《前回からのつづき》
JR東海は211系同様に効率性が高い性能をもち、関西本線の輸送実態に合わせた車両を投入することにします。といっても、新たな車両を一から開発すれば開発コストがかかってしまい、その結果車両の製造コストを押し上げてしまいます。
そこで、既存の車両、すなわち国鉄時代に設計製造され、実績のあるものを活用することで開発の時間を短くし、開発コストを抑えながら新車を投入することにしました。
1989年から製造されたJR東海の213系は、国鉄時代に瀬戸大橋線向けにつくられ、JR西日本に継承された0番台の設計を活用しました。ただ、JR東海は国鉄の設計をそのまま使うのではなく、既に211系で変更した仕様を採り入れることにし、新たに5000番台の区分としました。
車体はステンレス鋼を使ったオールステンレス車で、窓割りや乗降用扉などは0番台と同一としました。車内の座席も転換クロスシートとし、レイアウトもほぼ同一となりました。ただし、乗降用扉から車端寄には、0番台では転換クロスシートを設置していましたが、5000番台ではロングシートを設置しました。これは、0番代が瀬戸大橋線という観光輸送に重点を置いていたことに対し、5000番台は関西本線での通勤通学輸送にも対応する必要があるため、収容力と乗降時間に配慮したものだといえるでしょう。
車端部の座席をロングシートにすることで収容力にも配慮した一方で、乗降用扉脇の転換クロスシートの仕切り部分には、折りたたみ式の補助椅子も設置しました。混雑時は収納して立席スペースを確保し、閑散時には着席定員を少しでも多くすることで、競合する近鉄や名鉄の車両に対して、サービス水準を可能な限り近づけようと腐心したものであるといえます。
また、0番台では3両編成を基本としていたことや、観光路線を中心とした運用であることからトイレが設置されていましたが、5000番台では2両編成を基本としていたこと、運用する距離が比較的短く一般の列車を想定していたことなどにより、トイレは省略されました。
その一方で、前面の貫通扉上にある行先表示窓は、0番台では天地方向を短くした細長いものでしたが、5000番台では211系と同じサイズに変更し、部品の共通化を図っています。

213系5000番台は必ずしも順風満帆というわけではなかった。ワンマン化による合理化を推し進める一方で、その車両構造が災いしてワンマン化に不向きとされ、当初配置されていた関西本線での運用は少なく、中央本線や東海道本線の快速列車に充てられた後、残存していた鋼製車である119系を置き換えるべく飯田線へと移っていき、この車両にとって最後の任地となった。(出典:写真AC)
このように、5000番台は運用を想定した路線の環境が違うことから、接客設備の面でもJR東海独自の仕様に改められました。
もっとも仕様がかわったのは電装品でした。製造コストもそうですが、車両を運用するのにかかる運用コストの麺でも、JR東海はより効率性を求めた設計に改めたのでした。 冷房装置は集中式のAU79形ではなく、JR東海独自のC-AU711形集約分散式冷房装置を2基、屋根上に設置しました。この冷房装置は1基あたりの冷房能力は18,000kcal/hで、2基搭載で合計32,000kcal/hの能力をもたせたことで、AU79形より僅かに低くなりました。この低くなった分を補うため、0番台では装備されなかったラインデリアも装備し、夏季には冷房装置から出てくる冷風を撹拌しながら、乗客の体感温度を下げることを可能にしたのです。
このC-AU711型を搭載したことにより、補助電源の種類が変わりました。従来、国鉄の冷房装置は交流440Vを使っていたため、電動発電機(MG)で発電した電気を供給していました。しかし、C-AU711形は直流電源を使うため、従来の補助電源は使うことができません。そこで、架線から取り入れた直流1500Vを直流600Vに変換するためのDC-DCコンバータを電動発電機などに代わって装備しました。213系5000番台はこのDC-DCコンバータであるC-SC27形コンバータを搭載し、冷房装置へ電源を供給することにしたのです。
この補助電源が直流600Vに変わったことは、主制御器の界磁回路にも影響を及ぼしました。0番台ではHS60形励磁制御装置を使っていましたが、5000番台では電源の変更により直流600Vに対応したC-HS65形に変更しました。
これに加えて車内の照明などといったサービス用電源や、蓄電池などの補機類に使う電源として直流・交流100Vを供給する必要がありました。従来の電動発電機や静止形インバータから供給されていた交流電源の場合、変圧器を使って電圧を下げるだけでよかったのですが、直流電源となるとそうはいきません。直流を交流に変換するためのインバータ回路が必要になります。そのため、DC-DCコンバータであるC-SC27形から直流600Vを供給してもらい、これを交流100Vと直流100Vに変換するC-SC31形補助電源装置も装備しました。
《次回へつづく》
あわせてお読みいただきたい