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つい最近、常磐線で運用されてきていたJR東日本のE501系がJR九州へ譲渡されたという報道がありました。E501系はその名が示す通り交直流両用の通勤形電車で、国鉄時代にはなかったカテゴリーの電車でした。
車体は国鉄分割民営化後、JR東日本が発足して初めて開発された209系の設計をそのまま流用した形で、205系や211系とは異なる構造の軽量ステンレス車体となり、側窓は従来の電車が開閉可能なサッシ窓か一段下降式窓であったのに対し、209系と同様に大型ガラス1枚窓として製造コストの軽減を図った一方、開閉が不可能なものでした。
電装品を直流と交流の両方に対応させたものを装備していました。
主制御器にはJRとしては初の輸入品となった、ドイツ・シーメンス社製のCI3形を装備しました。CI3形はGTOサイリスタ素子を使ったVVVFインバータ制御式のものですが、もっとも大きな特徴として発車時や停車時に発生する励磁音は、音階を奏でるようにしていたことから「ドレミファインバータ」とも呼ばれ親しまれました。
E501系は交直両用電車であるため、交流20000V電化区間を走行するときに必要な主変圧器も装備していました。また、集電装置は高圧電流に対して確実に絶縁できる交流対応のものとしつつも、小型軽量化された209系用のPS28形を基本にしたPS29形を装着し、高速度遮断器などといった特別高圧機器をその周辺に設置していました。

国鉄の分割民営化は、それまで硬直化していた車両の開発にも大きな影響を及ぼした。次世代通勤形電車として901系を試作、さらにこれを発展させた209系は、鉄道車両の常識を覆したコンセプトの元で設計された。そして、電装品を交直流に対応させて常磐線の輸送力を強化するため、初の交直流通勤形電車としてE501系が登場した。主制御器はドイツ・シーメンス社製のものを導入、励磁音に音階をつけたことで音を奏でることから「ドレミファインバータ」とも呼ばれ、民営化直後から常磐線の中距離輸送を支えた。E531系の増備や情勢の変化などによって、一部が運用を離れている。(出典:写真AC)
このように、片側4ドアをもち1両あたりの乗車定員を多くすることを重視する通勤形電車としてつくられたE501系は、電装品やそれらの機器構成はかなり特殊で、端的にいえば209系に交流機関に対応する電装品を追加した車両であったともいえるでしょう。そして、E501系は10両編成と5両編成、それぞれ4本、合計でたったの60両しかつくられませんでした。
その理由として、常磐線の特殊性にあるといえます。
首都圏の通勤路線と呼ばれる路線は、ほぼすべてが直流1500Vで電化されています。しかしながら、常磐線は沿線にある気象庁の地磁気観測所の観測業務に、直流1500Vで電化された鉄道があると、レールに流される帰線電流が大地に漏洩するため影響を受けてしまいます。そのため、地磁気観測所から30km以内はこの影響を与えないようにしなければならないため、取手以北は交流電化が選択されました。
一方、常磐線は常磐快速線と常磐緩行線は、国鉄時代から直流通勤形電車が運用に充てられていました。都心部に直接乗り入れ、列車の運転本数も多く設定されているので、乗客にとっては利用しやすいものの、それも取手までに限られていました。それよりも北は交流電化されているため、103系などのような直流電車は乗り入れることができないため、代わりに415系などの交直両用の電車が充てられていました。
415系などで運転される列車は常磐線中距離電車(通称:中電)とされ、停車駅は快速線と同じであるものの、列車の運転本数は緩行線や快速線と比べて少なく、加えて近郊型電車であるがゆえに、片側3ドアではラッシュなどの混雑時は乗降に時間がかかるなどの難がありました。

JR東日本の通勤輸送を支えるべく、「価格半分」「重量半分」そして「寿命半分」を目標として209系が設計された。重量を従来の半分に抑えることで、電力使用量や軌道片の負担を軽減し、運用コストを削減するねらいがあった。最後の「寿命半分」は少し誤解を受けて取られてしまい、「使い捨て電車」「走ルンです」とも揶揄されてしまった。1993年から2000年にかけて製造され、古いもので既に33年、新しくても26年の年月が経っていても、房総各線では今なお使われ続けていることから「使い捨て」ではなかった。E501系は209系の設計を流用し、制底ストと運用コストを抑えながら、高価な交直流電車としてつくられたと言える。(クハ209-2107〔千マリ〕 蘇我駅 2010年11月14日 筆者撮影)
こうしたことを背景に、JR東日本は新たに通勤形電車で交流区間にも直接乗り入れることができ、ラッシュ時などの混雑時にも多くの乗客を乗せられるとおもに、片側4ドアの通勤形電車の最大の強みである乗降時間の短縮によるダイヤへの悪影響を抑える切り札として、異色の交直両用通勤形電車としてE501系を投入したのでした。
このように、列車としては電化方式の違いに関係なく、両区間をまたがって運転される列車は国鉄時代から存在していたものの、それはある意味で特殊な運用だったといえるでしょう。常磐線をはじめ、北陸本線や湖西線などがそれにあたり、これらの路線では交直両用の車両が運用されていました。
そして、本州の最西端である下関と、九州の玄関口となる門司の間もまた、直流電化と交流電化と電化方式が異なるため、同様に交直両用の近郊形電車などによって運転されていたのです。
《次回へつづく》
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