前回のつづきより
(8)リニューアルで面目を保った185系
民営化によりJR東日本に引き継がれた185系は、当初はそのまま大きく手を加えることなく使われ続けました。特に、民営化直後はいくら首都圏という「ドル箱」を抱えていたとしても、今日に見られるように経営基盤も盤石とまではいかず、どっちに転んでもおかしくなかったというのが現実でした。
しかし、いつまでも国鉄の暗い影を引き摺ったままというわけにはいかず、特にJR東日本は国鉄時代のものを可能な限り早い時期に追い払うことに躍起になっていたのでした。
その一つが特急列車の全面的なイメージ改善でした。特急列車は、鉄道会社にとって看板ともなる商品です。その看板商品が旧態依然のままというのは、民間企業としては考えられません。もしも、このまま放置しようものなら、「看板だけかけかえた」と言われかねません。
そこで、最初に常磐線の「ひたち」に新車である651系を送り込み、イメージはもちろんですが接客面、運転面で改善をしました。ついで、成田空港への空港連絡特急として253系を開発、「成田エクスプレス」として登場しました。さらに、中央本線にはE351系を導入、「スーパーあずさ」として列車のスピードアップを実現させました。
このように、民営化後には矢継ぎ早に新型車を開発・製造し、既存の車両を置き換えてサービス面での改善を図るとともに、列車の速達性を向上したり、利便性を高めたりするなどしました。いっぽうで、国鉄から引き継いだ183系などは、座席の交換を始めとする内装と居住性を改善するリニューアルを行い、イメージチェンジを勧めました。
中でも信越本線を経由して上野と長野を結んだ「あさま」と、中央本線を経由して新宿と同じく長野を結ぶ「あずさ」に充てられた183・189系はその好例と言えるでしょう。座席の交換をや客用窓を拡大することを始めとした車内のリニューアルだけではなく、外部塗装も前者は濃緑色の帯を、後者はライトブルーの帯を窓まわりを中心に引き、形こそ国鉄形でしたが新しい時代の特急列車としてふさわしくなるよう、居住性を大幅に改善させたのでした。
こうして、新車の投入と既存車の活用という二本立てで、特急列車のサービス改善を進めたJR東日本ですが、185系にもリニューアル工事を施すようになります。
そのメインといってもいいのが、登場以来、とかく評判の悪かった転換クロスシートの交換でした。特急用の車両なのに、普通列車に充てられる113系のグリーン車よはリクライニング機構があるのに、185系にはそれがなかったがために「急行形に毛が生えた程度」とまで揶揄されたほどです。
この評判の良くなかった座席は、リニューアル工事でリクライニングシートへと替えられました。また、転換クロスシートでは座席のクッションの厚さにも限度があったのですが、こちらについても座り心地を向上させるために厚みのあるものへと交換されます。
185系は急行形の153系を置き換えることを意識し、特急から普通列車までこなすという相反する設計思想をひとまとめにしたため、特急形電車としては異例ともいえる開閉式の側窓を備えています。リニューアル工事では、側窓などの車体に大きな手を加えることはありませんでした。これは、185系自体が登場からまだ経年が浅いことと、リニューアル工事を施工した時点でも普通列車としての間合い運用があったことが挙げられるでしょう。車体自体に手を加えることは、施工コストの増大も招くので、185系に冠して言えばそこまでする必要性がなかったのかも知れません。
外観はといえば、国鉄時代はホワイト・アイボリーに緑2号の斜めストライプという斬新な塗装でしたが、リニューアル工事ではおとなしめのブロックパターン塗装へと変わりました。0番代と田町所属の200番代は、主に走る湘南のイメージを持たせるために、湘南色で使われる濃緑色と黄かん色のブロックパターン塗装になりました。また、新前橋配置の200番代は、塗装パターンこそ同じブロックパターンでしたが、グレート黄色、そして赤色と田町配置者とは異なる色となりました。また、「EXPRESS 185」のロゴも入るなど、それまでのイメージを一新しながら引き続き、近距離特急列車を中心に活躍を続けます。
《次回へ続く》
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