《前回からのつづき》
それでも、キハ183系の運用は続けられました。
新型車両へ置き換えるにしても、すべてのキハ183系を置き換えるには、相応の数の車両を揃えなければなりません。そして、資金が潤沢なJR東日本のように僅か2〜3年ですべての車両を揃えることなど、ただでさえ営業係数が悪く赤字を生み出す多数のローカル線を抱えるなど、経営基盤が脆弱で資金力に乏しいJR北海道に、そのような芸当は無理なことでした。
代替となるキハ261系1000番台6次車が新製されると、まず最も車齢が高いキハ183系0番台が廃車の対象になりました。2018年3月のダイヤ改正で、「北斗」の運用に充てられていたNN183系が撤退し、函館運転所からNN183系の配置がなくなりました。加えて、高速道路の整備が進んだことや代替車両を充足するには時間がかかることなどから、その前の年の2017年3月のダイヤ改正をもって、「オホーツク」の減便と「スーパー宗谷」と「サロベツ」の各1往復は札幌駅ー旭川駅間の運転を廃止し、運転区間の短縮を行いました。そして、2018年6月いっぱいで0番台はすべて廃車となり、国鉄時代の1980年から37年間の歴史に幕を下ろし、区分消滅しました。

国鉄時代、特急列車は長大編成を組み、運転本数は限られたものであるというのが伝統でもあった。しかし、時代の趨勢はそのような伝統を受け入れることはできず、「乗るのなら待たなければダメ」「旅費が高くつく」「高い割に使い勝手が悪い」といった様々な要因によって、安価で利便性のよい高速バスにシェアを奪われてしまった。こうした世の中の流れに対して、国鉄が出した答えは特急列車の伝統を捨て去ることだった。そして、特急列車を輸送量の実態に合わせて最適化させ、短編成で運転頻度を高くすることで、無駄を省きつつも乗車率を高め、ひいては運用コストを軽減させていくことになった。そして、これに対応するために用意したのがキハ183系であり、特急用車両としては初めて食堂車を設定しなかった。後に老朽化が激しいキハ80系を置き換えながらも、高頻度で運転される特急列車を実現させるべく、さらに改良を加えてつくられたのがキハ183系500・1500番台だったといえる。以後、JR北海道の主力車両として、道内の都市間輸送を支えることになるが、201年代に入るとエンジンブローという重大事故を起こしてしまったが故に、引退を余儀なくされていく。しかし、登場から20年以上にも渡って多くの道民や北海道を訪れる観光客を運ぶ続けた実績は大きいものczといえる。(出典:写真AC)
長兄ともいえる0番台の消滅後は、N183系はNN183系とともに、「オホーツク」と「大雪」の運用を細々と続けることになります。しかし、それだけでは安泰ではなく、近い将来に消えゆく運命には変わりありませんでした。
2023年3月のダイヤ改正で、「オホーツク」と「大雪」の運用はキハ283系が担うことになり、N183系はこれをもってすべての運用を終えることになりました。そして、最後の花道となるラストランの運用を終えると、一部は残されて引き続き保管されたものの、2024年には残った全車が廃車となり、1986年の製造以来、38年間の歴史幕を下ろしたことにより、900番台の製造から45年間という長い年月を、北海道の都市間輸送を支えてきたキハ183系は系列消滅していったのでした。

過酷な北の大地を走り続け、道民や観光客を運んだキハ183系は、件の火災事故を境にその数を減らしていった。特に初期車は2015年までに機器の更新工事を完了させて延命を図る一方、後継となるキハ261系1000番台の増備を進めて置き換えることになった。列車の運転速度も減速させて必要以上に過酷な運用はしないで保たせながら、後継車が出揃うのを待つことになるが、それでもいっぺんに交換ということは不可能であったため、時間をかけて交換を進めていった。運転頻度が高い道東を結ぶ「北斗」は、キハ283系から交換を進めることにし、2018年までにキハ183系も運用から退いていった。残る「オホーツク」「大雪」での運用のみとなり、2023年にこれらの運用からも退いたことで、キハ183系は長きにわたる歴史に幕を下ろした。過酷な気象環境の中で運用することを前提とした設計は、その後の特急形気動車に与えた影響は大きく、今日の北海道における特急ネットワークを構築するために欠かすことのできない存在だったといえるだろう。(出典:写真AC)
冬季は酷寒の地である北海道での運用を想定せず、酷寒地向けの装備を持たず、そして非力なエンジンを搭載しながらも北海道の特急列車網を作り上げたキハ82系から、それらを受け継ぎつつ本格的な北海道専用の特急用気動車として誕生したキハ183系は、後に分割民営化直前に新会社の負担を軽減するために仕様を変更した500・1500番代、いわゆるN183系を生み出しました。そして、民営化後に増備された550・1550番代とともに、多くの人々を運ぶ役割を担い、過酷な運用をこなしながら都市間輸送を支えた功績は称えられるものといえるでしょう。
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