旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

第4種踏切について元鉄道マンが思うこと【3】~安全な鉄道踏切の実現に向けて~

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《前回からのつづき》

 

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 踏切内で障害物があったり、事故が起きたりして列車の通過に支障がある場合、通常の踏切であれば、障害物検知装置のセンサーが作動するか、非常用ボタンを押下することで、列車の緊急停止を知らせる特殊発光信号機を設置します。

 これも、できれば設置することが望ましいものですが、そもそも第4種踏切はこのような信号保安設備がない簡易な施設であるため、省略することも考えられます。もし設置するのであれば、回転形と呼ばれるⅠ形ではなく、LEDを敷き詰めた棒状のⅡ形(信号通信区や電気区では「トウモロコシ」と呼んでいた)を、あるいはさらに簡易なものを使い、障害検知機のセンサーも民生品を活用することで安価に設置することが可能でしょう。

 このように、簡易な遮断機だけでなく、音や光によって列車が接近してくることを知らせる装置により、踏切内で起こる事故を最大限に防ぐことは重要だといえます。同時に、機器の導入設置や維持にかかるコストをおさえることも、特に地方の鉄道において求められることは言うまでもないことから、新たな簡易で安価、そして動作が確実で効果を発揮する機器の開発は急務だといえます。

 近年、鉄道の信号保安設備にかかわる技術も目覚ましい発展を遂げています。軌道回路に依存していたものから、無線やイーサネットを活用した次世代の保安設備の開発が進められていますが、こうした最新技術をふんだんに使った設備は、その開発費から機器そのものの費用、従来のものから最新設備への交換にかかわる工事費用など、非常に高価になるとは用意に想像できるものです。

 

写真のような第4種踏切は、今なお多くの地域に残っている。踏切の床板も古枕木を軌条の間に敷いただけの簡素な作りで、踏切があることを示す標識しかない。踏切における人身事故は未だ撲滅できていない、しかも幼い子どもが犠牲になっている現状を考えると、このような簡易な施設は早期に淘汰するべきであるといえる。莫大な費用がかかる第1種踏切への更新が難しいのであれば、何らかの手を打つことも考える時期に来ているのではないだろうか(出典:写真AC)

 

 しかしながら、そうした最新技術の保安設備は、財政的にも余裕のあるJRや、大手鉄道事業者であれば導入が可能ですが、地方の鉄道事業者にとってはハードルが高いものといえるでしょう。

 そうした鉄道事業者が導入しやすい、コストを抑えた簡易なシステムの開発はなされていないのが現状です。それ故、1000万円以上もの導入費用がかかる第1種踏切への置き換えを躊躇し、今なお多くの第4種踏切が残っている結果、冒頭のような悲惨な事故が後を立たないのが現実です。

 冒頭にお話した踏切事故では、運輸安全委員会が調査に乗り出したという報道もありました。それだけ、今回の事故が社会に与えた影響は大きく、今後の調査が注目されることは間違いないでしょう。また、自治体もこうした第4種踏切の淘汰に動き出し始め、補助金を出してでも第1種踏切への更新をしようとする動きもあるほどです。

 最新技術を使った開発も大いに結構なことですが、特に地方の鉄道が抱える課題を改善させるための技術開発も進めなくてはならないと、筆者は考えます。鉄道用の機器はとにかく特殊なものが多く、そして一か所あたりの単価が高いという弱点を抱えているので、既に広く出回っている民生品を活用しながら、費用対効果が高く、確実な機器やシステムの開発を期待したいところです。

 

 末筆になりましたが、冒頭でもお話した踏切事故で亡くなったお子さんの御冥福をお祈りするとともに、大切で最愛の我が子を亡くされたご家族の皆様に心からのお悔やみを申し上げます。また、踏切内で不慮の事故で尊い命を失った方々への御冥福をお祈り申し上げます。

 一日も早く、そして1件でもこうした事故が無くなることが実現することを、鉄道の信号保安設備に携わった者として切に願うところです。

 

 今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

〈了〉

 

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