旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

鉄路探訪記:湘南モノレール江の島線【2】

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《前回からのつづき》

 

この記事は、筆者がかつて運営していたWebサイト「鉄路探訪」に掲載していた記事を再編集したものです。記事内の情報はすべて取材および発表当時のもので古いものもあります。また、文章も現在とは異なり体言止めで記述しています。写真も当時のものを使っておりますので、ご了承の上、お楽しみください。

 大船ー片瀬間の鉄道予定地は半ば塩漬けの状態になっていたものの、深沢村の山林を高級別荘地としての開発が計画されていた。当然、ここへ至ることのできる交通機関必用となったが、鉄道は既に頓挫したにも等しい状態であり、この鉄道用地を転用して自動車専用道路を建設したのだった。これが、第二次世界大戦後に京急が再開させ、この道路沿いには戦前からの分譲地に加えて、深沢や西鎌倉、そして片瀬山など大規模な宅地開発が進められるとともに、三菱電機鎌倉製作所や国鉄大船工場といった大規模工場が進出してきたことで、再び鉄道建設の機運が起きたといえる。

 しかし、この自動車専用道路は既に多くの自動車が行き交うようになっていたことや、沿道には多くの人家や商店、そして工場もあるため普通鉄道を建設するための土地がなく、加えて大船から片瀬に向かうにはいくつかの山を越えなければならず、その勾配は最大で88パーミルにも及び、最小の曲線は25mと非常に険しいことから厳しい条件だった。そのため、普通鉄道による建設からモノレール建設へと変化していったと考えられるが、それでも最急勾配は74パーミルになり、最小半径100mという急カーブも設置せざる得なかったが、かえってそのことが跨座式に対する懸垂式の利点を大々的にアピールできる「モデル」としては十二分なものだと考えられたのであろう。

モノレール大船駅はJR大船駅と階段をほぼ使うことなく往き来できる。これは、モノレールが地上に設置されないためであり、JR側の駅が橋上に設置されていることが前提でもある。筆者もかつてここを毎日のように通勤で利用していたが、階段の登り下りがなかったのは帰宅の時には疲れた体にとても助かったと記憶している。(湘南モノレール大船駅 2011年8月10日 筆者撮影)

 

 湘南モノレール江の島線大船駅は、当然のことながら高架駅である。JR大船駅に隣接した駅ビル「ルミネウィング」とつながっていて、乗り換えも非常にスムースにできる。改札も自動化されていてるが、ICカード乗車券には未対応なのできっぷ売り場で乗車券を買わないとならない。今回は、JRの企画乗車券「江の島・鎌倉フリーきっぷ」を利用した。

 頭端式2面1線のホームだが、通常の鉄道とは違ってプラットホームの下までの高さはあまりなく、すぐにでも下りることができそうなほどだ。列車が入る位置には、水色のすのこのようなものが敷き並べられている。もちろん、降りようものなら駅員からお叱りを受けるのは間違いないので、決して降りないように。

 改札口付近で様子を観察していると、列車が駅へと侵入してきた。5000系と呼ばれる、湘南モノレールの新鋭でVVVFインバーター制御を採用した車両だ。基本的なスタイルは従来の500形電車と大きくは変わらないものの、正面のブラックフェイスや両開きドアの採用など、より近代的なスタイルになっている。車内に入ると既にほとんどの座席は埋まっていた。ある程度の需要はあるようだ。

 そして、一つ気付いたのが何となく「薄暗い」という印象。確かに、節電が叫ばれる中で車内の照明を切っていることもあるだろうが、それにしても薄暗い。よくよく車内を観察してみると、窓は最近の流行でもある熱線吸収ガラスを使っているために、光があまり入ってこないようだ。もっとも、このガラスのおかげで冷房効率が上がるのだから、致し方ないことなのだろう。

 

発車までの一時を過ごす、湘南モノレール5000系電車。ここにもVVVFインバータ制御の波が押し寄せてきており、筆者が毎日のように乗った500形は徐々に姿を消しつつあった。車体の基本的な構造は大きく変わらず、下方に絞った逆台形の形状や大型の前面窓などのスタイルは受け継いでいる一方で、時代に合わせたスタイリッシュなイメージももたせていた。制御機器は最新のVVVFインバータ制御にすることで、効率性を高めた運行を可能にした。(5000系第2編成 湘南モノレール大船 2011年8月10日 筆者撮影)

 

 車掌が発車合図の笛を鳴らすと、ドアーが閉まってすぐに発車。最大80‰の急勾配をも登る性能を持つだけに加速も力強い。ホームを飛び出すと、眼下にはバスターミナル、右手には真っ白な大船観音が見えてくる。そして、左に右にと連続するカーブを抜け、狭隘な道路の上を通り抜けていくと、やがて横須賀線をオーバーパスする。モノレールならではの眺めに関心していいると、僅かに雑草の生い茂った一本の線路を見ることができた。

 この線路、かつての鎌倉総合車両センター深沢地区・・・いや、大船工場と呼んだ方が分かりやすいだろう・・・へ続く線路だ。既に廃止となってから5年が経っているが、いまだ撤去されずに残されている。ある程度のメンテナンスがされているのか、廃線にしてはきれいな方だ。

 そんな廃線跡を見ると、列車は富士見町駅に着いた。

 

《次回へつづく》

 

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