旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

存廃に揺れる北海道の駅 「思い」だけでは維持は難しい理由(2)

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〈前回からの続き〉

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 そんなJR北海道に「とどめを刺す」ように、それまでは各地に散らばっていた人々は、都市圏へ集中するようになり、沿線の過疎化は進んでいったのでした。そのため、鉄道の利用者は減る一方になり、利用が見込めないということで列車の運転本数は削減され、鉄道の利便性は低くなってしまいました。乗りたい時間に列車がなく「鉄道は不便」だからとなり、潜在的な利用者は自動車や高速バスに転移してしまい、さらに利用者を減らすという「負のスパイラル」状態に陥ってしまったのでした。

 つい先日、ネット上のニュース配信記事で、宗谷本線にある抜海(ばっかい)駅の存廃問題が取り上げられていました。

 

www.asahi.com

 

 ニュース記事では「JR宗谷線抜海駅の存廃問題で、北海道稚内市は28日、半年ぶりに地元で住民説明会を開いた。市はスクールバスの利用など代替案を示し、廃駅へ理解を求めたが、住民は長年駅と歩んできた地域の歴史にも触れ、「利便性は悪くても誰も廃駅を望んでいない」と存続を求めた。」(朝日新聞デジタルより引用)とあり、利用者が極端に少ない駅の存廃について、地元住民に廃止に伴う代替案をしめしたのですが、地元住民からの理解が得られなかった、というものでした。

 この記事を目にしたとき、抜海駅には一日何人が利用し、何本の列車が停車するのかということが気になりました。すると、驚いた数字を目にしたのです。

○1日あたりの乗車人数 1.4人

○列車の停車本数 下りは3本 上りは4本

 あまりの少ない数に、つい先日廃止された札沼線北海道医療大学新十津川間のことが重なって見えたのでした。

 さすがに1日に2人に満たない数しか乗車がないとなると、JR北海道としては駅を廃止したいところでしょう。停車する列車の本数も、上下合わせて7本とは、ほとんど列車が来ないに等しい数といっても過言ではありません。

 しかし、JR北海道は廃止にはしないで、今日まで駅を維持してきました。それは、地元である宗谷市がJR北海道に対して年間126万円を維持管理費を補助し続けてきたためでした。

 

f:id:norichika583:20200807152009j:plain(©Mister0124 / CC BY-SA (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0))

 

 列車が駅に停車をすると言うことは、そこで乗り降りする利用者があるということをいうことを見込んで行われます。そこに停車しても、乗り降りするする利用者がいないというのは、鉄道としては好ましいことではありません。

 いくら自治体からの補助があるといっても、抜海駅のケースでは「駅の維持管理費」だけが補助されているので、列車の停車にかかわる費用までは補助されていないと解するのが妥当でしょう。

 では、この「列車の停車にかかわる費用」とはどのようなことでしょうか。

 鉄道車両は通常、加速するときと減速するときにエネルギーを消費します。宗谷本線の場合は気動車なので、列車が加速するときにはディーゼルエンジンを回転させますが、この時に燃料を多く消費します。また、減速するときにはブレーキを使いますが、ブレーキは制輪子と呼ばれる部品を車輪に擦りあてます。この時、制輪子と車輪は摩耗してしまいます。北海道では鋳鉄制輪子と呼ばれる耐雪性の高い特殊な部品を使うので、本州以南で使われているレジン制輪子に比べてコストがかかるのです。また、気動車なのでエンジンには多くの油脂類が必要で、エンジンを回転させればさせるほど、油脂類の消耗も高くなってしまいます。

 また、列車を駅に停車させるということは、運転時分も伸びてしまいます。もちろん、利用者がいればそう大したことではないのですが、皆無に等しいとなれば話は別です。駅に停車した分だけ時間がかかれば、速達性はどうしても犠牲にしなければならないので、ひいてはサービスの低下につながっていると考えられます。

(次回へつづく)

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#JR北海道 #鉄道の存廃問題 #宗谷本線