旅メモ ~旅について思うがままに考える~

元鉄道マンの視点から、旅と交通について思うがままに考えたことを紹介します。

鉄道マン時代の回想録

もう一つの鉄道員 ~影で「安全輸送」を支えた地上勤務の鉄道員~ 第二章 見えざる「安全輸送を支える」仕事・財布にはドル札、片手に英語の辞書【2】

財布にはドル札、片手に英語の辞書【2】 こうして、英語も満足にできない成績でなんとか入社した私が、仕事もまだまだ半人前以下なのにもかかわらず、在日アメリカ軍の専用線路を任されることなってしまった。 渡された図面や資料は、どれもが国鉄時代に誰…

もう一つの鉄道員 ~影で「安全輸送」を支えた地上勤務の鉄道員~ 第二章 見えざる「安全輸送を支える」仕事・財布にはドル札、片手に英語の辞書【1】

財布にはドル札、片手に英語の辞書【1】 鉄道貨物を利用されるお客さま、つまり荷主さんは本当に驚くほど多くの業種の会社などに利用していただいている。とはいえ、私が鉄道マンになった頃は、モータリゼーションの進展や国鉄時代の相次ぐストやら運賃値上…

もう一つの鉄道員 ~影で「安全輸送」を支えた地上勤務の鉄道員~ 第二章 見えざる「安全輸送を支える」仕事・猛威を振るう台風、その後に残ったものは【4】

台風というのはほんとうに容赦がない。 またある別の日、横須賀線の逗子駅から連絡があった。逗子駅といえば、三浦半島にある駅で、夏になれば海岸に遊びに行く人たちで賑わう駅だ。そんな駅に貨物列車?と思われる方も多いと思う。 そりゃあそうだ。逗子駅…

もう一つの鉄道員 ~影で「安全輸送」を支えた地上勤務の鉄道員~ 第二章 見えざる「安全輸送を支える」仕事・猛威を振るう台風、その後に残ったものは【3】

猛威を振るう台風、その後に残ったものは【3】 電気区のある横浜羽沢から新鶴見まで、車で概ね40分から50分はかかった。 ところが、この日は台風が過ぎた後の夕方。普段よりも車の量が多く、道路は混んでいたから1時間以上はかかったと思う。それでも、でき…

もう一つの鉄道員 ~影で「安全輸送」を支えた地上勤務の鉄道員~ 第二章 見えざる「安全輸送を支える」仕事・猛威を振るう台風、その後に残ったものは【2】

猛威を振るう台風、その後に残ったものは【2】 遥か遠くの地が台風に襲われて、列車のダイヤが大きく乱れたために、作業にも影響を受けることがあるが、台風の直撃を受けた場合は作業どころではない。 暴風雨の吹き荒れる中を線路に入って作業をするなどとん…

もう一つの鉄道員 ~影で「安全輸送」を支えた地上勤務の鉄道員~ 第二章 見えざる「安全輸送を支える」仕事・猛威を振るう台風、その後に残ったものは【1】

猛威を振るう台風、その後に残ったものは【1】 暑い夏が終わるとようやく涼しい秋がやってくる。 線路際で毎日焼かれるような暑さの中で仕事をしていると、9月に入って気温が下がり始めたことに気付かないこともしばしば。それでも、夕方になって退勤時刻が…

もう一つの鉄道員 ~影で「安全輸送」を支えた地上勤務の鉄道員~ 第二章 見えざる「安全輸送を支える」仕事・過酷な猛暑の鉄路【後編】

過酷な猛暑の鉄路【後編】 こうして一時間ほどでレールの交換が終わると、レールの幅、つまりゲージが規定の1067mmになっているか、専用の計測器・・・といっても、細かい精密機器ではなくすぐに幅が規定以内に収まっているかがわかる比較的簡易なもの・・・をつか…

もう一つの鉄道員 ~影で「安全輸送」を支えた地上勤務の鉄道員~ 第二章 見えざる「安全輸送を支える」仕事・過酷な猛暑の鉄路【中編】

過酷な猛暑の鉄路【中編】 夏になれば気温も上がってしまう。当然、気温も上がるのだが、1994年は全国的な猛暑で、とにかく線路はほかよりも暑くて仕方がなかった。 あまりにも気温が上がりすぎると、鉄の性質でレールが伸びてしまうこともあるから、施設の…

もう一つの鉄道員 ~影で「安全輸送」を支えた地上勤務の鉄道員~ 第二章 見えざる「安全輸送を支える」仕事・過酷な猛暑の鉄路【前編】

過酷な猛暑の鉄路【前編】 これを書いている2018年の夏は、これまでに経験したことのない記録的な猛暑の日が続いている。 連日の気温は35℃以上はあたりまえで、30℃を下回った日なんか片手で足りるくらいだ。埼玉県の熊谷で、過去最高の41.1℃を記録した日なん…

もう一つの鉄道員 ~影で「安全輸送」を支えた地上勤務の鉄道員~ 第二章 見えざる「安全輸送を支える」仕事・電話が通じない!信号機器が動かない! その正体とは【後編】

日中に他の区所から電話がかかってくると、多くは何らかの障害が起きたために対応を要請するものだった。 障害の内容によっては、その日の作業計画を変えて出動をすることになる。

もう一つの鉄道員 ~影で「安全輸送」を支えた地上勤務の鉄道員~ 第二章 見えざる「安全輸送を支える」仕事・電話が通じない!信号機器が動かない! その正体とは【前編】

電話が通じない!信号機器が動かない! その正体とは【前編】 電気区の仕事というのは、日常の検査だけではなく修繕もとにかく多かった。 特に貨物駅にある施設の多くは老朽化が進んでいて、管理をする側にとっては苦労も多い。その理由は、国鉄時代、貨物は…

もう一つの鉄道員 ~影で「安全輸送」を支えた地上勤務の鉄道員~ 第二章 見えざる「安全輸送を支える」仕事・何でもやります! まさに電気屋さん【後編】

何でもやります! まさに電気屋さん【後編】 電話がかかってきて、蛍光灯の在庫がなくなったと連絡を受けると、それを届けるのも電気区の仕事だった。 そんなことまでしていたの?と驚かれる方も多いと思う。 実際、私も驚いた。 ある日先輩から「ナベちゃん…

もう一つの鉄道員 ~影で「安全輸送」を支えた地上勤務の鉄道員~ 第二章 見えざる「安全輸送を支える」仕事・何でもやります! まさに電気屋さん【前編】

◆何でもやります! まさに電気屋さん 信号設備のように鉄道マンならではなの仕事もあるが、一見するとこれも鉄道マンの仕事なの?と思えるようなことも仕事のうちだった。 ある日、庁舎の電灯がつかなくなってしまった。 最初は球切れかな?と思い、新しい蛍…

もう一つの鉄道員 ~影で「安全輸送」を支えた地上勤務の鉄道員~ 第二章 見えざる「安全輸送を支える」仕事・転轍機(てんてつき)の定期検査【後編】

転轍機(てんてつき)の定期検査【後編】 別の日に、新鶴見機関区で転轍機の検査があった。 鉄道がお好きな方ならご存じだと思うが、新鶴見機関区は首都圏の貨物列車の要衝だ。 東北線や高崎線、中央線から東海道線方面に向かう貨物列車は、ほとんどが武蔵野…

もう一つの鉄道員 ~影で「安全輸送」を支えた地上勤務の鉄道員~ 第二章 見えざる「安全輸送を支える」仕事・転轍機(てんてつき)の定期検査【中編】

転轍機(てんてつき)の定期検査【中編】 私が実際に線路に出るようになって間もない頃、信号を専門にする主任と技術係の先輩に連れられて、高島線の新興駅へ行った。*1 当時の新興駅は車扱貨物だけを取り扱う駅で、貨物列車の発着本数も極端に少なかった。…

もう一つの鉄道員 ~影で「安全輸送」を支えた地上勤務の鉄道員~ 第二章 見えざる「安全輸送を支える」仕事・転轍機(てんてつき)の定期検査【前編】

◆転轍機の定期検査【前編】 1か月近くの隅田川での研修を終えて、ようやくもとの職場に戻って本格的に仕事を始めることができた。運転や車両に行った同期と比べると、研修期間が長かったが、まあこれも仕事のうち。 貨物駅はとにかく広い。大規模な駅だと東…

もう一つの鉄道員 ~影で「安全輸送」を支えた地上勤務の鉄道員~ 第二章 見えざる「安全輸送を支える」仕事・線路際で働く鉄道マンの持ち物【後編】

線路際で働く鉄道マンの持ち物【後編】 ヘルメットを被り、安全チョッキを着て、鍵も持った。さあ、線路に出て仕事をしよう!といっても、肝心な商売道具の工具がなければなにもできない。 この工具も一つひとつ紹介をするととんでもないことになってしまう…

もう一つの鉄道員 ~影で「安全輸送」を支えた地上勤務の鉄道員~ 第二章 見えざる「安全輸送を支える」仕事・線路際で働く鉄道マンの持ち物【中編】

線路際で働く鉄道マンの持ち物【中編】 さて、線路に出る鉄道マンに共通している物、というより身につけなければならない物といえば何を思い浮かべるだろうか。 まずはあの黄色いヘルメットだ。 正確には「保護帽」という名前らしく、色々な形の物がある。 …

もう一つの鉄道員 ~影で「安全輸送」を支えた地上勤務の鉄道員~ 第二章 見えざる「安全輸送を支える」仕事・線路際で働く鉄道マンの持ち物【前編】

◆線路際で働く鉄道マンの持ち物 運転士や車掌といった乗務員は、列車の乗る時には必ず携帯していなければならない持ち物があるのは、いろいろな書籍や雑誌などで紹介されているからご存知の方もいると思う。 駅で乗務員が交代をする時に、必ずといっていいほ…

もう一つの鉄道員 ~影で「安全輸送」を支えた地上勤務の鉄道員~ 第二章 見えざる「安全輸送を支える」仕事・研修が終わったからといっても【後編】

◆研修が終わったからといっても【後編】 風呂掃除が終わると、頃合いを見計らって浴槽にお湯を入れていく。これも風呂掃除をした職員の仕事。資格が要らない簡易ボイラーのスイッチを入れて、浴槽の蛇口をひねる。ただそれだけだが、これが意外に難しい。お…

もう一つの鉄道員 ~影で「安全輸送」を支えた地上勤務の鉄道員~ 第二章 見えざる「安全輸送を支える」仕事・研修が終わったからといっても【中編】

◆研修が終わったからといっても【中編】 掃除といえばもう一つ。 鉄道の職場には必ずといっていいほど「風呂」がある。 え?風呂があるの?と思われる方もいるかもしれない。あまり小規模な職場だと風呂はないかも知れないが、たいていの駅や機関区といった…

もう一つの鉄道員 ~影で「安全輸送」を支えた地上勤務の鉄道員~ 第二章 見えざる「安全輸送を支える」仕事・研修が終わったからといっても【前編】

◆研修が終わったからといっても【前編】 すべての研修が終わって、ようやく新しい職場でお仕事開始! と、いうわけにはいかなかった。そりゃあそうだろう、何しろついこの間までまともに線路上に出ていたことなどなく、理論とちょっとした実技を習ってきただ…

もう一つの鉄道員 ~影で「安全輸送」を支えた地上勤務の鉄道員~ 第二章 見えざる「安全輸送を支える」仕事・隅田川駅で見た「モノ」とは【後編】

まさかまさかの「客車」 驚いたといえば、もう一つ。 やはり、駅構内を歩いていた時のこと。駅の一角がやたらと騒々しい。それもそうだろう、何しろ赤色灯を煌々とつけたパトカーや警備会社の車、それに頑丈そうなつくりの車がいる。「おっ、今日は珍しいの…

もう一つの鉄道員 ~影で「安全輸送」を支えた地上勤務の鉄道員~ 第二章 見えざる「安全輸送を支える」仕事・隅田川駅で見た「モノ」とは【前編】

連絡船でしか見られないはずの貨車 ある日、隅田川駅構内で信号機の見学をすることになった。信号機といっても、道路の信号機のように単純ではなく、鉄道では目的によって種類も多いから憶えるのがとにかく大変だった。 よく見かけるのは道路の信号機のよう…

もう一つの鉄道員 ~影で「安全輸送」を支えた地上勤務の鉄道員~ 第二章 見えざる「安全輸送を支える」仕事・再び研修勤務 隅田川駅で過ごした1か月の技術研修【後編】

◆再び研修勤務 隅田川駅で過ごした1か月の技術研修【後編】 ある日、講義の内容も進んでいよいよ鉄道独特の電気技術の話に入っていったのだが、私はと言えば毎日既に学んだ内容を聞かされ、いつものように上の空で聞いていた。ところが、鉄道の電気独特の内…

もう一つの鉄道員 ~影で「安全輸送」を支えた地上勤務の鉄道員~ 第二章 見えざる「安全輸送を支える」仕事・再び研修勤務 隅田川駅で過ごした1か月の技術研修【前編】

◆再び研修勤務 隅田川駅で過ごした1か月の技術研修【前編】 鉄道という仕事は、列車の運転に直接携わる仕事から、駅での改札や出札、それに操車や誘導、車両所や工場での車両の保守、線路や電気設備の保守管理といった施設関係の仕事までありとあらゆる職種…

もう一つの鉄道員 ~影で「安全輸送」を支えた地上勤務の鉄道員~ 第二章 見えざる「安全輸送を支える」仕事・その3 伝統の華麗なる技

何日かして、施設の先輩が現場に連れて行ってくれた。さすがに何をするわけでもなく、ただ出勤して勤務が終わるのを待っている私たちを見て同情されたのかわ分からないが、とにかく現場へと出かけることになったのは嬉しかった。 東海道貨物支線のうち、鶴見…

もう一つの鉄道員 ~影で「安全輸送」を支えた地上勤務の鉄道員~ 第二章 見えざる「安全輸送を支える」仕事・その2「点呼と整時・・・鉄道マンならではの朝の習慣」【後編】

◆点呼と整時・・・鉄道マンならではの朝の習慣【後編】 点呼では主任が職員の出勤状況を報告するために、所属する職員の職氏名を読み上げる手続きだ。学校で言うところの出欠確認だ。学校で散々やって来たことを、就職してまで同じことをするのには少し驚いたも…

もう一つの鉄道員 ~影で「安全輸送」を支えた地上勤務の鉄道員~ 第二章 見えざる「安全輸送を支える」仕事・その2「点呼と整時・・・鉄道マンならではの朝の習慣」【前編】

◆点呼と整時・・・鉄道マンならではの朝の習慣【前編】 着任して数日、始業の定刻である8時30分前に出勤。といっても、8時30分ギリギリに出勤してはまずい。新人はとにかく先輩より早く出勤し、お茶を入れたり掃除をしたりしなければならない…と、気合いを入れ…

もう一つの鉄道員 ~影で「安全輸送」を支えた地上勤務の鉄道員~ 第二章 電気区・保全区での仕事・その1「電気区に着任」【後編】

◆横浜羽沢電気区に着任【後編】 当時の横浜羽沢電気区は、関東支社にある技術系職場の中でも比較的広範囲を管轄していた。本区は横浜羽沢駅にあり、東海道貨物線は新鶴見機関区と新興駅、東高島駅、それに横浜羽沢駅。根岸線の根岸駅と横須賀線の逗子駅と田…