旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

自然災害による鉄道への影響 被害はなぜ大きく、復旧に時間がかかるのか【1】

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 自然の猛威の前に、人間の力は無力であることを思い知らせることは多々あります。もちろん、こうした災害が起きないことが一番なのですが、地球という「生き物」に住んでいる限り逃れることはできません。

 いつ起きるか予測がつかない自信はその代表例でしょう。2011年3月11日には、誰もが予想し得なかった巨大地震が東日本を襲い、多くの犠牲者を出し、そして甚大な被害をもたらしました。

 ある程度予想できる自然災害で、その代表例ともいえる台風や豪雨災害もここ数年大きな被害をもたらしています。2018年7月5日から8日にかけて西日本を襲った平成30年7月豪雨もまた、豪雨災害としては最大級の被害を各地に遺しました。
 これら自然災害は人的な被害に留まらず、電気・水道・ガスといったライフラインを破壊し、道路や鉄道といったインフラをも麻痺させてしまいます。

 平成30年7月豪雨では、鉄道にも大きな被害をもたらしました。
 この記事を執筆している時点でも、未だ復旧の見通しが立たない路線が多数あります。そして、今回の豪雨だけに留まらず、これまでの豪雨や台風といった災害で、多くの鉄道が破壊され、今なお復旧の目処が立たずに長期間の運休を余儀なくされている路線が多数あります。

 一例を挙げれば、2017年7月に九州北部を襲った豪雨災害で、久大本線日田彦山線などが大きな被害を受けました。久大本線は橋梁が流失、日田彦山線では駅に土砂が流入するなどしています。
 久大本線はその後復旧作業が進められましたが、全線を復旧させるために1年の月日を費やしました。当然のことですが、莫大な費用もかけています。
 一方、日田彦山線は不通となった区間が、同線の中でもっとも輸送人員の少ない閑散区間なことから、JR九州は鉄道としての復旧を考慮していないとしています。

 このように自然災害で大きな被害を受けた鉄道は、その復旧に際しては明暗の分かれる事例が多数あり、また、そのために長期間の不通を余儀なくされる事例が多くあり、沿線への影響は大きなものになっているといえるでしょう。

 それにしても、ここまで鉄道が大きな被害を受けるのはなぜでしょうか。
 橋梁流失はその名の通り、川に架けられている鉄道橋が、増水した川に流されてなくなってしまうことです。流失している道路橋もありますが、最近の豪雨災害では鉄道橋の流失が顕著です。
 ほかにも線路沿いの山地から土砂が流入したり、線路を構成する道床が流失したりする被害もあります。

 この稿では、自然災害による鉄道への被害について考察していきます。