旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

この1枚から この後の運命は如何に

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 いつも拙筆のブログをお読みいただき、ありがとうございます。

 新鶴見機関区はJR貨物のレジェンドともいえるEF65にとって、最期の砦となるところです。JR貨物に籍を置くすべてのEF65は、ここをベースに関東から遠く下関、はたまた海を渡って四国までという途方もない範囲を仕事場にしています。

 一度ここから出かけたら、帰ってくるのはいつのことになるやらといえなくもないですが、ある程度の仕業を終えると帰ってくるようです。

 とはいえ、既に車齢が40年を超えるものばかりなので、後継となる桃太郎ことEF210が増備されるごとに、廃車の対象になったEF65は僚機たちに別れを告げ、静かに姿を消していきました。

 そのような中にあって、一部の車両は運用から外され待機状態に置かれるものも出てきます。「休車」と呼ばれるのがそれで、国鉄時代にはこの休車とされる車両も多く出ました。特に分割民営化を控えた頃には、貨物列車の大合理化により列車の本数が大幅に減り、客車列車も衰退の一途を辿っていたので、余剰となる機関車が続出。しかも車齢が若いため、下手に廃車もできずに休車とされて、駅の側線や機能を停止した操車場跡地に留置されている姿が多く見られました。

 民営化後も、この「休車」という状態はあります。旅客会社では「保留車」というようですが、車両に対する扱は同じです。ただ、従来休車には検査期限の延長が目的のものと(第一種)、廃車が前提のもの(第二種)とがありましたが、保留車ではどちらなのかわかりにくくなりました。(というのは、外部からのお話で、社内では分かっているのでそれはそれで問題ではありません)

 

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 写真は新鶴見機関区の南側、検修庫線のそばに留置されている2097号機です。

 更新改造を受け、城陽減圧促進改造も施されているので、更新色+赤プレートと、2010年代多く見られたPFの姿でした。

 しかしよく見ると、この2097号機は他のPFと何かが違いました。物足りないといえばそうなのですが、助士席側の側窓は原形のままです。これは、冷房装置が設置されてないということを示しています。

 民営化後、機関士の執務環境を改善するために、国鉄から継承した機関車には、機会あるごとに冷房装置を取り付けてきたのですが、2097号機は更新改造を受けていながら冷房装置がなかったのです。

 もっとも、その後冷房装置は取り付けられたので、機関士にとって夏場に忌避しなくても済むようになったと思います。 

 話を戻しますが、JR貨物では「休車」については国鉄時代の呼称に戻ったようで、こちらのEF65 2097号機の記名札の隣には、白い紙に赤い文字で「一休」と書かれていました。第一種休車の扱で、2097号機は廃車前提ではなく、検査期限の延長などを目的に使用を一時停止されているということでした。

 この写真を撮影したのは2012年7月。2097号機がこの後全検に入ったのはほぼ1年後翌2013年7月のことでした。検査期限を延ばすために、わざわざ手持ちの車両を休ませるのには理由があり、一つは1年間に機関車に全検を受けさせるための予算の都合です。お金がなければ検査は受けられませんから、一定期間繰り延べて検査費用を捻出しようとする場合もあります。

 二つ目に、検査を受けさせようにも車両所のスケジュールの問題で、期限を延長せざるを得ない場合です。検査を受けることができる車両所は車種ごとに異なり、EF65の場合は大宮でしか施行できません。かつては広島でもできたようですが、合理化の流れによって大宮に集約されたため、検査スケジュールが立て込んでいることが考えられます。

 最後は手持ちの車両を如何に長く使えるようにするか、運用面での理由です。機関車の数には限りがあり、なんでもかんでも酷使してしまっては老朽化を早めてしまいます。特にEF65のような古い機関車は、いずれ新しい機関車に置き換えられるとはいっても、それはすぐのことではありません。
 そこで、いつ入ってくるか分からない新車を当てにするのではなく、EF65のような古い機関車を可能な限り長く使い続けるために、複数の機関車をやり繰りしていく中で休車扱とするのです。こうすると、休車になった機関車は走行しませんので、寿命も少しは延びる可能性があります。こうした機関車を複数もてば、少しですが寿命も延ばせるという考え方です。

 いずれにしても、「休車」なんて札が差してある機関車を見かけると、一瞬ドキッとするものです。かつて、この地で仕事をなくし、解体される日を待つだけのたくさんの車両を見てきたので、「休車」=廃車か!?なんて思いもするのです。

 もっとも、同じ新鶴見での休車でも、廃車前提の「二休」の場合もあるので、油断はできませんが・・・。

 

 今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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