旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

国鉄の置き土産:キハ38形が繋いだ非電化路線のバトン【5】

広告

5.キハ35系が吊り戸を採用した理由──3扉化と低いホームが生んだ台枠強度の問題とは

この記事では、1961年に登場した通勤形気動車・キハ35系が抱えていた構造的課題について解説します。ローカル線の低いホーム、3か所の乗降扉、そして台枠強度の問題──これらの条件が重なった結果、キハ35系は国鉄の気動車としては珍しい“吊り戸”を採用することになりました。

 

《前回からのつづき》

blog.railroad-traveler.info

■ キハ35系は「通勤形気動車」として誕生した

 1961年に通勤形気動車として登場したキハ35系は、客室にロングシートを備え、乗降用扉を3か所設置した通勤形気動車でした。気動車を運用する路線のホームは、大都市圏の電車用ホームとは異なり高さが低いため、乗客が乗り降りしやすいように車両にステップを設けていました。

■ ステップ設置が「台枠強度の問題」を生んだ

 そのため、鉄道車両でもっとも重要な基礎となる台枠には、ステップの部分を切り欠きにするので、どうしても強度が落ちてしまいます。キハ20系のように扉が2か所であれば最低限の強度を保つことができても、キハ35系のように3か所になると台枠の強度が低くなってしまい、走行中に車両全体に歪みを生じさせて破損や事故につながってしまいます。単に扉の部分だけを切り欠くのであれば問題になりませんが、扉が開いた時に収納する戸袋の部分を含めると、切り欠き部は相当に大きくなるので、もはや台枠としての役割を果たせなくなってしまいます。

 

キハ35系は通勤形として設計されているため、他の気動車と比べて乗降用扉の数を多く設置する必要があった。しかし、気動車を運行する地方ローカル線では、駅のホームのほとんどが「電車対応」のものではなく「客車・汽車対応」の低い構造をしていた。そのため、車両側に乗降用ステップを設ける必要があったが、キハ20系のような一般形などは乗降用ドアが2か所であり、ステップ部分の台枠切り欠きも少ないため問題にはならかった。しかし、キハ35系は乗降用ドアが3か所になってしまい。従来のドアを収納する戸袋を設置してしまうと、台枠のほとんどが切り欠いた状態になってしまい、強度を保てなくなってしまった。そこで、写真のようにドア開口部のステップ部だけ切り欠き、ドアを吊り戸にすることで切り欠きを最小限に抑えて強度を保っていた。(キハ30 98〔千マリ〕 木更津駅 2012年1月5日 筆者撮影)

 

 そこで、キハ35系は国鉄の車両としては珍しい、乗降用扉を吊り戸にすることで戸袋をなくし、台枠の切り欠き部分は乗降用扉の開口部だけにして台枠の強度を保つ構造にしたのでした。

 主機関は国鉄形気動車でお馴染みのDMH17系を1基搭載し、台車も枕ばねを金属コイルばね、軸箱部分はウィングばねとしたペデスタル式のDT22C/TR51B形を装着した、1960年代に設計製造された国鉄形気動車の標準ともいえる構成でした。

 

《次回へつづく》

blog.railroad-traveler.info

 

あわせてお読みいただきたい

blog.railroad-traveler.info

blog.railroad-traveler.info

blog.railroad-traveler.info

blog.railroad-traveler.info