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ロングシートに4ドアの車内。通勤形と呼ばれる電車は、基本的にはこの形態をしているのはご存知の通りです。それはどれだけ技術が発達し、走行に関わる電装品や内装の材質などが変わっても、堅く守られていることだと思います。
内装そのものは時代とともに大きく変化をしていきました。
例えば座席の詰め物。かつては通勤形電車でも、座布団の部分にスプリングを内蔵させ詰め物も多かったので、それなりの座り心地がありました。しかし1990年代以降は、軽量化と製造コストの削減、部品の共通化などなど車輌製造を取り巻く環境が大きく変わったためでしょうか、ウレタン樹脂を重ねただけのお世辞にも座り心地がよいとはいえない(と、筆者は思っています)、簡易な座席に変わってしまいました。
103系の内装は、いつ見ても「国鉄」の匂いがプンプンするものです。しかし、座席となると今日のウレタン樹脂で作った簡易なものとは違い、スプリングを内蔵し詰め物もしっかりと詰まっているしっかりとしたつくりです。
筆者もずいぶんとこの座席にはお世話になりましたが、113系などのクロスシートには及ばないまでも、長時間座っていても比較的疲れにくかったのを覚えています。もっとも、通勤形なので背もたれの低さは如何ともし難いものがありましたが、適度な硬さに調整されたスプリングを内蔵した座布団は、ソファーのそれに通じるものがあったといえるでしょう。
写真は2004年8月、武蔵野線で最後の活躍をする103系のもので、座席のモケットこそは国鉄時代の紺色から貼り替えられていますが、内装のカラースキームは淡緑1号の壁に、グレー系の床敷物は変えられていませんでした。空調もAU75集中冷房装置を装備した車両独特の、屋根中央部に通したダクトと既設の扇風機を組み合わせた構造で、42,000kcal/hの出力がある冷房と扇風機の組み合わせは、当時としてはかなり強力だったと記憶しています。
ただ、ドア付近に立っているときには注意が必要でした。ドアの端に座席を背にして立っていると、リュックを背負っていればそれが座っている人の頭に、下手をするとお尻が座っている人に当たってしまうこともありました。座席と立席を仕切るポールの幅がやたら広く、座席付近に立っている人が掴んでいることができるようにはしていましたが、立席との仕切という役割は考慮されていなかったようです。
同時期の私鉄の車両はこうしたことも考慮されていたので、恐らくは101系以来の設計をそのまま踏襲していたと考えられます。
一長一短はあったものの、長年日本の通勤通学輸送を支えた電車の車内は、一日の業を終えて家路を急ぐ通勤客や、これから学校へ行こうと期待を抱いて乗った学生など、たくさんの人生を運ぶ「小さな舞台」だったといえるでしょう。かくいう筆者も、103系の車内は多くの思い出があるのですから。
今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
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