旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

EF510 300番台の増備で置き換えが確実になった九州の赤い電機の軌跡【18】

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《前回からのつづき》

 

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 JR貨物保有する機関車は、基本的に貨物列車を牽くために運用されるものですが、門司区配置のED76形に限っては特例ともいえる運用がありました。それは、門司港駅西鹿児島駅感を結ぶ夜行急行列車を牽く運用がそれで、鹿児島本線を走り通す「かいもん」と日豊本線周りの「日南」が、JR貨物のED76形がその先頭に立っていたのです。

 これは、民営化後に多く見られた貨物会社と旅客会社の間にあった受委託によるものでした。こうした例は全国でも数多く見られ、基本的には貨物列車を旅客会社が委託を受けて旅客会社に所属する機関車と機関士によって運行されるというもので、例えば常磐線系統の貨物列車はJR東日本の田端運転所に所属するEF81形やEF510形500番台がこれを牽き、同所に所属する機関士が乗務するというものです。実際に新鶴見機関区には「田」の区名札を差したEF81形が留置され、JR東日本の制服を着た機関士がこれに乗る姿を何度も見たものです。

 

国鉄時代から運転されてきた客車による夜行列車は、民営化後もしばらくは残されていた。これらの列車には旅客会社の機関車が充てられ、旅客会社の機関士が乗務することが原則だったが、継承した機関車の数に限りがあり、機関車に乗務することのできる機関士も少数だった。そのため、数多くの機関車を保有し、機関士を擁する貨物会社が受託する例があった。鹿児島本線を走破する「かいもん」は、写真のようにJR貨物門司機関区に所属するED76形が所定の運用として充てられ、乗務するのもJR貨物の機関士だった。こうした組み合わせを日常的に見られたのは、九州のED76形ぐらいだった。(©spaceaero2, CC BY 3.0, 出典:Wikimedia Commons)

 

 こうした受委託は様々な理由によるものでしたが、分割民営化をする際に、国鉄からJR貨物に移籍する機関士は運行される貨物列車の本数によって決められたため、その数が非常に限られていたことも要因の一つでした。また、機関車の電気方式の違いにより、交直流用のEF81形を扱うことができる機関士が、関東では(旧)田端機関区に限られていたため、直流機専門の新鶴見機関区や高崎機関区に所属する機関士では運転ができないためでした。

 急行「かいもん」「日南」はその逆の事例で、これは全国を見渡しても唯一といっても過言ではない例でした。これは、全国展開するJR貨物に所属する機関士の中で、国鉄時代から変わらず客車列車の運転を担当していたことになります。そして、門司区所属のED76形もまた、「かいもん」「日南」の先頭に立ち、国鉄時代を彷彿させる姿を見せ続けたのでした。

 JR九州に所属する車両に比べ、JR貨物のED76形は重量の重い貨物列車を牽く運用を主体に充てられるため、老朽化も進みやすいという課題を抱え、1990年代半ばになる頃にはそれが顕著になってきました。また、交流専用の新型機開発の時期ではなかったことや、直流機の代替となる車両が優先されたこと、さらに経営環境の厳しさから資金も潤沢ではないことなどから、ED76形は更新工事を施工することで延命を図ることにしました。

 

ED76形の最終増備グループとなる1000番台第3次車。1979年に製造されたため、分割民営化当時は車齢が8年という若い車両だった。しかし、重量貨物列車を日常的に牽くという過酷な運用をこなす中、後継機は大量に保有する直流機などが優先され、それも年に数量単位での置き換えだったこともあって、長期に渡って使われることが明白だった。そのため、国鉄から継承した機関車は、できるだけ長く使い続けることができるように更新工事が施された。ED76形も更新工事の対象になり、主要機器や配管・配線類の交換、車体の徹底した修繕が行われ、新車に近い状態になり活躍を続けた。(写真AC)

 

 この更新工事では、直流機と同様に主要な機器をオーバーホールした上で徹底的に整備し、配線や配管をすべて取り替え、車体についても全般検査を施工するときよりも徹底的な補修をして再塗装をするといったものでした。また、専ら貨物列車を牽く運用に充てられるED76形にとって、暖房用の蒸気発生装置は不要な機器であることからこれを撤去し、同等の死重を載せたり乗務員室用の冷房装置を搭載するなどしたのでした。

 保安装置もまた、時代とともに変遷していきました。分割民営化直後はATS-Sを装備していましたが、後に改良型のATS-Snが開発されるとJR九州はATS-SKに更新しました。門司区所属のED76形も貨物列車用のATS-SFを装備し、更に速度照査パターンを発生させるなど保安度を向上させたATS-SKが配備されると、やはりこれに対応したATS-DFを追加させるなど、時代とともに進化したのでした。

 

《次回へつづく》

 

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