《前回からのつづき》
1987年の国鉄分割民営化によって設立された旅客6社は、それぞれ管轄する地域の特性もあって、かつては同じ企業体であったことを忘れるかのように、独自の進歩を遂げていました。
国鉄末期に改造によって製作された、国鉄最初で最後の新性能1M方式電車で旅客車でもあるクモハ123形は、すべて本州三社に継承されました。
その中で、飯田線と並んで旧形国電最後の王国とも目された身延線には、郵便荷物輸送の廃止によって余剰車となってしまったクモユニ147形を旅客車化改造し、クモハ123形40番台をがJR東海に継承されました。
配置当初は身延線富士宮以北の閑散区間で、1両編成で運用することを想定していたため、種車となったクモユニ147形と同じ数の5両が製作され、静岡運転所に配置となって運用されました。
ところが、民営化後に国鉄の見積もりが甘かったことが露呈しました。閑散区間では基本的には1両編成でも事足りると考えたのですが、時には利用客が多く2両編成を組んで運用に就かせざるを得ない時があったのです。また、全般検査などの大規模検査で工場へ入場させてしまうと、運用から外れた分をカバーするための車両も足りなくなるといった事態にもなりました。
こうしたときに、不足した車両を補うために115系を一時的に入れて代走させる方法も考えられますが、115系は短くても3両編成を組まなければならないため、これでは輸送力が過剰になってしまいます。
同じ頃、JR東海が国鉄から継承した事業用車のうち、牽引車であるクモヤ145形が在籍していました。牽引車は車両基地内で電車を入換作業で機関車と同じように牽いたり押し込んだりするほか、検査期限が近づいてきた車両に連結させ、配置区所と工場との間を1両単位で挟み込み、制御車や制御電動車の役割をしながら回送列車として運用していました。
この国鉄時代から続いていた方法では、牽引車を保有しなければならないため、その分の運用や維持管理にコストがかかってしまいます。コスト管理に敏感な経営姿勢になったJR東海は、この方法を改めることにしました。

国鉄時代は大規模検査などで工場へ入場させる時に、車両単位での施行をしていた。そのため、中には編成から必用な車両だけを抜き取り、時には中間車だけが工場へ送り込むことがあった。それらの車両を回送する場合、編成の最前部と最後尾には牽引車と呼ばれる事業用の電車を必用とした。クモヤ145形は首都圏のATC区間以外で運用することができる牽引車として製作されたが、クモヤ143形が純粋な新製車であるのに対し、こちらは廃車になった101系を改造すること製作されている。しかし、民営化後は旅客会社によって車両の運用方針が変化していったため、JR東海が継承した車両は早々に用途を失っていった。しかし、そのまま廃車・解体されることはなく、身延線用の123系に改造し活用することで運命を長らえた。(出典:写真AC)
従来の牽引車を使った1両単位で実施する検査体制を止め、編成単位で管理することにより、全般検査など大規模検査で工場に入場させる時には、編成まるごと送り込むことにしたのです。この方法は既に大手私鉄などでも採られている方法で、JR東海もこれに倣ったと考えられます。
そして、国鉄から継承したクモヤ145形は、分割民営化からまだ日が経っていない1988年に早くも600番台の2両を旅客車化する改造種車にすることができたのです。
こうしてクモハ123形には、クモヤ145形を種車に改造した600番台が登場し、静岡運転所に配置されました。
600番台も他の区分と同じように、種車の機器類を再利用し、車体も可能な限り活用する方法を採ることで、製作にかかるコストの軽減が試みられました。そのため、種車となったクモヤ145形は101系の余剰車を改造したため、多くの機器は101系から引き継いだ年季の入ったものでした。
主電動機は出力100kWのMT46形で、これは101系が搭載していたものの再利用品でした。この主電動機を使いながら1M方式電車にするため、クモユニ147形と同じく4個の主電動機は永久直列接続にすることで、165系などと併結しても高速で走行できる性能を確保しましたが、改造後もこの回路構成はそのままでした。
その一方で、ブレーキ装置も種車のものをそのまま活用しました。そのため、発電ブレーキがない、電磁直通ブレーキのみを装備していました。これは、牽引車時代は発電ブレーキや抑速ブレーキを併結相手のものを制御して使うこととされたためでした。改造に伴う工数を可能な限り減らし、これにかかるコストを減らすため、同じ身延線で運用されていた40番台のように、発電ブレーキ・抑速ブレーキを装備させずそのままになってしまったのです。
車体も他の区分と同様に、種車のものを活用する方法が採られました。
《次回へつづく》
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