新琴似-百合が原(1)
列車から降りると、あいの里公園行き下り列車のキハ201系気動車は、エンジンを響かせ屋根の排気筒から微かに黒い煙を噴き上げながら、新琴似駅のホームをあとにしていく。筆者はそれを見送ってからホームを見ると、いままでにない光景に少し驚いた。
それは、ホームに筆者以外に人の姿がないことだ。もちろん、列車から降りた人々はいつまでもホームにいても仕方がないので、すぐに改札に向かうのは分かる。だが、反対側のホームにも人の姿がないのだ。
北海道の冬は厳しく、筆者が訪れたこの日も11月にしては寒く、雪が降ったりやんだりしていた。寒さの厳しいこの地では、列車を待つためだけにホームに立っているという習慣はなく、列車がくる直前まで改札口近くの待合室で過ごすというのが一般的のようだった。やはり、土地が変われば気候も変わり、日頃当たり前に思えていたものも、そこでは全く違うことが「常識」になるというものなのだろう。さすがに、雪が舞い降りる寒さの中でホームに一人カメラを携えている筆者の姿は、地元の人から見ると「奇異」に映ったのだろう、「何をしているのか?」という視線も浴びてしまったが。
やがて上り札幌行きの列車の到着が近づくにつれ、反対側の上りホームには人の姿が増え始めた。最終的には十数名ほどの乗客がホームに姿を現し、キハ40形400番台を先頭にした4両編成の列車に乗っていった。この列車の先頭に立った40形400番台は、本来は札沼線の石狩当別-新十津川間の列車に充当される専用車なのだが、ねぐらのある苗穂運転所への回送を兼ねた運用なのだろう。上り列車が発車したあとは、再び静寂だけがホームに残り、時折カラスの鳴き声だけが聞こえてくる程度だった。
▲気候の厳しい北海道ならではの駅の構造。ホームと改札口を繋ぐ階段やエスカレータは、すべて保温された「室内」に設置されている(上) 列車を利用する人々は、ホームで到着を待つのではなく改札口前の待合室で暖を採りながら待つ。そのために、自動改札機の真上には液晶モニターが設置されていて、列車の到着案内が表示されている。(下)(2011年11月22・23日 新琴似駅 筆者撮影)
新琴似駅は高架駅で、相対式2面2線と札沼線の高架区間の他の駅と同じ構造になっている。ホームは最大で6両編成が余裕で停車できる有効長を備えていて、およそ気動車列車だけが運転されているとは思えない設備だ。そして、改札へと通じる階段やエスカレーターのある部分には、寒い空気が入り込まないように、しっかりとガラス張りの風防設備が造られていて、列車の発車時刻が近づくと乗客は階段ないしエスカレーターで上ってきて、そこで列車の到着を待つ姿が見られた。
(この記事は、筆者が運営したWebサイト「鉄路探訪」に掲載したものを、加除訂正の上再掲したものです。取材日は2011年11月22・23日。記事の内容は取材当時のものです。)
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