旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

鉄道

役割は地味だけど「花形」の存在だった電源車たち【3】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info ■パンタグラフを装備した電源車 カニ22 国鉄客車の電源車と言えば、ディーゼルエンジン+発電機を組み合わせた発電セットを搭載した車両というのが定番でした。しかし、ディーゼルエンジンを稼働させるた…

役割は地味だけど「花形」の存在だった電源車たち【2】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info 1958年に登場した20系客車は、それまでの国鉄客車の常識を大きく覆すものでした。 もっとも大きな違いは、従来は客車1両単位で運用することを前提とした設計思想であったのに対し、20系は編成単位で運用す…

役割は地味だけど「花形」の存在だった電源車たち【1】

いつも拙筆のブログをお読みいただき、ありがとうございます。 「電源車」という車両をご存じの方は、おそらく筆者と同世代に近い方や諸先輩方、そして熱心に研究されておられる方かと思います。筆者がこの「電源車」という言葉を初めて耳にしたのでは、鉄道…

貨物列車の最後尾を飾った有蓋緩急車たち【6】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info ■ブルトレの最後尾も飾った荷貨物兼用高速貨車 ワサフ8000(その2) ワサフ8000はワキ8000を基本に設計されているため、貨物室は軽量なアルミ合金のプレス鋼板の総開き構造とされましたが、車掌室を設置…

貨物列車の最後尾を飾った有蓋緩急車たち【5】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info ■ブルトレの最後尾も飾った荷貨物兼用高速貨車 ワサフ8000(その1) 1960年代に入ると自動車の普及が急速に進み、国内の物流の主役ともいえた鉄道貨物も、荷主にとって使い勝手がよいトラックにシェアを…

貨物列車の最後尾を飾った有蓋緩急車たち【4】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info ■再び積載量を増したワフ29000 戦後になって製造されたワフ22000は、車掌室重視の設計だったため、積載荷重は2tに抑えられ、貨物の積載量は小さいものになりました。乗務する車掌にとって、ワフ22000はあ…

貨物列車の最後尾を飾った有蓋緩急車たち【3】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info ■戦時設計、代用資材の木製を使ったワフ28000 1944年になると戦局の悪化と資材の不足は、日本の経済に大打撃を与えていました。人々の生活は困窮し、食べるのも配給制に頼らざるをえない状態でした。そし…

貨物列車の最後尾を飾った有蓋緩急車たち【2】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info 国鉄時代、ヤード継走輸送が全盛だった頃の貨物列車は、大きく分けて二つありました。 一つは、貨物取扱駅と方面別に仕分けをする操車場の間を行き来する列車で、これを「解結貨物列車」と呼ばれていまし…

貨物列車の最後尾を飾った有蓋緩急車たち【1】

いつも拙筆のブログをお読みいただき、ありがとうございます。 列車の最後尾に連結されている車両は、原則として赤色の灯火を点灯させることが法令で義務付けられています。テールランプ、尾灯とも呼ばれる赤い灯火は、厳密には「後部標識灯」と呼ばれるもの…

過酷な通勤輸送を支え続け40年の功労車・東急8500系【7】

いつも拙筆のブログをお読みいただき、ありがとうございます。 まずはじめに、記事の投稿が逆になっておりましたこと、お詫び申し上げます。推敲の段階で、7番目の記事の自動投稿を取り消していましたが、8番目の取り消しをするのを忘れ・・・気づいたら、6番目…

過酷な通勤輸送を支え続け40年の功労車・東急8500系【6】

《前回からのつづき》 8500系は1974年から長きに渡って増備が続けられたことから、途中幾度となく細部の設計が変更されています。特に8090系が製造された1980年の第12次車以降と、9000系が製造された第18次車以降で、外観からもわかる変更が見られました。 8…

過酷な通勤輸送を支え続け40年の功労車・東急8500系【5】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info 1978年に営団半蔵門線が開業すると、当初の計画通りに新玉川線との相互直通運転が始められました。しかし、この時点で渋谷−青山一丁目間の2駅だけの開通だったため、営団側は車両の用意はしないで東急車の…

過酷な通勤輸送を支え続け40年の功労車・東急8500系【4】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info 今日、田園都市線で運用される車両は長津田検車区に配置されていますが、この当時は田園都市線で運用される車両は、長津田検車区の完成による移転までは、鷺沼駅の渋谷方海側にあった鷺沼検車区の配置でし…

過酷な通勤輸送を支え続け40年の功労車・東急8500系【3】

《かなり間が開いてしまいましたが・・・前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info 1975年から田園都市線・新玉川線用として、8000系を基本に営団との協定に基づいて半蔵門線直通仕様に改めて製作されたのが8500系でした。 基本的な構造は8000系から大き…

過酷な通勤輸送を支え続け40年の功労車・東急8500系【2】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info 異なる鉄道事業者同士が相互直通運転を実施するために、乗り入れる車両については規格を統一することは、ごく一般的なものでした。乗り入れ相手となる鉄道事業者が保有する車両が自社線内に入ってきたとき…

過酷な通勤輸送を支え続け40年の功労車・東急8500系【1】

いつも拙筆のブログをお読みいただき、ありがとうございます。 東急田園都市線といえば、何を思い浮かべるでしょうか。 閑静な住宅街に通じる鉄道路線と思われる方は、きっと筆者と同じ年代か、それよりも上のご先輩方でしょう。しばしばテレビドラマの舞台…

貨物駅の名称 東○○、浜○○の「東」「浜」とは何?【終章】

《前回のつづきから》 blog.railroad-traveler.info ■かつては庶民の台所を支えた「○○市場駅」 貨物駅は一般には馴染みがないため、その名称もあまり知られることはありません。それとともに、貨物駅が設置される場所は、港湾部や埠頭など一般に立ち入ること…

貨物駅の名称 東○○、浜○○の「東」「浜」とは何?【3】

《前回のつづきから》 blog.railroad-traveler.info 「浜」を冠する貨物駅も多くありました。こちらは港湾部に限らず、主要駅から見て海浜にあるという意味でつけられたものといえますが、多くは港湾部に隣接した工業地域の中に設置されています。 首都圏で…

貨物駅の名称 東○○、浜○○の「東」「浜」とは何?【2】

《前回のつづきから》 blog.railroad-traveler.info ■海沿いは貨物駅にとって大きな稼ぎ場所「浜」と「港」 都市部の主要駅近くに置かれる貨物駅は、多くが本線上に貨物列車の「途中停車駅」としての機能を持たせるためといえます。こうした貨物駅は、製品や…

貨物駅の名称 東○○、浜○○の「東」「浜」とは何?【1】

いつも拙筆のブログをお読みいただき、ありがとうございます。 わたしたちの生活を支える物流において、鉄道による貨物輸送は重要な位置を占めつつあることは多くの方がご存じのことと思います。北海道で収穫されるタマネギやジャガイモといった生鮮野菜は、…

国鉄車に引けを取らなかった富士急の意欲作 富士急行5000形【3】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info 3100形のうち2両(3103+3104)は、月江寺駅付近の踏切において立ち往生した自動車と接触し、ブレーキを作動させるための空気溜めを破損、ブレーキが使えない状態で下り勾配を逸走していき、約4kmの距離を…

国鉄車に引けを取らなかった富士急の意欲作 富士急行5000形【2】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info 地方私鉄である富士急行は、保有する車両も必要最小限しかなかったため、2両が廃車になったことで運用に余裕がなくなります。そこで、事故廃車になった2両の代替として、新たな車両を確保する必要が出たの…

国鉄車に引けを取らなかった富士急の意欲作 富士急行5000形【1】

いつも拙筆のブログをお読みいただき、ありがとうございます。 鉄道車両の中には、傑作ともいえるベストセラーもあれば、失敗作と言われてしまう残念なものもあります。そして、新機軸を多数投入した試作的要素の強い意欲作とよべるものもあるのが事実です。…

さらばキハ28 DMH17系エンジンの終焉【終章】

《前回のつづきから》 blog.railroad-traveler.info ■21世紀に入ってもなお現役のDMH17 国鉄、私鉄問わず広く採用されたDMH17ですが、最後に新製されたのは小湊鐵道のキハ200でした。1977年に製造されたキハ213・214がそれで、国内向け気動車としてDMH17搭載…

さらばキハ28 DMH17系エンジンの終焉【8】

《前回のつづきから》 blog.railroad-traveler.info ■最後のキハ58系 房総へ渡ったキハ28 2634(つづき) 国鉄・JR時代はあまり注目されることのない地味な存在でしたが、全国に数多くいた僚機が次々に姿を消し、キハ58系として数少ない存在担った頃から注目…

さらばキハ28 DMH17系エンジンの終焉【7】

《前回のつづきから》 blog.railroad-traveler.info ■最後のキハ58系 房総へ渡ったキハ28 2634(つづき) キハ28 2346は、1964年に帝国車両でキハ28 346として落成、4月15日付で米子機関区に新製配置されたものの、5月24日付で新潟機関区へ配転になり、さら…

さらばキハ28 DMH17系エンジンの終焉【6】

《前回のつづきから》 blog.railroad-traveler.info ■最後のキハ58系 房総へ渡ったキハ28 2634(つづき) 健康被害を及ぼすアスベストを多用したキハ58系は、車両の検修に携わる職員だけでなく、乗務員や乗客にも健康に悪影響を及ぼすとされ、可能な限り新系…

さらばキハ28 DMH17系エンジンの終焉【5】

《前回のつづきから》 blog.railroad-traveler.info ■最後のキハ58系 房総へ渡ったキハ28 2634 DMH17系エンジンを搭載した気動車は、キハ10系に始まりキハ20系、準急形として製造されたキハ55系、さらに急行形であるキハ58系とその派生型、さらには特急形の…

さらばキハ28 DMH17系エンジンの終焉【4】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info ■急行形気動車の決定版キハ58系 キハ58系もまた、DMH17を採用しました。というよりは、ほかに使えるエンジンがありませんでした。しかし、キハ58系は急行用として運用することが前提であるため、キハ55系…

さらばキハ28 DMH17系エンジンの終焉【3】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info ■国鉄の悲願 初の実用ディーゼルエンジンDMH17 DMH17の実用化は、国鉄にとって悲願ともいっても差し支えないと考えられます。年々老朽化していく蒸機の置き換えと、動力近代化による無鉛化の推進は、国鉄…