旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

国鉄の置き土産〜新会社へ遺産として遺した最後の国鉄形〜 極限までコストを抑えつつローカル輸送に特化した改造近郊形電車 413系・717系電車【4】

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《前回からのつづき》

 北陸本線が直流区間と交流区間を通して運行するため、交直流者として413系を改造によって製作したのに対し、東北本線と九州では事情が異なりました。

 東北本線は黒磯以南が直流電化で、これより北は終着の青森まで交流電化されていました。また、常磐線も藤代以北が交流電化でしたが、直流区間と通しで列車を運行するのは、東北本線は福島地域を中心とし、常磐線は水戸を中心とした列車に限られました。他方、さらに北に上った仙台地域から直流区間に乗り入れる普通列車の設定はないため、北陸地区のような交直流車は必要ありませんでした。

 そして、九州は既にこのブログで何度も話題にしてきたように、門司駅構内の関門トンネル坑口付近にあるデッドセクションを境にすべて交流電化されているので、九州島内で完結する列車に交直流車は必要がありませんでした。

 こうした地域の事情を考慮して、413系と同様の方法で急行形電車を改造し、近郊形へと生まれ変わらせたのが717系でした。

 

413系の車内。車端部はこのようにロングシートのみが配置され、ラッシュ時の乗降がスウーズになることと、混雑時における収容力を確保するように配慮されたものになっていた。床には主電動機の点検に使うための点検蓋があり、直流直巻電動機を使う車両には必ず設置されていた。現代の電車は、ほとんどが交流電動機を使うことが多くなったため、こうした点検蓋もなくなった。(クモハ413-6〔金サワ〕 2013年7月29日 筆者撮影)

 

 基本的な改造内容は413系と同じで、種車となる急行形電車の車体を片側2扉、1300mm両開き扉を備えた車体を新製して載せ替え、台枠はもちろん、台車や主電動機、主制御器などの電装品、車内の座席から網棚に至るまで、使えるものはすべて種車や廃車車両からの流用でまかない、改造にかかるコストを極限まで軽減させて製作されました。

 717系は413系から交直切換器など直流関係の機器を省略して、交流専用として落成しましたが、運用を想定しいた仙台地区と九州では、気象条件や輸送実態が異なるため、それに合わせた仕様で製作されました。

 仙台地区向けに製作された0番台と100番台は、3両編成を組むことを前提としたため、Tc(クハ717形)、M’(モハ716形)、Mc(クモハ717形)の3形式とされました。加えて仙台は冬季に雪が多く降るため、耐寒耐雪仕様とされ主電動機を冷却するための外気の取入口は、降雪時に雪が入りこむことを防ぐための雪切り室も設置され、電動車の車端部には取入口となるグリルが設けられました。

 また0番台は451系から、100番台は453系を種者としていたため、主抵抗器と変換器箱などの仕様の違いがあるため区分されていましたが、それ以外のものはほぼ共通でした。

 車体の塗装も従来の交直流近郊型電車の標準色である赤13号の地色に、前頭部にクリーム色4号の帯を巻いたものではなく、クリーム10号の地色に緑14号の帯を入れた仙台地区

 1986年に郡山工場(現在のJR東日本郡山総合車両センター)と土崎工場(現在の秋田総合車両センター)、そして小倉工場(現在のJR九州小倉総合車両センター)で改造され、落成後は仙台電車区(現在の仙台車両センター)に配置されました。

 翌年に国鉄が分割民営化されると、717系0番台と100番台は仙台区配置のまま、全車がJR東日本に継承されました。そして、仙台地区向けとされたものの、抑速ブレーキを装備していないことから東北本線での運用は範囲が限られ、白石ー利府間の普通列車の運用に充てられるとともに、常磐線いわきー岩沼間といった勾配の少ない線区を中心に使われたのでした。

 

東北本線常磐線の仙台地区で運用されていた717系。717系は413系から直流関係の機器を省略したもので、製造コストをさらに抑えた格好になったと考えられる。車体こそ417系と同等であるが、屋根上の冷房装置は種車由来のAU13形が6個並んでいるのが分かる。(©PekePON, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons)

 

 2001年になると技術の進歩によって新たに開発された保安装置を搭載します。ATS-Ps車上装置を装備して安全性を更に向上させましたが、ATS-Pの装備は見送られたため常磐線はいわき以北に限定されました。もっとも、717系0番台・100番台はいわき以北の運用だったため、大きな変化はなかったと考えられるでしょう。

 しかし、JR西日本に継承された413系や、JR九州に継承された717系200番台とは違って、JR東日本に在籍した717系0番台・100番台の終焉は早く訪れました。

 2007年に新たな交流用一般形電車として、E721系が登場しました。軽量ステンレス車体をもち、軽量ボルスタレス台車を装着、制御方式はVVVFインバーター制御を採用したこの新たな電車は、国鉄時代につくられた抵抗制御のものと比べれば、はるかに経済的な車両です。仙台空港に乗り入れる仙台空港線の開業に備えるとともに、国鉄から継承した455系や457系、717系、417系といった普通鋼車体をもち抵抗制御を使ったこれらの旧式化した車両を置き換えることも目的に新製されたE721系は、転入してきた415系とともに717系の運用に順次代わっていったのです。

 2006年になると、検査期限が切れる編成から廃車が始まりました。1987年3月31日、すなわち国鉄最後の日に落成したT-103編成(クハ717−8+モハ716−103+クモハ717−103)が2006年10月に運用離脱・廃車になったのを皮切りに、2008年8月までに全車が廃車、改造から20年余りで区分消滅しました。

 JR東日本はその資金力をバックに、国鉄から大量に継承した車両を、最新技術をふんだんに使った新型車両へ置き換えてきました。それも、国鉄時代のようにじわじわと替えていくのではなく、短期間で大量の車両を新製していくことで、量産効果による製造コストを軽減させた手法がとられますが、これも資金力がなければできないことです。しかし、これは特に首都圏のドル箱路線でのことであって、それ以外は国鉄形車両が使われ続けてきました。

 とはいえ、2000年代半ばごろからは首都圏近郊だけでなく、地方においてもこうした車両の置き換えが始まり、次々と新型車両が国鉄形に取って代わり始めたのでした。

 仙台地区で運用された717系0番台・100番台は、国鉄形としては数少ない交流専用車でした。直流区間との往来を考慮しないという「割り切った」運用を前提としたことで、交直切換器などの直流関係の電装品を省略し、改造コストや検修の手間を省き、補修用の部品も最小限に抑えるなど、運用コストにも配慮した車両だったといえます。後継のE721系はもちろん、719系701系といった分割民営化後に登場した交流専用車の先鞭をつけた存在だったといえます。

 

《次回へつづく》

 

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