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国鉄最大の貨車「ソ300形」徹底解剖|154トンの巨体と自走能力に秘められた技術と歴史【3】

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3:ソ300形とは? 35トン吊り水平ブームと16軸台車を備えた国鉄最強の橋梁工事用操重車

《前回からのつづき》

 ソ300形は軌道内で作業をすることが前提の、橋梁建築用の操重車であるので、建築用クレーンのようなブームを引き起こす事はできません。そのようなことをすれば、電化区間なら間違いなく電車線といった電力設備を破損させるか、あるいは事前に仮撤去をしておくなどの手間がかかるのです。

ソ300形のブーム先端部分。様々な機器が一挙に集まっている部分で、非常に物々しい雰囲気がある。橋桁吊り下げ作業をする時に、車両が転倒することを防止する「スタッカー」は、道路用のクレーン車とは異なり砕石に「突き刺す」ことで安定性を得るため、その先端はフォーク状になっている。その上部には夜間における作業を考慮した作業灯や、貨車でありながら後部標識灯を備えているなど特異な装備をもっていた。(ソ300形 碓氷峠鉄道文化むら 2025年5月4日 筆者撮影)

 

 そのため、ソ300形のブームはほぼ平行の状態で、重量物を釣り上げることができる性能が求められるとともに、ブームは非常に太く頑強な構造とされました。また、車体全体に渡って強度を増すための梁が設けられ、非常に無骨で独特の外観になていました。これによって、ブームを最大に伸ばしたときでも扱える最大荷重が35トンに及び、橋桁の設置に威力を発揮しました。

 これだけの重量のある構造物を載せているため、ソ300形の自重は最大で154トンという途方もない重さになり、国鉄の貨車の中では最大の重さでした。そして、これだけの重さを支えるための台車も特殊なものとなり、板台枠式の4軸ボギー台車を前後に2基ずつ、合計で4基装着した4軸復列式としました。

 このように文章で書くとイメージがつきにくく思われるかもしれませんが、要は車輪を4軸としたボギー台車を前部に2基、後部に2基、全部で8基の台車を装着させたということです。そして車輪は全部で16軸にもなり、これに揺れなどの衝撃を吸収させるために二軸車に類似した板ばねを設置しているので、いわば大物車にも匹敵する超重量物に対応した構造になっていました。

154トンという、鉄道車両としては空前の重量を支える台車は、板台車枠に4本の輪軸をもった4軸台車を装着している。この特殊な台車を4基、合計で16本の輪軸を装着することで、軸重を規定内に収める工夫がなされている。ソ300形は、前位側と後位側で搭載する機器が大きく異なるため、重量配分も違ってくる。そのため、ディーゼルエンジンなどを備えた前位側は12トン、橋桁を吊り下げる後位側は安定性を担保するため15トンに軸重を設定していた。これだけの物々しい台車を装着しているのは、他には大物車ぐらい↓思い当たらない。(ソ300 碓氷峠鉄道文化むら 2025年5月4日 筆者撮影)

 

 このような数多くの輪軸を備えた特殊な台車が使われたことにより、154トンという超重量級の車体を支えるとともに、輪軸にかかる重量となる軸重を12・15トンに抑えることを可能にしています。

 この軸重が2つになっているのは、重量物となる橋桁を釣り上げる操重車であることに由来しています。通常、鉄道車両の軸重配分は、特殊な例を除いて均等になるように設計されます、しかしソ300形は数少ないとk種な例の一つで、前位側にはクレーン駆動及び自走用のエンジンと操縦室があるため、この部分にある2つの台車は軸重が12トンですが、クレーン部分の後位側の台車には15トンの軸重がかかるようになっていました。これは、クレーン側は重量物を吊り下げるため大きな荷重がかかるため、この部分の車軸を太いものにしているためでした。

ソ300形は橋桁設置用の操重車であるため、ブームを上方に稼働させる昨日を備えていない。橋桁を吊り下げて作業をするときには、ブームを水平方向に伸ばして使うことになる。このブームの伸縮をするために車体の構体には、移動用の歯車とラックが設置されている。(ソ300 碓氷峠鉄道文化むら 2025年5月4日 筆者撮影)

 

 ソ300形は自重も去ることながら、全長も非常に長く27,500mmと非常に長いものでした。これは、学校に設置されている多くのプールや、一般的なレール(軌条)の基本的な長さとされる定尺レールの25mよりも長いものでした。

 ソ300形はこれ以外にも特殊な装備をもっていました。

 この車両は橋桁を吊り下げて工事現場において設置をする役割をするため、クレーンブームを油圧で動かすための動力源となるエンジンを搭載していました。これは建設機械のクレーン車にもあるので当たり前のものでしたが、これとは別に出力300PSの走行用のエンジンを搭載し、無荷重のときには平坦な線路では25km/h、吊り下げ時には20km/hで自走できたのです。そして、自走できるために自前でもブレーキを使うことができ、そのための電磁直通ブレーキも装備していました。

ソ300形には他の操重車と同様に、ブームを操作するための操縦室が備えられているが、脱線復旧用のソ80形などは道路用のクレーン車と同様に、比較的大きな機器室と操縦室を備え、そこへの出入りは比較的容易であったのに対し、ソ300形は重量物である橋桁を水平方向に伸ばしたブームで吊り下げるため、強固に作られた大きな構体をもっている。そのため、操縦室はこの構体の中に挟み込まれるように小さなものが設置され、ここへの出入りは梯子を使って構体に登り、そこから潜り込むようにしていた。ソ300形を操縦する操機区の職員の苦労が偲ばれる。(ソ300 碓氷峠鉄道文化むら 2025年5月4日 筆者撮影)

 

 ソ300形にとって自走できるということには大きな意味があり、一般の建設工事の現場とは違い、軌道上で作業をするため橋桁を釣り上げた後、そのまま線路の上をゆっくりと走り、実際の作業現場まで運ぶことを可能にしていたのです。

 このことにより、橋梁を設置する工事では、より効率的な作業を実現することができました。また、前形式であるソ200形よりも取り扱うことのできる荷重が大幅に増えたことにより、より大きくそして頑丈な橋桁を設置することを可能にし、橋梁全体の強度を上げることを実現しました。

 

《次回へつづく》

 

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