生まれてからというもの、都会暮らししか経験のない私にとって、気動車とは本当に縁が薄い存在です。
だからというわけではないでしょうが、気動車の独特の雰囲気についつい惹かれるものがあります。走り出すときの力を振り絞るようなエンジンの音、停車中でもあたりに漂わせる軽油が燃えた匂い、そして都会の電車にはない車内のシート。
およそ高頻度・大量輸送という仕事からは縁遠い役柄ですが、それはそれでその地域にとっては貴重な存在だったといえるでしょう。
キハ52形は国鉄時代に造られた軽量構造の一般形気動車の中でも、エンジンを2基も装備する力持ち。だから、平坦なところではなく、どちらかというと勾配の・・・坂道の多い山間(やまあい)の路線を走る存在でした。
そのキハ52、国鉄~JRでの仕事を終えて、いまでは房総の地にあるいすみ鉄道で最後の活躍を続けています。
古豪ながらも綺麗な状態を保っています。
車内は時代に合わせて目立つ柄の優先席、ワンマン運転用の整理券発券機、そして冷房装置が設置されていますが、それ以外は比較的登場時のままでした。
揺れる車内を座席越しに眺めてみます。
この車内に、多くの人が乗り、そしていろいろな時が流れたのでしょう。
キハ52のエンジン。国鉄から引き継いだ車両の一部は、新型エンジンに載せ替えた車両もありましたが、このキハ52はオリジナルのDMH17と呼ばれるもの。設計が古く出力も現代のエンジンに比べるとかなりの非力ですが、今なお現役です。
キハ52のような気動車は、こうした青々とした木々が生い茂る山の中の光景が似合うと思うのは私だけでしょうか。
ホームと乗降用のドアの間にはかなりの段差があるのも、国鉄形の気動車の特徴といえるでしょう。ドアにはステップが設けられて少しでも乗降がしやすいようにはしていますが、それでも段差はかなり大きいようです。
小学生がホームから大股でステップを踏み込んでから乗り込む姿は、キハ52の高さを表しているようで印象に残りました。
製造されてからの年数もかなり経ち、補修用の部品も底をつきつつある今の時代に、この古豪であるキハ52はいつまで走り続けられるのかは分かりません。ですが、昭和の時代に、その時のもてる技術をつぎ込んで誕生したこの気動車が走っていたということを、平成生まれの子どもたちに伝え続けてくれればと思います。