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先日投稿した記事では、異色の経歴の持ち主ともいえる、大井川鐵道のナロ80についてお話をさせていただきました。こうした履歴をもつ鉄道車両は他にも例がありますが、今回はこちらのEF66 20号機を紹介いたします。
国鉄時代に設計・製造されたEF66 0番代、通称「ゼロロク」は1987年の分割民営化で、JR西日本とJR貨物に継承されました。JR西日本に継承された0番代は、下関に配置されたまま新会社へと移管されましたが、運用は主に東京ー九州間の寝台特急が中心で、連日1000km以上に及ぶロングランをこなしていました。
そして、下関に配置されていた0番代は、いわゆる後期形で車齢も比較的若いものばかりでした。
一方、JR貨物に継承された0番代は、吹田と広島に配置されていました。運用も東海道・山陽本線の高速貨物列車が中心で、同じく1000km以上にも及ぶ長距離を走っていました。
しかし、継承された0番代は前期形と呼ばれるものが多く、下関に残った僚機よりも車齢が高めの車両が多かったのでした。そして、寝台特急が東京ー下関間、貨物が東京貨物(タ)ー幡生操間と同じような距離を走るにしても、下関の0番代は重量の軽い客車列車であるのに対し、吹田の0番代は1000t以上もある貨物列車なので、機関車にかかる負荷は桁違いでした。
そのような機関車にかかる負担の違いはもちろん、寝台特急の牽引という花形仕業が主な仕事である下関の0番代の方が高く、吹田の0番代は貨物列車という地味な役回りでした。とはいえ、EF66自体はそもそも貨物機として、それも長距離を高速で走ることを前提として開発されたので、後者の方が本業でした。
そんな中、0番代の一両が非常に注目を集めたのでした。
民営化後、JR貨物は保有する電気機関車の塗装をリニューアルしようと模索した時期がありました。いわゆる「試験塗装機」と呼ばれる機関車たちで、大きな変化のないものから、ひっくり返るほど「ド派手」なものまでありました。
地味な「試験塗装機」は、九州の門司に配置されていたED76やEF81だったと、筆者は考えています。飾り帯から伸びた白線を巻き、濃淡の青色に塗られたその姿は、直流機を連想させるようなおとなしいものでした。門司機関区に勤務していた頃、構内を歩いていてこの塗装のED76やEF81を目にすると、悪くはないけど交流機には似合わないという印象をもったものでした。
一方、「ド派手」な「試験塗装機」は直流機に多かったと思います。その中でも、EF66 20号機の「ド派手」さは群を抜いました。
青15号にクリーム色2号という国鉄直流機の標準的な塗装から、全面クリーム色に青色のストライブ状の塗装。さらに車体側面の中央部には、まるで車体を大きなキャンバスにでもしたかのように、デカデカと「JR」マークが描かれていたのでした。
この「ド派手」な塗装を身に纏った20号機に初めて出会ったのは、電気区に配属されて新鶴見機関区で作業をしていたときのことでした。信号場から東機待線と呼ばれる留置線へと入ってきた20号機を見て、思わず「なんじゃこりゃ~」などと叫んでしまったのです。
あまりにも奇抜すぎるそのデザインに、思わず叫びそして呆れもしました。いくら国鉄のイメージを脱却するにしても、デカデカと「JR」マークを描くというのはいくらなんでもやり過ぎですし、何よりセンスのなさには呆れるしかなかったのでした。
その後、このド派手な塗装を身に纏った20号機は、重量の嵩む貨物列車を牽いて、連日のように東海道・山陽本線を走り続けたのでした。
貨物会社を退職して10年後に撮影したEF66がこの写真。
なんと、あの「ド派手」な塗装を身に纏っていた20号機でした。すでにこの頃には更新工事を施工されていましたが、「新更新色」と呼ばれる国鉄時代の塗装に近い大人しめのデザインになっていたのでした。
しかし、この20号機についていえば、あの「ド派手」とそうからいきなり「新更新色」になったのではなく、実はこの塗装になる前にはライトパープルと青の濃淡塗装という「更新色」に塗られていました。
(▲©spaceaero2 / CC BY (https://creativecommons.org/licenses/by/3.0)Wikipediaより引用
つまりは、国鉄色→試験塗装→更新色→新更新色と、4つの異なる塗装を身に纏ったことになるのです。さすがに同じEF66といえども、これだけ塗装を変えた車両は車両は見あたりません。というより、どんなに多くても3回が限度なので、この20号機はかなりレアなケースだといえます。
既にこの20号機も廃車になって久しくなり、残るところ27号機1両だけになってしまいました。昭和→平成→令和と3つの時代を走り続けてきましたが、いつかそれもピリオドを打つ日がやってくるでしょう。それまでは、国鉄高速貨物機の勇姿を見せつつ、最後まで安全に走り続けてほしいものです。
今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
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