旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

走り続けて30年 「静脈物流」という新たなカテゴリーを生み出したゴミ列車・クリーンかわさき号【1】

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 いつも拙筆のブログをお読みいただき、ありがとうございます。

 今から30年前の1995年、このような列車をJR貨物が走らせると聞いたとき、まるで天変地異でも起きたのかと思うほどの衝撃を受けました。そもそも貨物列車は、製品になる前の原材料や、工場などで製造された新品である製品を運ぶものであって、廃棄物、それも家庭から排出される生活廃棄物、すなわち私たちが出す「ゴミ」を運ぶことなど、それまでの常識ではあり得ないと考えていたからでした。

 今回は、その生活廃棄物=家庭ゴミを運び続けて30年になる、「クリーンかわさき号」に焦点を当ててみたいと思います。

 

 前述の通り、貨物列車は工場などでものを作るための原料や燃料、それらを使ってつくられた製品を運ぶのが常識でした。

 例えば、国鉄時代に「3セ」と呼ばれた石油、石炭、石灰石といった鉱物資源を多く運んでいました。石油は原油として輸入されたあと、製油所で精製されてガソリンや軽油、灯油といったものをタンク車に積み込んで、国内各地の輸送所へと輸送されています。今日も首都圏などを中心に一部が残り、今でも見られる車扱貨物の一つとして馴染みのあるものでしょう。

 石炭はかつて燃料の主役だった頃、国内各地にある炭鉱で採掘されたあと、石炭車に積み込んで輸送していました。多くは北海道や九州北部に炭鉱があったため、石炭輸送列車はこれらの地域を中心に運行されていました。

 石灰石もまた、貨物輸送にとっては大きな需要をもった原材料でした。国内にある石灰石の産地は多くあり、首都圏では奥多摩秩父などで採掘されています。奥多摩で産出された石灰石は、近年までホキ2500形やホキ9500形を使って、青梅線南武線を通って京浜工業地帯にあるセメント工場へと運ばれていました。秩父山地を構成する山の一つである武甲山は、石灰石を産出する国内有数の鉱山です。ここで産出された石灰石は、秩父鉄道の影森から、武州川原にあるセメント工場へと運ばれていますが、日本の私鉄では珍しい私鉄所有のホッパ車であるヲキ100形を使い、2025年現在も私鉄線内で完結する貨物列車が運行されています。

 

鉄道による貨物輸送で、もっとも効果を発揮するのは「大量の貨物を一度に長い距離を輸送する」ことである。特に国鉄時代に主流だった車扱貨物輸送では、一部を除いてこれが原則だったといえる。「3セ」と呼ばれた物資別適合輸送はその最たるもので、線用の構造を備えた貨車が多くつくられ、日本の経済を支え続けたといえる。コンテナ貨物が主体で、拠点間輸送方式に変わった今日でもその一部が残り、ガソリンなどの石油類輸送や石灰石、セメント輸送も僅かながら残っている。写真のような赤色に塗られた石灰石専用ホッパ車を連ねた貨物列車も、かつては首都圏で頻繁に観られたが、今では名古屋地区でしか見ることができなくなった。(©ナダテ at Japanese Wikipedia, CC BY 3.0, via Wikimedia Commons)

 

 この石灰石は原料として工場に運び込まれると、セメントに加工されて製品として出荷されます。今度はこのセメントを貨車に積み込み、各地に設けられたセメントサイロへと輸送されますが、この時はセメント線用のホッパ車が使われていました。

 これら物資別適合輸送の貨物列車では、原材料と製品がそれにあった貨車を使って、車扱貨物として輸送されていました。

 時は流れてコンテナ貨物が主流となった現在では、このような物資別適合輸送はほとんどなくなりましたが、やはり原材料、製品ともにコンテナによって運ばれています。筆者が鉄道万時台に顧客である荷主企業の一つである、麒麟麦酒キリンビール)福岡工場からも、製造されたビールをコンテナに積み込んで、鉄道を使って消費地へと出荷していました(現在では廃止、トラックに移行)。いずれも、誰かの手に渡る「新品」であり、棄てられた物ではなかったのです。

 このように、鉄道を使って貨物として運ぶ物は、製品になる前の原材料であったり、湖上などで下降・製造されて瀬品として出荷される物であったりと、廃棄され、ともすると有害な汚物ではありませんでした。そして、このような輸送が鉄道史の中で連綿と続けられてきた結果、廃棄物を鉄道で運ぶなどというのは非常識であり、できたとしても多くの問題を解決しなければならないため、構想はあっても実現に向けて歩みを進めることはほとんどなかったといえるのです。

 

《次回へつづく》

 

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