旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

国鉄

悲運の貨車〜物流に挑んだ挑戦車たち〜 【番外編】4年でお役御免になった悲劇の郵便車【3】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info ■郵便客車の中でもっとも薄幸だったスユ15 郵便車と一言で言っても、その形態は輸送方法によって大きく2つに分けられていました。 鉄道郵便局に運び込まれた郵便物を、郵袋ごと郵便車に載せ、車内で鉄道郵…

悲運の貨車〜物流に挑んだ挑戦車たち〜 【番外編】4年でお役御免になった悲劇の郵便車【2】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info 郵便車は大きく分けて、客車と電車、そして気動車がありました。 客車は国鉄のもっとも古くからある列車の運行形態で、その形式は数多くありました。戦前の20m級鋼製客車であるスハ32系では、区分室を備え…

悲運の貨車〜物流に挑んだ挑戦車たち〜 【番外編】4年でお役御免になった悲劇の郵便車【1】

いつも拙筆のブログをお読みいただき、ありがとうございます。 物流と一言でいうと、多くは貨物輸送を指すと思います。コロナ禍で急激に伸張したネットショッピングでは、宅配便を中心にした貨物輸送が旺盛になりました。また、それだけでなく、原材料や製品…

同じ石油製品を運ぶタンク車 別形式になった理由【2】

《前回からのつづき》 石油製品を輸送するタンク車ですが、実は消防法の規制の対象外です。1両あたりの積載量に特に上限は設けられてなく、あるとすれば走行する線区の軸重制限がある程度です。ですから、タンク車の歴史は1両あたりの積載量をいかにして増や…

同じ石油製品を運ぶタンク車 別形式になった理由【1】

いつも拙筆のブログをお読みいただき、ありがとうございます。 今日の鉄道貨物輸送の主役は、コンテナ貨物であることは誰もが認めるところでしょう。国鉄の貨物輸送を継承したJR貨物は、コンテナによる輸送を原則と定めました。これは、従来の車扱輸送は貨車…

役割は地味だけど「花形」の存在だった電源車たち【10】終章

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info ■首都圏対北海道の寝台特急に新たな風を吹き込んだE26系 カハフE26 国鉄時代から分割民営化後、長きに渡って青色の塗装を身にまとった客車が長距離夜行特急列車、いわゆる寝台特急として運用されてきまし…

役割は地味だけど「花形」の存在だった電源車たち【9】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info ■電化区間でパンタグラフからの給電を再び スハ25 300番代 24系に限らず、客車の電源車は電化区間においては電化方式に、そして非電化区間に左右されることなく客車に電源を供給する役割を担っていました…

役割は地味だけど「花形」の存在だった電源車たち【8】

《前回からのつづき》 ■余剰車の荷物車から転身した異色の電源車 マニ24 500番代 1987年の国鉄分割民営化から魔もない翌年の1988年、四半世紀強の長い時間と難工事の末に青函トンネルが開通し、この年から開業した津軽海峡線によって本州と北海道は鉄道で結…

役割は地味だけど「花形」の存在だった電源車たち【7】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info ■増備車は荷物室をさらに拡大 カニ24 100番代 24系25形は二段式寝台を備えたことから、居住性が従来の寝台車と比べて格段に改善されたことが好評だったようで、分割併合を伴う多層建て列車を除いて、三段…

役割は地味だけど「花形」の存在だった電源車たち【6】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info ■24系登場と同時に製作されたマヤ24、0,5トンの荷物室を追加したカヤ24 1873年に24系の製造がはじまると同時に、電源車として登場したのがマヤ24でした。マヤ24には直列6気筒・排気量31リットル・インター…

役割は地味だけど「花形」の存在だった電源車たち【5】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info ■急行格下げで郵便荷物車との併結を可能にしたカヤ21 14系や24系といった新しい系列の客車が登場すると、20系は陳腐化が目立つようになりました。14系や24系はB寝台でも寝台幅700mmに広げられ、従来のB寝…

役割は地味だけど「花形」の存在だった電源車たち【4】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info ■分割編成に使われた旧型客車改造の簡易電源車 マヤ20 登場当時は国鉄の「虎の子」ともいえた20系は、徐々にその数を増やしていき、東京−九州間の寝台特急をはじめ、関西−九州間の寝台特急などにも使われ…

役割は地味だけど「花形」の存在だった電源車たち【3】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info ■パンタグラフを装備した電源車 カニ22 国鉄客車の電源車と言えば、ディーゼルエンジン+発電機を組み合わせた発電セットを搭載した車両というのが定番でした。しかし、ディーゼルエンジンを稼働させるた…

役割は地味だけど「花形」の存在だった電源車たち【2】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info 1958年に登場した20系客車は、それまでの国鉄客車の常識を大きく覆すものでした。 もっとも大きな違いは、従来は客車1両単位で運用することを前提とした設計思想であったのに対し、20系は編成単位で運用す…

役割は地味だけど「花形」の存在だった電源車たち【1】

いつも拙筆のブログをお読みいただき、ありがとうございます。 「電源車」という車両をご存じの方は、おそらく筆者と同世代に近い方や諸先輩方、そして熱心に研究されておられる方かと思います。筆者がこの「電源車」という言葉を初めて耳にしたのでは、鉄道…

貨物列車の最後尾を飾った有蓋緩急車たち【6】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info ■ブルトレの最後尾も飾った荷貨物兼用高速貨車 ワサフ8000(その2) ワサフ8000はワキ8000を基本に設計されているため、貨物室は軽量なアルミ合金のプレス鋼板の総開き構造とされましたが、車掌室を設置…

貨物列車の最後尾を飾った有蓋緩急車たち【5】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info ■ブルトレの最後尾も飾った荷貨物兼用高速貨車 ワサフ8000(その1) 1960年代に入ると自動車の普及が急速に進み、国内の物流の主役ともいえた鉄道貨物も、荷主にとって使い勝手がよいトラックにシェアを…

貨物列車の最後尾を飾った有蓋緩急車たち【4】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info ■再び積載量を増したワフ29000 戦後になって製造されたワフ22000は、車掌室重視の設計だったため、積載荷重は2tに抑えられ、貨物の積載量は小さいものになりました。乗務する車掌にとって、ワフ22000はあ…

貨物列車の最後尾を飾った有蓋緩急車たち【3】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info ■戦時設計、代用資材の木製を使ったワフ28000 1944年になると戦局の悪化と資材の不足は、日本の経済に大打撃を与えていました。人々の生活は困窮し、食べるのも配給制に頼らざるをえない状態でした。そし…

貨物列車の最後尾を飾った有蓋緩急車たち【2】

《前回からのつづき》 blog.railroad-traveler.info 国鉄時代、ヤード継走輸送が全盛だった頃の貨物列車は、大きく分けて二つありました。 一つは、貨物取扱駅と方面別に仕分けをする操車場の間を行き来する列車で、これを「解結貨物列車」と呼ばれていまし…

貨物列車の最後尾を飾った有蓋緩急車たち【1】

いつも拙筆のブログをお読みいただき、ありがとうございます。 列車の最後尾に連結されている車両は、原則として赤色の灯火を点灯させることが法令で義務付けられています。テールランプ、尾灯とも呼ばれる赤い灯火は、厳密には「後部標識灯」と呼ばれるもの…

68年前の「国鉄戦後五大事故」の一つ 宇高連絡船「紫雲丸事故」

いつも拙筆のブログをお読みいただき、ありがとうございます。 2月の末に更新して以来、ご無沙汰しております。 2月の初めに頸椎の手術を受け、その間、療養に専念しておりました。5月に入って主治医から「ふつうの生活に戻ってよい」とのお許しをいただき…

貨物駅の名称 東○○、浜○○の「東」「浜」とは何?【終章】

《前回のつづきから》 blog.railroad-traveler.info ■かつては庶民の台所を支えた「○○市場駅」 貨物駅は一般には馴染みがないため、その名称もあまり知られることはありません。それとともに、貨物駅が設置される場所は、港湾部や埠頭など一般に立ち入ること…

貨物駅の名称 東○○、浜○○の「東」「浜」とは何?【3】

《前回のつづきから》 blog.railroad-traveler.info 「浜」を冠する貨物駅も多くありました。こちらは港湾部に限らず、主要駅から見て海浜にあるという意味でつけられたものといえますが、多くは港湾部に隣接した工業地域の中に設置されています。 首都圏で…

貨物駅の名称 東○○、浜○○の「東」「浜」とは何?【2】

《前回のつづきから》 blog.railroad-traveler.info ■海沿いは貨物駅にとって大きな稼ぎ場所「浜」と「港」 都市部の主要駅近くに置かれる貨物駅は、多くが本線上に貨物列車の「途中停車駅」としての機能を持たせるためといえます。こうした貨物駅は、製品や…

貨物駅の名称 東○○、浜○○の「東」「浜」とは何?【1】

いつも拙筆のブログをお読みいただき、ありがとうございます。 わたしたちの生活を支える物流において、鉄道による貨物輸送は重要な位置を占めつつあることは多くの方がご存じのことと思います。北海道で収穫されるタマネギやジャガイモといった生鮮野菜は、…

さらばキハ28 DMH17系エンジンの終焉【終章】

《前回のつづきから》 blog.railroad-traveler.info ■21世紀に入ってもなお現役のDMH17 国鉄、私鉄問わず広く採用されたDMH17ですが、最後に新製されたのは小湊鐵道のキハ200でした。1977年に製造されたキハ213・214がそれで、国内向け気動車としてDMH17搭載…

さらばキハ28 DMH17系エンジンの終焉【8】

《前回のつづきから》 blog.railroad-traveler.info ■最後のキハ58系 房総へ渡ったキハ28 2634(つづき) 国鉄・JR時代はあまり注目されることのない地味な存在でしたが、全国に数多くいた僚機が次々に姿を消し、キハ58系として数少ない存在担った頃から注目…

さらばキハ28 DMH17系エンジンの終焉【7】

《前回のつづきから》 blog.railroad-traveler.info ■最後のキハ58系 房総へ渡ったキハ28 2634(つづき) キハ28 2346は、1964年に帝国車両でキハ28 346として落成、4月15日付で米子機関区に新製配置されたものの、5月24日付で新潟機関区へ配転になり、さら…

さらばキハ28 DMH17系エンジンの終焉【6】

《前回のつづきから》 blog.railroad-traveler.info ■最後のキハ58系 房総へ渡ったキハ28 2634(つづき) 健康被害を及ぼすアスベストを多用したキハ58系は、車両の検修に携わる職員だけでなく、乗務員や乗客にも健康に悪影響を及ぼすとされ、可能な限り新系…