《前回からのつづき》
コンテナは私有コンテナと製作され、川崎市が保有していました。JR貨物に登録されている数多くのコンテナの中で、地方自治体が直接保有するのは非常に珍しいものでした。それだけ、川崎市がこの廃棄物を鉄道で輸送することに力を入れていたかがうかがわれるでしょう。そして、コンテナはアイボリークリームの地色に、川崎市の英文頭文字である「K」を図案化したものを水色で大きく描き、市のシンボルマーク(市章ではない)と、生活廃棄物処理を所管する環境局(当時)のキャラクター「キレイクン」が描かれていました。
この廃棄物輸送用のコンテナでもう一つ、他のコンテナと違うことがありました。
JR貨物に籍を置くコンテナには大きく分けて2種類、JR貨物自身が保有するものと、荷主や通運事業者など鉄道利用運送事業者が保有する私有のものがあります。前者はJR貨物が製造・保有して荷主に貸し出す形で運用されています。
形式名は、例えばV19A形であれば、最初の「V」はコンテナ構造の種別を表しています。「V」は通風コンテナ=Ventilatorの頭文字を取っています。次の2桁の数字は内容積を表しているので、この場合は19立方メートルであることを示しています。そして最後、サフィックスのアルファベットは設計順につけられるもので、「A」はもっとも最初に設計されたことを表しているのです。
私有コンテナの場合、基本的にはJR貨物が保有するコンテナに準じています。例えばUV54A形の場合、最初のプリフィックスとなる「U」は私有を表す識別記号になり、次の「V」はコンテナの構造を表しています。そして2桁の数字は内容積を表しているので、この場合は私有の通風コンテナ、内容積54立方メートルであることを表しているのです。しかし、その次、すなわちワフィックスとなるアルファベットはJR貨物保有のものとは異なり、「A」は一般貨物の用途であることを表します。つまり、よほど特殊な構造であったり、運用によって内航海運による航送用でなければたいていは「A」が記されます。そして、形式名のあとにハイフンがつけられ、製造順につけられる固有の番号が付されますが、JR貨物保有のコンテナは純粋に製造順番号であるのに対し、私有コンテナの場合、保有する企業や団体によって番台区分がなされています。

「クリーンかわさき号」の運転開始時に用意された焼却灰専用のUM11A形1000番台と、一般家庭廃棄物専用のUM12A形1000番台、そして粗大ゴミコンテナ専用アダプタとなるUM8A形を用意した。運行は順調に続けられ、コンテナ自体も川崎市だけが使うものであるため、比較的長く使い続けられたといえる。途中、積荷の変更とともに除籍・廃棄される例もみられたが、同時に新たな積荷に対応したコンテナを新造している。写真のUM13A形は一般生活廃棄物用のコンテナであるが、1001-1050が老朽化したことによる取替用としてつくらてたもので、2020年代に入っても運用が続けられていた。(UM13A-1078 新鶴見信号場 2020年8月8日 筆者撮影)
川崎市が保有したUM11A形とUM12A形の場合、他の事業者の保有と特に区別する必要があることから、通常はあまり使われない1000番台の区分が与えられたのです。これは、他の用途にに使われるコンテナと特に分ける必要があったためと考えられます。
川崎市という自治体が直接保有するため、コンテナそのものが市の公有資産であり、他のコンテナと混用して目的外の使用を避けることと、特に厳重に管理して紛失を防ぐためだったといえるでしょう。万一、そのようなことが起きてしまったら、それこそ一大事です。川崎市の公有資産=市民の税金を原資として購入したものであるので、その保証はもちろんのことJR貨物の管理能力や責任を問われる事態にもなりかねません。
また、廃棄物を積載することを目的としたコンテナであるため、これ以外の貨物を誤って積み込んでしまったことで、積荷の汚損といった「輸送上の瑕疵」を防ぐためだったと考えられます。
こうして、生活廃棄物を運ぶという、日本の鉄道史上初めてとなる物資の輸送を始めるにあたり、様々な対策を施した専用のコンテナを用意し、厳重に管理できるようにわざわざ番台区分をするなどし準備を整えたことで、ようやくその実現に漕ぎ着けたのでした。
《次回へつづく》
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