用の機関車が求められました。

 そこで、中型ディーゼル機関車の決定版ともいえるDE10形から、入換専用機では必要のない蒸気発生装置を取り除き、代わりに軸重を増加させるためのデッドウェイト(死重)となるコンクリートブロックを、短いボンネットの中に載せた試作機(DE10 900番代)をつくりました。