旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

この1枚から 延命工事で面目一新したキハ47【1】

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 いつも拙筆のブログをお読みいただき、ありがとうございます。

 前回に続いて今回もキハ40系のお話です。

 国鉄から各旅客会社が継承した気動車の中で、最も数が多かったのがキハ40系でした。1977年から1982年にかけて888両という大量に製造された一般形気動車で、北は北海道から南は九州まで、全国各地の国鉄非電化路線で活躍していました。国鉄の分割民営化が具体化する直前まで製造されていたので、車齢が若く最も新しい車両では製造から5年しか経っていなかったため、全車が新会社に継承されています。

 キハ40 400番代の稿でもお話しましたが、キハ40系はキハ58系とほぼ同じ拡幅車体をもち、車内の設備も電車並みとするなど、一般形気動車としては大幅に向上させました。ただ、その分だけ車体重量も増えてしまい、装備するDMF15HSAが出力220PSと従来のDMH17系列に比べて性能が向上したとはいえ、重量の増えた分だけ力不足になってしまったのです。そのため、運動性が芳しくなく、特に登坂能力は従前の気動車と変わらないものになってしまったのです。

 もちろん、これらを継承した各旅客会社は、数が少なかったJR四国を除いて、低排気量で低燃費、そして出力も高い高効率なエンジンに換装させて、時代に合わせた車両へと生まれ変わらせました。

 その中でもJR西日本は、ちょっと変わった方法で機関換装を行いました。

 1994年から始まった機関換装は、小松製作所製のSA6D125H-AやSA6D125HE-1といった小型軽量で高出力のエンジンを採用しました。出力は全車が250PS、後者は335PSと言う性能をもっています。

  しかし、これら高出力・高効率のエンジンに換装させるのは簡単ですが、問題はその時期でした。

 JR西日本は関西圏と東海道本線山陽本線北陸本線いった大都市圏と幹線の一部は電化されていましたが、多くの非電化路線を抱えていました。当然、これらの路線では大量の気動車が配置されているので、機関換装を施工した車両と施行されていない車両が混在することになります。エンジンの性能差が激しいと、両者を併結したときに走行性能に大きな影響を及ぼすため、可能であれば運用を分けるなどして併結することを避けるのが理想的ですが、現実問題としてこれらを分けて運用するのは手間もコストも掛かってしまいます。

 そこで、機関換装を施工した車両は、エンジンの出力を未施工車の性能に合わせるようにリミッターを設定して出場させたのです。こうすることで、性能差は最小限に抑えられ、施行済みの車両と未施工の車両を併結することを可能にしました。しかし、せっかく多額の費用をかけて新型エンジンに載せ替えても、その性能を十分に発揮できませんが、致し方のないことと割り切ったのでしょう。

 やがて、機関換装工事も進んでいき、JR西日本保有するキハ40系全車の工事が終了すると、初期に乾燥麹を受けてリミッターを設定していた車両も、その必要がなくなったことからリミッターを解除されて本来の性能を発揮するようになりました。

 

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キハ40系の中で、キハ47は両開き扉を備える2ドア車という、近郊形の体裁で製造された。車内もドア付近はロングシート、ドア間はクロスシートという近郊形の配置だったため使い勝手がよく、寒地向け、暖地向けを含めて数多くが旅客会社に継承されている。その後、運用する路線などの実態に合わせた改造が行われ、今日ではオリジナルのままで運用されている車両はほぼない。改造はエンジン換装による性能向上が中心だが、中には観光列車へ大規模な改造を受けるものも出てきている。写真はJR九州のキハ47 128。ベンチレーター撤去と冷房化程度で、数少ないほぼ原形に近い1両ともいえる。(キハ47 128〔本カラ) 佐賀駅 2017年7月27日 筆者撮影)


 ところでJR西日本は、いわゆる本州三社と呼ばれる旅客会社の1つですが、JR東日本JR東海と比べると、経営基盤は必ずしも盤石とは言い切れません。確かに関西圏という大都市圏を抱えているので、それなりの収益を見込むことはできます。しかも、山陽新幹線も擁しているので、みかけは収益につながる路線を多数保有していると考えられるでしょう。

 しかし、実際には関西圏の鉄道路線は、古くから競合する私鉄各社と熾烈な利用者の奪い合いを展開し、僅かな差異が利用者の減少につながるという、いわば「薄氷を踏む思い」を続ける環境にありました。

 これは、特に京阪神を結ぶ路線で顕著で、京都ー大阪間は阪急京都線京阪本線と常に競合しています。大阪ー神戸間も阪急神戸線阪神本線と、大阪ー和歌山間は南海電鉄と競合しつづけてきました。それ故に、国鉄時代からほかの地域とは少しばかり異なる施策を展開しつづけ、常々利用者を取り込むことに腐心してきたのです。その代表例が東海道山陽本線で運転される「新快速」が挙げられます。料金不要で、クロスシートや転換クロスシートの車両を投入し、高頻度で高速運転という特急列車並というのは、他の国鉄路線では考えられないものでした。

 一方で、山陽新幹線を擁しているので、「新幹線があれば収益につながる」という見方もできます。たしかに、在来性と比べれば新幹線は高い収益をもたらす可能性はあります。特にJR東海東海道新幹線を中心に据えた営業方針で、在来線が多少儲からなくても新幹線で得られる高い収益を背景に、かなり強気とも取れる営業戦略を敷いていることは、関係者だけでなく多くの人が知るところです。

 

《次回へつづく》 

 

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